2018年06月07日

キャリアアップ講座(その3)『源氏物語』のくずし字を読む

 キャリアアップ講座で歴博本「鈴虫」を読んでいます。この社会人講座も3回目。受講者の皆さまのご意見を伺いながら、一緒に勉強する部屋を、今回も変更しました。これで3つ目の部屋です。どうやら、この部屋であれば、今後とも快適に勉強ができそうです。

 さて、今日は最初に、40頁分のプリントを製本したものを配布しました。これは、今後とも使う予定の資料をまとめたものです。

(1)「鈴虫」巻33本の写本の本文異同を整理したもの
(2)拙著『源氏物語の異本を読む−「鈴虫」の場合−』(臨川書店、2001年)から長文異同があることを論じた部分
(3)変体仮名を視覚障害者や日本語を勉強したい方に音声で説明するときの文案
(4)ユニコードに採択された変体仮名の説明文

などなどです。
 1冊ずつ製本機でバインドしたので、毎回持参してもらいやすくなっていると思います。製本のお手伝いをしてくださったみなさま、ありがとうございました。

 その配布資料の確認をした後、ユニコードに変体仮名が認定された話を詳しく語りました。マスコミなどがこのことを無視しているので、この話を小まめにするようにしています。日本語の基幹部分をなす仮名文字について、もっと国民として興味を持ち、わが事としてとらえてもいいはずです。言葉に鈍感になると、文化は次世代に継承されなくなります。このことは、今後とも機会を見つけては言い続けたいと思っています。同じ話を何度も聞かされる方には申し訳ないことです。ご理解をお願いします。

 写本を読むことに関しては、前回の続きである2丁表の1行目から読み出しました。
 快調に進んでいたところで、はたと立ち止まりました。テキストが次のようになっている箇所でした。

180607_houwo.jpg

 「ほうを」のところで、その右横に(判読)とあります。私の翻字方針については、このテキストの巻頭部分の凡例に書いています。この「(判読)」の項目を引きます。

(12) 書写されている文字が明瞭に読み取れなくても、文字の一部と文章の流れから類推して読める場合には、「(判読)」と明示して読み取ったものがある。
    (判読)
  例 ほうを
 ここで「う」(2オ3行目)は、単独では判然としない字形となっている。その前後の文脈から「う」と判断したものである。


 つまり、ここでの翻字で「(判読)」としたのは「う」に関することでした。
 ところが、今日の受講者からの質問は、その真上の文字についてでした。

180607_hauwo.jpg

 ここは、「はうを」ではないか、ということです。配布した校訂本文では、「法を」とあり、そのルビは「はう」となっているのです。これを見て、私はすぐにここは「ほう」ではなくて「はう」が正しい翻字ですね、と応えました。
 ところが、家に帰ってから諸本を調べたところ、「はうを」と書いた写本は一本もありません。「ほうを」が32例、「方を」が2例ありました。つまり、ここでの翻字は、「ほうを」でいいようです。上の写真の文字を見ても、「ほ」でも「は」でもどちらとも読み取れる形をしています。そこで、私としての結論は、「ほうを」のままでいい、ということにしたいと思います。
 本日の講座に参加なさっていたみなさま、二転三転ですみません。

 また、「く」のように見える「て」の字母は、もう「弖」とすることを公言しました。今後は、この「弖」を使った翻字に変えていきます。
 「个」か「介」については、まだ「介」にすることには抵抗があります。保留です。

 こんな調子で、1頁半ほど読み進みました。
 終わってから参加なさっていた方が、目と頭がクラクラするほど疲れました、とおっしゃっていました。
 とにかく、頭の中がフル回転の講座の様相を呈してきているようです。
 これは、願ってもないことです。

 次回は6月21日です。
 
 
 
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | ■講座学習
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