2018年07月30日

「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がリニューアル(その3)

 大量の調査カードを、コーニツキー先生が「ファイルメーカー」に入力なさっていた作業を引き継いですぐに、インターネットで公開するデータベースの設計に入りました。そして、無事に公開に漕ぎつけたのは、2001年11月でした。大内英範氏の協力を得て、検索システムも実装しての稼働です。予想外にハイペースです。

 ただし、まだこのデータベースは、国文学研究資料館で正式に認められたものではありませんでした。安永尚志先生のご理解が得られ、そして原正一郎先生のご支援とご協力が得られたことにより、データベースの公開実験ということで運用が始まったものなのです。具体的には、情報発信に使用するパソコンを国文学研究資料館のネットワークシステムの外の回線につなげての、あくまでも研究としての実験でした。ファイアーウォールの外なので、セキュリティに守られていないエリアからの公開だったのです。どのようなアタックがあり、いつダウンするかもわからないという、非常に危うい環境下でのものでした。それでも、安永先生と原先生が親身になってデータベースのことを配慮していただいたお陰で、何もトラブルもなく運用しつづけることができました。ありがたいことでした。
 実際の公開に当たっては、野本忠司先生も直接マシンを操作してくださったおかげで、スムースな運用ができました。みなさんの叡知が集結したデータベースだったのです。

 そうこうする内に、次第に海外からの反応もあり、このデータベースの有用性が館内にも示せるようになりました。公開件数も増えてきた段階で、ちょうど国文学研究資料館内のシステムの入れ替えの話が耳に入りました。基幹サーバーで運用するデータベースシステムの大幅な再検討が始まったのです。しかし、まだしばらくは「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」は館内で認められないままに、館外に置かれた、ファイアーウォールの外の回線から情報発信をするしかありませんでした。
 晴れてセキュリティに守られた館内のサーバー上からの公開となったのは、まだ数年後のこととなります。

 今、手元に詳細な資料がないので、手控えで回想記をつづります。正確なことは、後日しかるべき時に補訂するつもりです。
 今、手元の資料でこの時期の活動を確認できるものは、次のメモが一番詳しいものです。これは、館内の電子情報事業部に提出した予算配分に関する私見を記した書類の下書きです。日付は、2004年2月です。

欧州所在日本古書総合目録データベース(担当者・伊藤鉄也)

今回の配分額に関する意見

【現状】
・本事業は、ケンブリッジ大学Peter Kornicki教授の調査・収集になる、欧州諸国に散在する和古書の書誌カード(手書き)のデータベース化である。
・Kornicki教授の手許に存在する約2万枚のカードのコピーを入力し、同教授に返送。
・同教授により再び送付されて来た、赤字校正が入ったカード(コピー)を校正入力する。
・入力の済んだものについて、ある程度量がまとまった時点でデータベースに追加、公開する。
・現在は、約3800件を公開している。23カ国以上から、年間約2500件のアクセスがある。
・データはXML形式で構造化されている。
・検索エンジンは、現在はYggdrasillを使用。PerlAPIによって取り出されたXMLデータをXSLTによりHTML化している。しかし、表示について利用者環境に左右されないよう、Sablotronによりサーバーサイドで処理をしている。
・必要なプログラム、スクリプト等は開発済みである。しかし、データのXML形式化およびXSLTの微調整等の作業が日常的に発生している。
・また、データベースに関連して、「所蔵機関」等のデータ収集作業(URLや蔵書目録ほか)なども行なっている。
・2年目に現行データベースシステムを見直し、新しいシステムを開発したい。
・今後とも国文学研究資料館における海外向けの情報発信として重要な意義がある。

【配分予算の42万円でもできること】
・昨年を基準にすると、校正作業も含めて、2ヶ月分のデータ作成用アルバイト謝金となる。(年間作成予定2000件のうち、300件を公開することになる。)

【配分予算が42万円ではできないこと】
・6年で完成するデータベースが、30年もかかることになる。
・調査旅費を活用して、海外の研究者との打ち合わせと参考文献・参考資料などの付加情報を充実させてきた。予算が足りないとそれが不可能となり、緊密な連携によるデータベース育成ができなくなる。
・作業用パソコンは伊藤の研究用マシンを転用している。この小額予算では、本事業のためのパソコンが購入できない。
・調査カードのコピーと校正資料を、国際メール便で頻繁にやりとりしている。それができなくなる。
・補佐員が必要。ケンブリッジ大学との頻繁な資料のやりとりや、データベースのメンテナンス、および所蔵機関に関するデータ収集・整理などの膨大な作業が安定してできなくなる。
・現在は独自システムで稼働しているため、2年目にシステム開発をして館内システムでのデータベースサービスを予定している。このままでは、それができなくなる。

 以上が、要求額である●●●万円に近い配分を要望する理由である。

 なお、Kornicki教授からは、本データベース作成に関する権利のすべてを委譲されている。


 何とも、台所事情の苦しい中で、懸命にデータベース構築のための運用に邁進して行こうとしていたことが伺われる内容となっています。
 42万円の予算でスタートしたものの、年末に追加要求をした形跡があります。しかし、それは認められませんでした。

 2005年1月には、こんなメモもあります。

・ケンブリッジから来た新規カード      1,276件
・ケンブリッジからの校正済みカード     2,177件
・ケンブリッジから来た新規データ      150件
・ケンブリッジに送付したカード       743件
・現在入力中のカード            879件
・HPアップ用(担当者に手渡し済み)    2,794件
・ケンブリッジから送付されたて来た回数   約7回
・ケンブリッジへ資料を送付した回数      2回


 以上は、「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がデータベースとして出来上がっていく過程の概要等を、2005年までの分として整理したものです。

(以下、続く)
 
 
 
posted by genjiito at 23:37| Comment(0) | ◎国際交流
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