2018年10月17日

清張全集復読(23)「九十九里浜」「いびき」「声」

■「九十九里浜」
 突然舞い込んだ手紙から、家系の複雑さが姿を見せます。40年目にして初めて異母姉の存在がわかったのです。逢いに行きます。しかし、話は私が思ったようには展開しないままに終わります。
 背景として、清張自身の祖父母のイメージを持って語っているように思いました。ただし、うまくまとまらなかったようです。【2】
 
 
初出誌:『新潮』(1956年9月)
 
 
 
■「いびき」
 自分ではどうしようもない鼾。それをテーマにした、何となくおかしい中にも、人間の根源を突く問題が語られています。いい味が出た作品に仕上がりました。【4】
 
初出誌:『オール讀物』(1956年10月)
 
※『松本清張全集 36』(文藝春秋社、1973.2.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には次のようにあります。
この小説の発想は私自身の経験からの空想で、もし、兵隊で敗走したとき、敵は敵軍ではなく、私のいびきを恐れる戦友ではないかと考えたものだ。この体験を、市井の浮浪者に置き換えたもので、このとき参考資料として使った『日本行刑史稿』に拠って、あとで一連の「無宿人別帳」を書いた。これはのちに私自身の手で一幕ものにし『文學界』に発表した。前進座で上演され、別にテレビでは宇野重吉が演じた。(544頁)


※戯曲『いびき地獄』(『文學界』、1982年12月)は、この「いびき」を3幕物に仕立てたものです。『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のように記されています。
物語の構成、登場人物、舞台設定ともほとんど変わらない。ただし、科白回しに一段と工夫が凝らされ、劇作家としての清張の力量をうかがわせる。(17頁)

 
 
 
■「声」
 新聞社で電話交換手をしている朝子は、声で誰かがわかる耳を持っていました。社員300人もの声を聞き分けるというのです。そして、殺人事件の現場に間違い電話をかけ、犯人らしき男の声を聞いたのです。その朝子が殺されます。
 警察は、客観的、合理性のある筋道のどこに間違いがあるのかを考えます。読者も付き合わされます。あまり複雑なトリックではありません。しかし、きれいに収まるので納得します。ささやかな謎解きで読者を惹きつける、うまい展開です。【4】
 
 
初出誌:『小説公園』(1956年10・11月)
 
 
 
posted by genjiito at 21:22| Comment(0) | □清張復読
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