2018年10月11日

キャリアアップ講座(その9)『源氏物語』のくずし字を読む(悩ましい「る」と「日」)

 今日は、この社会人講座の直前にあった授業で中国からの留学生と話し合った、年齢の数え方やミドルネームのことから始めました。いつもは、この脱線から本線に戻れなくなるので、あまり寄り道をせずに写本を読み進めました。

 6丁裏の2行目「こと・ひろこり遣累」から7丁裏7行目「多てまつ累とて・なら寿」までを確認しました。

 次の例は「ける越」という語句です(6丁裏4行目)。しかし、一見「は越」と書いてあるように見えるので、真ん中の「る」を見過ごしてしまいそうです。

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 次はどうでしょうか。

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 最初の行の「けなる」(6丁裏7行目)の「る」は「り」のように見えます。
 次の行(左隣)の「返ける」(6丁裏8行目)の「る」の方は迷いません。この2つは、共に「る」です。
 一番左側の行は「八可りも」と読みます。「八」と「可」は、この「鈴虫」の書写者の書き癖に慣れないと、立ち止まってしまいます。そして、この前後の意味を考えて、正しく読むことができるようになる例です。

 次の「る」はどうでしょうか。

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 まず1行目です。ここは、「多可日ぬへし」(7丁表5行目)と書いてあります。
 「る」のように見える文字は、前後の意味や他の写本を参照すると「日(ひ)」と読むことになる文字です。「日」と「る」の読み分けは、なかなか判定が微妙な例です。迷ったら、言葉の意味を考えて決めます。
 この「ひ」と読む変体仮名の「日」については、「キャリアアップ講座(その6)『源氏物語』のくずし字を読む(字母まで正確に書写)」(2018年07月19日)でも取り上げています。参照していただけると、変体仮名を読むおもしろさと悩ましさを実感していただけるかと思います。
 次の行の「ある」の「る」は、今と同じ平仮名です。
 4行目は「給つる」と読むのではなくて、「給つゝ」と読みます。「る」のように見える文字は、ここでは踊り字の「ゝ」にした方が、他の写本との関係で自然なことばとなります。ただし、この「ゝ」は「る」という字形になっているので、テキストである『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤鉄也・阿部江美子・淺川槙子 編著、新典社、2015年10月)では、この「ゝ」の右横に「(ママ)」と注記を書き添えておきました。さらに検討を要する文字だと思っているからです。

 今日は、「る」という一文字でもいろいろな形で書かれていることを確認できました。
 無限に姿形を変える変体仮名です。それだけに、読んで意味を考える楽しさが増します。
 
 
 
posted by genjiito at 22:21| Comment(0) | ■講座学習
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