2019年02月26日

読書雑記(254)高田郁『あきない世傳 金と銀 六 本流篇』

 『あきない世傳 金と銀 六 本流篇』(高田郁、時代小説文庫〈ハルキ文庫〉、2019.2.18)を読みました。

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■「中有」
 大坂の呉服商「五鈴屋」の六代目店主だった智蔵が急死します。跡取りの問題が展開する中、9年前に亡くなった四代目の隠し子の存在が、跡取りの問題に関わって浮上します。緩急自在の展開が始まりました。【5】

■「女名前」
 「女名前の禁止」という掟に直面し、幸たちは後継の問題の対処を思案します。「抜け道」はないものかと。光明を見出すための策を、同じ身の女たちのためにも前を向いて歩こうとします。【3】

■「出帆」
 「女名前の禁止」という、おかみの「定法」と大坂商人の「慣習」のしがらみを、幸は条件を設けて認めてもらいます。もっと揉めるのかと思いました。少し気が抜けます。緊縛感がほしいところです。話の風向きは江戸へ出ることに移ります。今後の展開が示されたのです【3】

■「木綿と鈴紋」
 今後の物語展開の要となりそうな木綿が、幸の七代目を継いだ挨拶の品としての小風呂敷に使われます。しかも、生まれ育った津門村の木綿。過去と未来が行き来する語り口です。【4】

■「春日遅々」
 夫の隠し子との出会いが、挿話として温かく語られます。この話が、後の展開に関係するのかしないのか、興味深いところです。【4】

■「果断」
 幸の的確な判断で、江戸へ出ることが決まります。幸と共に女衆のお竹が話を引き締めています。蛍が効果的に飛んでいます。この作者は、季節感をうまく話の随所に盛り込んで、膨らみのある描写を心がけています。【5】

■「蟻の眼、鶚の眼」
 五鈴屋の要石である治兵衛は、江戸へと旅立つ幸へのはなむけに、「豪気と細心、大気と小心」ということを語ります。幸のあらたな門出の章です。【3】

■「七代目の誓い」
 大坂から江戸に出た幸たちは、浅草に近いところで店を持つことになっています。その開店準備も、着々と進んでいます。次の話への繋ぎとなる小話。みんなの前向きな気持ちに溢れた話です。【3】

■「光と塵」
 江戸に慣れるにしたがって、上方と江戸との生活する上での文化の違いがわかってきました。この比較は、楽しく読めます。特に、上方の女は前帯で、江戸は後ろ帯というのは初めて知りました。話は、古着をどう売るかという問題に展開していきます。【3】

■「知恵を寄せる」
 開店のための準備では、さまざまなアイデアが検討されます。反物の見せ方、塵の払い方などなど。一歩ずつ進んで行く様子が、わかりやすくて丁寧な描写で語られていきます。【4】

■「満を持す」
 討ち入りの日に店開きをする、というのは、なかなかのアイデアです。着々と進む用意の背景に、神社仏閣の手水舎に、屋号を染め抜いた手ぬぐいを奉納する、というのも奇策であり名案です。知恵が随所に生きています。気持ちのいい物語展開に、「笑って、勝ちに行く」という言葉が話を締めています。【4】

■「討ち入り」
 ようやく開店。夢で胸を膨らませる商法は、さらに江戸で人気を博することになりそうです。大坂の呉服商が江戸に討ち入りです。【5】

 この物語の刊行を1年間待ちました。今回も、丁寧な仕上がりで語られています。安心して読める作家として定着したようです。〈みおつくし料理帖〉の高い完成度に追いつけるように、さらなる物語の進展を楽しみにしています。
 
 
 
posted by genjiito at 20:01| Comment(0) | ■読書雑記
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