2018年11月23日

藤田宜永通読(31)『彼女の恐喝 Blackmail』

 藤田宜永の『彼女の恐喝 Blackmail』(2018年7月、実業之日本社)を読みました。

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 通読し終えて、犯罪を犯す者に罪悪感が希薄な設定に物足りなさを感じました。恐喝に殺人、そして別人への成りすましなどなど、成り行きで実行されます。人間への切り込みが浅いのは、人間を見つめる鋭さと深さに欠けるせいです。特に、男と女の心理の読み合いには、スナックでのおもしろおかしい痴話の域を出ていません。
 相変わらず、藤田宜永は書き出しが粗雑です。第2章「国枝悟郎の秘密」からおもしろくなるので、お急ぎの方は「プロローグ」を読んだら、第1章の109頁分は読み飛ばしてもいいかと思います。
 なお、第3章「下岡文枝の疑い」は、登場人物が整理されないままに話が展開し、収束します。これは読者に対して、あまりにも不親切です。再度ストーリーを整理して改編したら、もっとおもしろい話になりそうです。
 藤田宜永については、初期の犯罪小説や冒険小説がおもしろかったので、以来この藤田作品を追っています。不慣れな恋愛小説で低迷した後、今は気抜けしたおじさんの話と共に、若かりし頃のパワーが少し感じられる作品が産み出されようとしています。読み続けることで、一人の作家の変転を見つめて行きたいと思っています。こんな小説の読み方があっても、いいのではないでしょうか。【2】

 [memo]嫌な人をやり過ごす会話の手法
 「さ、し、す、せ、そ 理論」
 「さあね」「しらない」「すてき」「せっかくだから」「そうね」を繰り返すこと。(21頁)
 
 
 
posted by genjiito at 22:22| Comment(0) | □藤田通読
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