2018年11月07日

読書雑記(245)白川紺子『下鴨アンティーク  アリスの宝箱』(最終 第8巻)

 『下鴨アンティーク アリスの宝箱』(白川紺子、集英社オレンジ文庫、2018年5月)を読みました。この第8巻が、このシリーズの最終巻となります。

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■「鶯の落し文」
 野々村家に引き取られた津守幸が主人公となります。「幸」は「ゆき」と読みます。しかし、私はつい「さち」と読んでしまいます。紛らわしい読みの名前は、読むスピードが落ち、物語の中に入りにくいので困ったことです。他にも、真帆の父は弥生と言います。これも、慣れればいいものの、つい女性だと思ってしまい気が散ります。
 物語は、『不思議の国のアリス』を思い出すメルヘンチックな内容です。消えるのは、着物の柄ではなくて、笄に取り付けられた鶯です。【3】
 
 
■「青時雨の客人」
 春野に、牡丹柄の振袖を着た少女が取り憑いているというのです。
 物語に情緒を求める方には、この話はしっとりしていていいかもしれません。しかし、物語に躍動感や意外性を求めたくなる私には、非常に退屈でした。【2】
 
 
■「額の花」
 語り手は、彫金の額紫陽花のブローチです。そして、鹿乃や慧は背景にいます。 語り手の視線が新鮮です。語り口も優しくて、ふわっと話が入ってきます。インパクトがなくて物足りないと思いながら、流れるように読み終えました。これも一つの物語の書き方のようです。【3】
 
 
■「白帝の匂い袋」
 この文庫本で106頁の分量なので、中編小説と言えます。
 京言葉がきれいです。物語も品があり、惹き込まれる作品に仕上がっています。
 主人公は16歳の鈴。東京から京都の野々宮子爵家に嫁いだ鈴は、化け物屋敷と言われる家で、夫となる心優しい季秋と出会いました。摩訶不思議な世界での、現実とファンタジーが入り混じる生活が始まります。
 その中で、魔物との格闘劇がアクションドラマそのままに展開します。明治時代を舞台にした活劇と言えます。思いがけず、作者のパワーと筆力を体感することができました。
 鹿乃たちにつながる、野々宮家の先先代の話です。その枠組みが、少し弱いように思いました。このシリーズの中での位置付けをもっと明確にしたら、本作はさらに完成度の高い作品として独立していくことでしょう。【5】
 
 
■「一陽来復」
 いつものメンバー、鹿乃、惠、良鷹、幸が揃っての小話です。
 良鷹が鹿乃に与えた、魔除けのような抱え帯をめぐる話です。鹿乃の帯にあった12頭の子虎のうち、1頭だけが抜け出し、慧のマフラーに飛び移り、そしてまた元に戻りました。幸は、チリチリと鳴る虎の根付を持っています。軽妙な語り口で、ほのぼのとした話です。【4】
 
 
■「山吹の面影」
 良鷹の父の事故死をめぐっていろいろと調べているうちに、不思議なことが起きていたのです。
 民俗学者だった良鷹の父は、狐憑きや添い嫁などのことを調べていたようです。そこからの話は、もっと語ってほしい内容です。なんとなく核心に触れずにまとめに入った、という感じがします。
 ラストシーンは、京都府立植物園の横の半木の道にハイキング気分で行き、サンドイッチを食べます。幻想的な世界と現実とが、あまりうまくは融合しなかったことが残念でした。もっと紙数を費やして、長編にすべきテーマだと思います。【3】
 
 
※本書がこのシリーズ「下鴨アンティーク」の最終巻です。最終巻は、バラバラの編集になっていると思いました。しかし、今後につながる成果が数多く見られました。
 これまでの作品を思い浮かべると、出来不出来の激しいシリーズだったように思います。今の所、この作者の他の作品で読むものはなさそうです。またいつか、出会えることを楽しみにしています。
 
 
※これまでの全8巻の内、私がおもしろいと思った作品をリストにしてみました。あくまでも個人的な評価ながら、【5】と【4】を付けたものを抜き出しています。
 
(1)「読書雑記(204)白川紺子『下鴨アンティーク アリスと紫式部』」(2017年08月22日)
 
 ■該当作ナシ
 
 
(2)「読書雑記(214)白川紺子『下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ』」(2017年12月05日)
 
■「亡き乙女のためのパヴァーヌ」【5】
 
 
(3)「読書雑記(189)白川紺子『下鴨アンティーク 祖母の恋文』」(2017年01月09日)
 
 ■「金魚が空を飛ぶ頃に」【5】
 ■「祖母の恋文」【4】
 ■「真夜中のカンパニュラ」【4】
 
 
(4)「読書雑記(218)白川紺子『下鴨アンティーク 神無月のマイ・フェア・レディ』」(2018年01月10日)
 
 ■「兎のおつかい」【5】
 ■「星の花をあなたに」【4】
 ■「神無月のマイ・フェア・レディ」【4】
 
 
(5)「読書雑記(229)白川紺子『下鴨アンティーク 雪花の約束』」(2018年06月06日)
 
 ■該当作ナシ
 
 
(6)「読書雑記(241)白川紺子『下鴨アンティーク 暁の恋』」(2018年10月08日)
 
 ■「暁の恋」【5】
 ■「月を隠して懐に」【4】
 ■「羊は二度駆ける」【4】
 
(7)「読書雑記(243)白川紺子『下鴨アンティーク 白鳥と紫式部』」(2018年10月23日)
 
 ■「雛の鈴」【5】
 ■「散りて咲くもの」【4】
 
 
(8)本書の記事
 
 ■「白帝の匂い袋」【5】
 ■「一陽来復」【4】
 
 
 
posted by genjiito at 19:56| Comment(0) | ■読書雑記
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