2018年10月16日

読書雑記(242)望月 麻衣『京都寺町三条のホームズ 10』

 『京都寺町三条のホームズ 10 見習い鑑定士の決意と旅立ち』(望月 麻衣、双葉文庫、2018年07月)を読みました。

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 このシリーズもこれで最終巻かと思わせる展開です。しかし、「あとがき」で作者が「京都ホームズは、まだ最終回ではありません。もう少し続きます。」(292頁)と言うように、もう少し続くようです。
 たしかに、一時は退屈な迷走がありました。しかし、掌編というつなぎの小話を入れながら、また息を吹き返しそうな気配が兆しています。もうしばらく、この物語にお付き合いしてみようかな、と思っています。
 
 
■「プロローグ」
 雪舟を意識して、鼠と斎王とみさごを配した掛け軸が、展覧会の後に盗まれます。その盗難事件と海外でのオークション、そして民法でいうところの「即時取得(善意取得)」の説明がわかりやすく語り出されます。

■「京の三弘法と蓮月の想い」
 ホームズは、四条通りに面した大丸京都店で修行をします。物語を離れた現実では、今年の8月下旬に、その大丸の隣にアップルストアがオープンしました。このことは、本作の発売日にはすでに知れ渡っていました。京都在住の望月氏は、アップルユーザーではないようです。
 作中でホームズは、四条通りを挟んだ大丸の真向かいのビルの2階にある「営業推進部」で仕事をしています。京大の大学院で「文献文化学」を勉強し、論文は『古都・京都の文化が世界に与えた影響』だといいます。
 ここでの話題は、観光ツアーのプランニングです。これは、後々展開するのでしょう。
 茶器と蓮月尼の話は、よくまとまっています。しっかりと次へとバトンタッチされていく章となりました。【4】

■「掌編 宮下香織の決意」
 以前にも書いたように、この小話は、単調になってきた物語に緩急をつけるために挿入された、別伝の話です。香織が語り手になっています。このように、視点を変えた話を挟む意図は何なのでしょうか。話の流れを切り替えるためか、マンネリ打破のためか、話に奥行きをもたせるためか。【2】
 
 
■「二人の旅立ちと不穏な再会」
 クルーズトレインの「七つの星」で、ホームズと葵は九州の旅に出ます。葵の誕生日を祝っての、いわば婚前旅行です。車中のことが丁寧に語られます。ファッション、食事と、明るい話題が続きます。
 そんな中、意外な人物が現れ、突然の謎解きが展開します。ただし、その内容といい推理といい、中途半端なものに留まっています。物語の内容のみならず、背景と登場人物の個性が鮮明になっていただけに、言葉足らずです。もったいないと思いました。【3】
 
 
■「瞳に映るもの」
 クルーズトレイン「七つの星」の中で起こった、嫌がらせの張り紙をめぐって、筆跡鑑定がなされます。具体的な例証が文字面からは伝わりにくいためもあって、スッキリしません。後半の求愛の場面は、さらりと語り終えようとしています。若い読者たちへの配慮でしょうか。もう少し語ってもよかったのではないでしょうか。【3】
 
 
■「掌編 宮下香織の憂鬱」
 挿話が中途半端です。いっそのこと、オムニバス形式にした方が良かったのでは、と思いました。
 香織は、「蔵」の店長に告白する前に振られます。話を持ちかけられての、そこでの店長の言い分に異議があります。あまりにも単純だからです。違う考えも、当然のことながらあります。【3】

■「エピローグ」
 爽やかなまとめです。これまでと、これからが見通せています。人の心が描けていると思いました。
 
 
■「掌編 秋人は見た〜一触即発の夜〜」
 短いながらも、軽妙で楽しい話です。この作者は、こうしたショートコントがうまいと思われます。物語性が求められる中編と、さらに構成力が必要不可欠な長編は、さらなる文章修行が求められると思いました。【4】
 
 
 
posted by genjiito at 19:57| Comment(0) | ■読書雑記
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