2018年05月27日

読書雑記(225)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ5 〜シャーロキアンの宴と春の嵐〜』

 『京都寺町三条のホームズ・5 〜シャーロキアンの宴と春の嵐〜』(望月麻衣、双葉文庫、2016年8月7日)を読みました。

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■「桜色の恋文」
 城崎への温泉旅行の際、与謝野鉄幹の歌と晶子のことが、少しだけ語られます。点景にはもったいないネタのように思いました。
 葵の前向きな考え方が強調されています。型通りながら、いかにもありそうな高校生の姿なので、この無色透明な女の子を中心とした路線でいいと思います。ただし、『男同士の話』として持ち出される「淫行罪」とか「免罪符」のくだり(57頁)には、作者の背伸びを感じました。後段の画家の話は蛇足です。【2】

■「シャーロキアンの宴」
 シャーロックホームズに関する蘊蓄も、適度なところに留まっていて、好感を持ちました。踊る人形も、挿絵が気分転換になりました。『桜の枝殺人事件』も、ドイルのホームズシリーズ未公開原稿も、味付けが適度でした。マニアの集まりという雰囲気が語られています。【4】

■「紫の雲路」
 サッカーの「京都サンガF.C.」にまつわる話です。そこに、大木高校の古典の教員である早川先生とサッカーの一条選手との恋愛話が絡みます。そこで引かれる『百人一首』の「瀬をはやみ」の77番歌。ただし、216頁では「あはむとぞ思ふ」なのに、220頁では「あわむとぞ思ふ」となっています。また、それぞれにほぼ同じ現代語訳が付いています。「一度分かれても」と「今は、」で微妙に異なりますが。もう一つの50番歌との関連も、深く考えない方がいいようです。どうしたことか、ネタがバラバラでした。【1】

■「茜色の空に」
 セキュリティシステムの暗証番号と『百人一首』の第9番歌「花の色は」の小野小町の歌が交錯します。そこから灰桜色のカラーコードとなると、もう無理を感じます。作者には、二進数の発想はないようです。なかなか凝った趣向であるものの、現実離れがしています。さらには、第十番歌の蝉丸。また、西行などの和歌や、イギリスのビッグベンにまで飛ぶと、もうなんでもありで混乱するだけです。
 しかし、最後の展開は好印象です。次作を読むのが楽しみになります。【3】
 
 
 
posted by genjiito at 20:00| Comment(0) | ■読書雑記
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