2018年11月20日

清張全集復読(28)「発作」「怖妻の棺」「支払い過ぎた縁談」

■「発作」
 男は月給3万円の内、結核を病む妻に今では月に3千円しか送っていません。愛人との情事と競輪に消えるため、月々の前借りと金貸しからの借金が溜まっていました。会社でも、不満ばかりです。仕事での間違いから、クビになるかもしれない不安が過ぎります。そんな男の目を通して、身辺の他人を冷静に突き放した目で描写していきます。イライラした日々の男の気持ちが、丹念に描かれます。苛立ちの中で男がしたことが、実に生々しくて、読後は読んでいた手の力が抜ける気がしました。【4】
 
初出誌:『新潮』(1957年9月)

※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のようにあります。
衝動的な殺意が醸成されるまでの心理的な経過を描いた「不条理の文学」の秀作。(161頁)

 
 
 
■「怖妻の棺」
 弥右衛門は妻に萎縮しています。ある日、隠している女の所から帰らないことから、愛人の家で亡くなったことがわかります。しかし、家督相続の関係で、妻は遺骸を引き取ります。もっとも、死んではいなかったのですが。
 二重にも三重にも身動きが取れない男の困惑が、実にリアルに描かれていきます。そして、妻に頭の上がらない男が、ピエロのように描かれています。その死さえも、読者をごまかします。【3】
 
初出誌:『週刊朝日別冊 炉辺読本』(1957年10月)
 
 
 
■「支払い過ぎた縁談」
 しがない大学の講師が、結婚を申し込んで来ました。追いかけるように、社長の息子が求婚して来ます。山奥の田舎で、行きそびれていたこともあり、親娘は天秤にかけ、お金持ちの方を選びます。しかし、話は唖然とする結末を迎えました。作者の遊び心たっぷりの小話です。【4】
 
初出誌:『週刊新潮』(1957年12月)
 
※『松本清張全集 37』(文藝春秋社、1973.7.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には次のようにあります。
そのころは、O・ヘンリーのような短編の味を狙ったものである。(550頁)

※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のようにあります。
ブラック・ユーモア・ミステリーの快作。(80頁)


 
 
 
posted by genjiito at 19:33| Comment(0) | □清張復読
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