2018年12月15日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その7、傍記が混入した異文)

 曇り空の中を、新幹線で上京しました。いつも、富士山を見るのを楽しみにしています。しかし、今日は曇っていたため、頂上付近は見えませんでした。そんな写真はこれまでに掲載してこなかったので、これからは雲に覆われた富士山もアップすることにします。

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 日比谷図書文化館に近い新橋駅前には、機関車にサンタクロースが乗っていました。クリスマスシーズンが到来していることを実感します。

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 日比谷公園も師走に入ると、冷たい風が吹き抜けています。それでも、多くの人が集っておられます。園内の噴水広場では、「東京 クリスマスマーケット 2018 in 日比谷公園」が賑やかに開催されていたからです。ドイツさながらの雰囲気が再現されており、ビールや木工芸品、そしてスイーツのお店が36店舗も出ていました。手作り体験もでき、活気に満ちています。

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 日比谷図書文化館で『源氏物語』を読む会が始まる前に、地下のラウンジで研究協力者の淺川さんと今後の打ち合わせをしました。
 科研のことや視覚障害者のみなさまのお手伝い、そしてNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の活動のことなど、整理しなければいけない話は山ほどあります。
 特に、科研のホームページについては、さまざまな研究妨害を掻い潜り、やっと再構築に着手するメドが立つところまで来ました。昨年4月に科研が採択されて以来、研究情報の公開という一時だけに1年9ヶ月もかかったことになります。科研研究への無理解や非協力的な姿勢と露骨な妨害に加えて、先週からはまたもや無知からくる信じられない研究妨害と契約への遅延行為などと闘っていました。この期に及んでまだそこまでやるか、という思いを胸に押し留めて耐えました。精も根も尽きそうになっていた今週半ばに、それも何とか光明が見いだせるようになったので、また前を見て歩み出そうとしています。研究の遂行よりも、こうしたこととの戦いに精力を割かざるを得ない現実との闘争に疲れ果てます。研究の意味が理解されない環境に身を置くとは、思いもしなかったことであり、なかなかつらいものがあります。もっとも、今はそんな弱音を吐いている場合ではありません。時間がないのです。
 2年目の年度末になり、遅れに遅れている膨大な研究成果の公開に向けて、これから3ヶ月が追い込みです。プロジェクト研究員、研究協力者の学生たちと共に、ここを乗り切ろうという思いを強くしています。変わらぬご支援のほどを、よろしくお願いします。

 今日の講座では、最初にいつものように『源氏物語』をめぐる関連情報を提示しました。
 メリッサ・マコーミック先生が刊行された『源氏物語画帖』を回覧し、この講座を受講なさっている方が翻字の協力をしてくださったことなどを伝えました。
 受講者の中には、今夏ご一緒にハーバード大学でこの『源氏物語画帖』を見た方もおられるので、身近な話題として説明できました。古典という時間的な隔たりのみならず、ボストンという地理的な遠さが一気に縮まる機会となったことは、得難いことだったと思います。
 その他、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉に『御物 各筆源氏』の複製本の寄贈を受けたこと、新年に京都ライトハウスで開催される『百人一首』のかるた会の案内、国宝の『源氏物語絵巻』が額面装から巻物装に戻されたこと、さらには、精力的に『源氏物語』を女房語りで読み続けておられる山下智子さんの案内チラシを配布して説明をしました。この山下さんの語りの会には、講座を受講なさっている何人かが参加しておられます。

 さて、今日は時間を有効に使い、35丁表の8行目「さ満も・可ゝ羅ぬ」から、37丁表の4行目「うちと遣ぬ」までの、約4頁分を確認しました。異例のスピードです。
 今日、一番時間をかけたのは、現在読んでいる橋本本のグループ(河内本を中心とするもの)と、現在一般に読まれている大島本のグループに、大幅に語句が入れ替わるという現象を見せる箇所があったことです。校訂本文で比べると、「くはしく」「おほかたの御ありさまなと」などの言葉が、両グループでその置かれている場所が大きく異なるのです(私が提案している文節番号では「052818」以降)。こうした本文異同の形成過程には、私案である「傍記本文が本行に混入する時に、当該語句の前に混入するか、あるいは後に混入するかによって生まれる本文異同」という考え方を導入しなければ説明できないところです。日比谷図書文化館での講座は、こうしたことを詳細に語る場所ではないので、現在読み進めている橋本本と、現在一般に読まれている大島本の文章の成り立ちがこんなに違うものですよ、ということの確認に留めました。

 また、「ひ(比)」(35丁裏3行目)

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と「え(江)」(36丁表9行目)

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がよく似た形で書かれています。
 このことは、書家の宮川さんが参加しておられるので、専門家の立場でその仮名文字の成り立ちについて板書して説明していただきました。

 講座が終了してからは、有志の方々と有楽町のビアハウスで、いつものように勉強会となりました。今日は、お世話役の土屋さんが、渋谷栄一氏の校訂本文と現代語訳を橋本本と対照できるような資料を作成して来てくださっていました。そこで、それをもとにして、これからどのようにして橋本本の現代語訳を作成していくかを相談しました。次回には、土屋私案としての現代語訳を追記した資料を提示してくださることになりました。
 この課外の集まりも、呑むことだけでなく、こうして着実に勉強の成果が確認できるように進んでいます。現在は10人ほどで取り組んでいます。この集まりだけに参加なさりたい方がいらっしゃいましたら、遠慮なくお知らせください。折り返し、ご案内を差し上げます。時間は、午後5時半から7時過ぎまでです。私が午後8時前の新幹線で京都に帰りますので、それまでの時間を有効に活用しての勉強会です。

 新幹線はガラガラでした。
 京都駅前に聳えるタワーは、今日はクリスマスモードです。

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posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎NPO活動
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