2019年02月09日

ビルマ語訳『女房三十六人歌合』に関する中間報告

 昨年3月に、ミャンマーの国際交流基金ヤンゴン仮事務所で、ビルマ語訳『女房三十六人歌合』と出会いました。速報として、本ブログの「ビルマ語の翻訳本と異文化交流の現地調査と資料収集は続く」(2018年03月09日)の末尾に、写真と共にそのことに触れています。その時は本の中も含めて写真に収めただけで、帰国後にいろいろと調べていました。

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 そもそも、私はビルマ語がまったくわからないので、調査は遅々として進みませんでした。そんな中、再度ヤンゴンへ行き、国際交流基金の新事務所開設のイベントに参加することになりました。昨年末から年始にかけて、国際交流基金ヤンゴン事務所の佐藤所長とメールをやりとりしている中で、次のような意外な展開がありました。
 まず、佐藤さんからの説明の中に、以下の文章がありました。

文学方面のカウンターパートということでPEN Myanmarと相談したところ、大変興味をもってくれたけれども、和歌を非日本語話者の文学関係者に紹介するには用意周到に計画をたてて臨みたいので、次回以降に改めて検討したいとのことでした。会長のMa Thidaさんは英語からの重訳で和歌の翻訳もした人なので、この機会を本当に大事に考えたうえでの意見ということで、尊重したいと思います。


 この文章にあるPEN Myanmarの会長のお名前に「Ma Thidaさん」とあったことに対して、情報共有をしている私の科研のプロジェクト研究員である大山さんからすぐに反応がありました。「会長のMa Thidaさんは『女房三十六人歌合』の翻訳者だと思われます」、というご教示なのです。
 大山さんには、ミャンマーで見つけた日本文学関連の写真すべてを確認してもらい、そこに写っている書影から翻訳本のリストを作成してもらっていたのです。私だけがこの整理をしていたら、「Ma Thidaさん」のことには思い及ばなかったはずです。
 偶然とはいえ、一つの手がかりが得られました。さらには、この『女房三十六人歌合』という本には個人的な歌仙絵の興味から、なぜこれが翻訳されているのか不思議に思い、念のためにその本の中身を全頁写真に撮っていたのです。
 まず、表紙と裏表紙です。

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 中の奥付にあたる部分もあげます。

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 早速、佐藤さんに、『女房三十六人歌合』の翻訳者と思われるMa Thidaさんと、連絡をとることは可能かを問い合わせました。すぐに佐藤さんからは、以下の回答が届きました。

 Ma Thidaさんをご紹介するのはもちろんできますが、彼女は日本語はまったくおできになりません。英語からの重訳をされたと聞いています。彼女は日本文学をミャンマーに紹介するキーパーソンには間違いないですが、日本文学の専門家ではない点、お伝えしておきます。また、残念ながら今回お越しいただくタイミングでは海外出張が入っているそうで、今回お会いするのは難しそうです。英語でメールのやりとりをされたい場合には、本人に私から趣旨をお伝えしたうえでメールアドレスをご案内します。あるいは、質問項目をいただいて、私からそれをお伝えするということも可能です。


 佐藤さんの懇切丁寧な説明と対応の助言を得て、これでビルマ語訳『女房三十六人歌合』に関する調査の足がかりができました。ありがたいことです。
 大山さんが、さらに詳しい情報を集めてくださいました。以下、引用します。

@ タイトル:『太陽の光 ポエム』(?)
  翻訳者:【画像の赤字の部分(マ ティ ダー)。カッコ内は、出身地(サン チャウン)】
      PEN Myanmarの会長Ma Thidaさんと同一人物と思われる。
  出版社:ティン サペー
  刊行年:2011年8月
      英語からの重訳と思われる


 このビルマ語訳の底本となったと思われる英語本の存在も、絶妙のタイミングで探し出してくださいました。

A タイトル:The Thirty-Six Immortal Women Poets
  翻訳者:Andrew J. Pekarik
  著者:Eishi Hosoda(細田栄之)
     Chobunsai Eishi イラスト(鳥文斎栄之:細田栄之と同一人物)
  出版社:George Braziller
  刊行年:1991年10月1日
  表紙:『錦摺女三十六歌仙』鳥文斎栄之・葛飾北斎
     寛政13年(1801年)春刊 西村与八版
     10~11ページ 式子内親王の絵
  底本:『錦摺女三十六歌仙』鳥文斎栄之・葛飾北斎 と思われる


 さらには、この本を手際よく入手してもらえました。

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 ビルマ語訳『女房三十六人歌合』の11頁に、次の挿し絵があります。

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 この絵は、英語本『The Thirty-Six Immortal Women Poets』の184頁にある、小野小町の挿し絵に該当します。

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 つまり、ビルマ語訳の底本である原本との配列は異なっているにしても、ビルマ語に翻訳するに際しての底本は、この一事で明らかになったと思います。

 これで、次回ミャンマーへ行った時に、翻訳者であるMa Thidaさんと面談した折に、翻訳にあたってのお話を伺う準備ができました。
 このようにして、着々と『平安文学に関する翻訳本』に関する情報が集まっています。
 本書に関して、さらに情報をお持ちの方からの連絡をお待ちしています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:50| Comment(0) | ◎国際交流
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