2018年10月26日

明浄社会人講座(2)伊藤「写本学、崩し字で源氏物語を読む」

 明浄学院高校の授業が16時に終わり、18時から社会人講座が始まります。
 第2回は私が担当です。掲げた題目は「写本学、崩し字で源氏物語を読む」で、鎌倉時代に書写された『源氏物語』を読む勉強会です。

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 今日の参加者は4名でした。前回同様に、熱心に聞いてくださいました。終了後の感想も満足していただけたようなので、担当者としては安堵しています。

 『源氏物語』の古写本の複製本を見てもらい、実際の大きさなどを実感してもらいました。平安時代から鎌倉時代の枡形本は、見開きでA4版の大きさになります。人間の視界は、これが最適なのでしょう。
 また、いろいろな写本があることを、『源氏物語 千年のかがやき 立川移転記念 特別展示図録』(国文学研究資料館編、2008年10月、思文閣出版)を見ながら確認しました。

 古写本の基礎的なことを確認してから、写本に書かれた文字を読み取ることの難しさに移りました。書かれた文字を読み取る難しさではなくて、書かれた文字のどこをどのように読み、それがどのようなものであるのかを確定することの難しさです。

 参考資料として配布した、「転移する不審−本文研究における系統論の再検討−」(中川照将、『源氏物語の本文 第7巻』、おうふう、平成20年)に書かれていることを追いながら、「みるこ」という人物は一体誰なのかを考えていきました。『千年のかがやき』に収録した大島本「胡蝶」の次の画像を横においての確認です。

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 また、私が『千年のかがやき』に書いた次の文章も参照しながら、話を進めて行きました。

【14】大島本『源氏物語』
  古代学協会蔵
  室町時代後期写
  袋綴五三冊
  二七・五×二〇・九センチ

 室町時代に書き写された『源氏物語』の写本である。「浮舟」巻を欠き、「桐壺」巻と「夢浮橋」巻は後補の写本群。池田亀鑑により〈いわゆる青表紙本〉の最善本として『源氏物語大成』の底本とされた。現在流布するすべての活字校訂本の基準本文となっている。ただし、大島本には膨大な書き込みと補訂がなされている。それらの後補を取り込んで校訂された本文が提供されて来たため、大島本とは何か、〈いわゆる青表紙本〉とは何かという問題が、近年の本文研究の進展にともない浮上してきた。一例をあげる。「胡蝶」巻で、流布する活字校訂本文が「みるこ」とする箇所がある。しかし、「胡蝶」巻の一五丁表の五行目には、「てこそを」に朱のミセケチと傍記がある。現行の活字校訂本は、この朱の補正を採用して「みるこをぞ」とする。「みるこ」は玉鬘付きの童女の名前とされる。これは、同巻の二六丁表九行目の「みてこそかたよりに」の解釈にも影響する。現在我々が読んでいる活字校訂本は何なのか。『源氏物語』の本文を再検討する上でも、興味深い例である。(伊藤鉄也)


 次に、拙稿「源氏物語古写本における傍記異文の本行本文化について−天理図書館蔵麦生本「若紫」の場合−」(『古代中世文学研究』、和泉書院、平成13年)を読みながら、傍記されていた文字列がいつの頃からか本行に取り込まれていく過程を確認しました。
 この、傍記が本行に吸い込まれていく姿は、参加なさっていた方からおもしろかったと好評でした。しかも、傍記対象の文字列の前に潜り込むか後ろに潜り込むかに法則性があることにも、興味をもったとのことでした。

 今日も、時間をオーバーして終わりました。終了後にいろいろとお話ができたことも、この講座の特色でもあります。

 次回は、予定通り次の講座があります。スポットでの参加も可能です。「大阪天王寺地域で新しく社会人講座がスタートします」(2018年09月12日)の記事を参照の上、一週間前には連絡をお願いします。

第3回 11月9日(金):観光学部 教授 / 中村 忠司
         「観光行動学、『物語性』と観光」
 
 
 
posted by genjiito at 23:54| Comment(0) | ■講座学習
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