2018年06月21日

キャリアアップ講座(その4)『源氏物語』のくずし字を読む(し・人・ん・尓・の)

 国宝『源氏物語絵巻』の「鈴虫」巻に関する追加の資料を配布して始めました。

 まず、「し」が文字間の調節に用いられていることを、次の緑囲いの部分(2丁裏〜3丁表)の5例で確認しました。

180621_si.jpg

 行末の「人」と「ん」については、上の写真の赤囲いの部分の例で確認できます。
 これは、糸罫を使っていたために上に引き上げられた形であり、まさにマット上で開脚したような形になっています。

 ユニコードに採択された「尓」は、その崩れ方から2種類の文字が登録されています。今回も、その2パターンが近接したところに見られたので、やはり2つのフォントとして国際基準の文字に認められてよかったと思いました。次の青囲いの「尓」(2丁裏)がそれです。

180621_ni.jpg

 ただし、翻字する側の者としては、「尓」1文字では、この2パターンが区別できないので問題が残ります。とはいえ翻字の現場で、同一仮名の字母において複数の字形を認めると、その織別の煩雑さは倍加します。

 明治33年に、平仮名は「の」という1文字に国策として制限統制されました。しかし、実際の表記は「乃」の場合も橙囲いの字形に見られるように、2つの形が認められます(3丁裏)。

180621_no.jpg

 これを区別するとなると、「変体仮名翻字版」による翻字データベースがさらに複雑になって、作成に手間取るだけです。
 翻字における字母の表記は、当面は1文字の漢字に留めておいた方がよさそうです。コンピュータの表示能力と分析技術がさらにレベルアップした時に、人間のアシスタントとして成長した時に、こうした細分化した字母で翻字をすればいいと思います。今は、平仮名1文字に制限された旧態依然たる翻字方針を脱却することを目標としています。まだ、コンピュータは未成熟です。さらに高度な処理ができるようになったら、翻字の技術も上がるはずです。その時代に合わせてステップアップをしながら、字母を交えた古典籍の本文データベースを構築していくつもりです。これは、次世代に託すことになりますが。
 それにしても、明治33年に断行されたあの仮名文字の国策統制は、思い切ったものであったことを実感しています。

 今日は、3丁裏の最終行まで確認しました。
 次回は、再来週の7月5日(木)午後3時からです。
 場所は、今日と同じ、1号館4階のセミナールーム1です。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ■講座学習
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