2019年01月20日

[町家 de 源氏](第16回)(現行平仮名が1文字に選定された経緯は?)

 「be京都」でのハーバード本『源氏物語 須磨』を変体仮名だけに着目して読む勉強会は、今日で16回目となりました。

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 いつもと違う日曜日の10時からということで、参加してくださる方々には曜日と時間に気をつけてください、というメールを事前に回しました。また、本ブログでも、そのことを告知していました。それなのに、当の私が勘違いをしていて、いつもの午後2時からではなくて10時からであることをすっかり忘れていたのです。
 いつまで待っても私が「be京都」に姿を見せないことから、京都で世話役をしていただいている石田さんから、メールと電話で「何かあったのでしょうか」という連絡をいただきました。先週は突然手術をするなど、特にこのところ何かとバタバタする日々にあったために、いろいろと気遣いをしてもらい恐縮しました。
 とにかく大急ぎで同志社大学の方に出かけ、1時間遅れで会場に着きました。今日は、初めて参加なさる方もいらっしゃったので、大変失礼なことをしてしまいました。お許しください。
 これまでに、こうした公開のイベントなどで、私は予定をドタキャンしたり、大きく遅れることはしてきませんでした。それだけに、まったくと言っていいほど経験してこなかったことなので、予定を忘れていたことに自分自身がショックを受けています。こまかな物忘れは、最近とみによくあります。しかし、対外的にも大事なことでは、行けなくて待っていただいたことは記憶にありません。自戒の意味も込めて、ここに記しておきます。そして、今後とも何かありましたら、メールか電話で「忘れていませんか?」と催促をしてください。昨日の本ブログにも書いた通り、「人に迷惑をかけない高齢・老齢社会にし、生き抜いて行きたいものです。」ということが、早速我が身に降り懸かって来ました。今日のことは、高齢・老齢化の兆候の一つだと思われます。何かと、よろしくお願いします。

 さて、今日は、いつものように前置きが長くならないようにと気をつけながら、今年いただいた年賀状から変体仮名の好例を紹介しました。

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 右側は「上希満/寿」(上げま/す)、もう一つの左側の方は「万春」(ます)と書いておられます。共に、おめでたい新年を寿ぐのにふさわしい字母となる変体仮名を選んでのものです。変体仮名が単なる仮名として一音を表記するだけではないものであることが、こうした使い方からわかります。この、仮名文字が伝えてきている文化を、これからも守り伝えて行きたいものです。

 ハーバード本「須磨」については、9丁裏1行目の「ましくおもふ多まへらるゝ【程】可那と」から読みました。初めて参加してくださった方がいらっしゃったので、まずは変体仮名の「多」のことからお話をしました。
 ハーバード本「須磨」では、仮名文字で表記するのに用いられている変体仮名(1792例)の中で、「ta」という音の「多」は3番目に多くて「142例」、続いて8番目に多い「堂」が「74例」となっています。明治33年に文部省によって言語統制された結果としての五十音図の平仮名「太(た)」は、ここで用いられている現行平仮名(1792例)の中では7例にすぎず、「ゐ」(5例)と共に最小使用例となっています。
 この傾向は、ハーバード本「須磨」とかつては共に揃い本として組まれていたハーバード本「蜻蛉」や歴博本「鈴虫」でも、ほぼ同じことが確認できます。明治33年に平仮名を1文字に決めるときに、どのような基準で選定されたのかが知りたくなります。鎌倉時代にはほとんど見かけない「太(た)」が選ばれ、それが日本では唯一の平仮名として公認されて今に至っている根拠を、何とかして知りたいと思っているところです。
 また、2行目の「あけ尓あさ可ら須」とある所で、「あけ」について書写されている状態を確認しました。
 まず、「あ」にはミセケチの記号「˵」が2ヶ所に打たれています。この字はないことにしよう、ということです。
 次の「け」は、その下に「佐(さ)」が書かれています。ただし、その「佐」の旁の部分は、「左」と書き終わる前に、つまり「エ」の部分を書かずに「け」という文字で上からナゾって訂正しています。この「佐」が書き止した状態であることは、次の丁の5行目にある「佐」とまったく同じ字形であることから確認できます。
 つまりここでは、「尓」と書こうとしていたのに、それに続く「あ左可ら須」の「あ左」に目が飛んでしまい、「あ佐尓」と書いたと思われます。しかし、すぐに続く「あ左可ら須」と書こうとして「あ佐尓」が間違いだったことに気付き、「あ」をミセケチにし、書き止しだった「佐」を「け」に書き直したと思われます。
 こうして、写本を丹念に見ていると、書写した人が書いている状況が見えてきます。写本の書きざまから、書いている人の姿が見えてくる楽しさを、こうして読み取っているのです。これも、写本を読む楽しみの一つです。

 ということで、今日は2行だけを見たことになります。
 次の第17回2月23日(土)14時〜16時では、9丁裏2行目の「【思】へ里」から読みます。

 旅の途中に立ち寄っていただいても結構です。興味のある方の参加をお待ちしています。
 その際は、資料を用意する都合がありますので、本ブログのコメント欄を使って連絡をお願いします。
 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(1) | ◎NPO活動
この記事へのコメント
【た】の太と多と堂の使われ方と用いる頻度について

仮名で書くとき 日本人の美意識の大切な要素である空間と線の動きと行の動きが有ります。

【た】は1画めが左端から書きます。【多】【堂】は1画目が上から始まります。
1画目の位置で連線の動きが決まります。前の字の終画の位置と次の字の1画目の位置で連綿線が出来上がり「行」の美の動きが生まれます。
その追求が仮名書の醍醐味です。
用いられる文字の頻度は連綿により行の動きにより決まってきます。【太】の頻度が少ないのはそんな理由からだと思います。

借字の代表に太が選ばれたのは、画数の少ないものが選ばれたのでは・・・・・・・と思います。


仮名を書いている経験からの答えです。


Posted by 宮川やすこ at 2019年01月23日 00:03
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