2018年11月14日

読書雑記(246)山本兼一『心中しぐれ吉原』

 『心中しぐれ吉原』(山本兼一、角川春樹事務所、2014.10)を読みました。

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 この作品も、しっかりとした山本らしい文章なので、ゆったりと、それでいて時にどんな展開になるのか作者の手腕に探りを入れながら、頁を繰るのを楽しみつつ読み通しました。山本兼一は、いつも期待を裏切りません。

 蔵前の札差である大口屋文七の妻みつは、役者の極楽屋夢之丞と茶屋で心中をしたのです。それに合点がいかず、戸惑うばかりの文七の様子から語り出されます。
 これは相対死なのか殺人なのかで、心中とされた双方の言い分が分かれます。妻のみつは夢之丞に殺されたと信じて疑わない文七は、死因の究明に奔走します。

 状況は不利なことばかりです。それでも、みつは裏切らないはずだとの信念で、殺されたに違いないとの思いで、文七は実際に何があったのかを探り続けていきます。時に妻を疑うこともあります。しかし、やはり信じ続けるのでした。

 心中したと思うしかない妻みつの四十九日が過ぎてから、文七は花魁の瀬川を見請けします。そんな話の中で、花魁が札差や奉行を手玉に取る姿が、いかにも見てきたかのように活写されます。これまでの山本兼一とは別の、色街の世界と花街の女たちの生態が艶っぽく繰り広げられます。

 花魁を身請けして、新しい心豊かで幸せな生活を始めたのも束の間、あろうことか強盗に金品を盗まれ、新居に火が放たれました。また、一からのスタートです。

 後半は、息つく暇もない急展開となります。語り口が穏やかだけに、引き込まれて読み耽ります。
 妻みつの死は心中だったのか、そうではなかったのか。読者にとっては、最後まで引き回されます。そして、その真相が語られるくだりは、あまりにも淡々とした語り口で、しかも意外なものだったので、2度も読み返してしまいました。【5】
 
初出誌︰『ランティエ』2008年4月〜2009年10月に掲載分に大幅な加筆・訂正
 
 
 
posted by genjiito at 23:45| Comment(0) | ■読書雑記
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