2018年05月26日

[町家 de 源氏](第9回)(【画像変更】糸罫が動いた結果)

 勉強会場としてお借りしている「be京都」は、いつも気持ちがいい部屋となっています。

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 窓際には、認定証がありました。初めて見ます。

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認定証

 名称 「be京都」
 所在地 京都市上京区

京都市民が残したいと思う
〞京都を彩る建物や庭園≠ニして
選定します

平成27年1月6日

京都市長 門川大作


 今日は参加者4人で、実に多くの問題を考えました。
 その内でももっとも時間をかけたのは、写本に書かれている文字が傾いたものについてです。
 ああでもない、こうでもないの末に、一応の決着を見ました。

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 まず、10行書きの枡形本で、5行目の行頭(赤矢印の箇所)が少し左に傾いていることに始まります。
 それに呼応するかのように、その行末は、もう1字書けそうなスペース(青○印)が空いています。
 これらの状況は、紙面に置かれた糸罫の右側が少し上に引き上げられたため、この行末が下限となっていたと考えられます。
 次に、6行目の行頭「里」が、右隣の「て」で始まる行との幅が開いていることについて。
 5行目で「てしも」と書き始め、墨継ぎのために筆を休め、「可ゝる」と書き出したところで糸罫の右側が上に引かれるように少しズレたと思われます。また、この「可」は、これまでの「可」とは違う筆の入り方をしています。私がよく比喩として使うように、トイレに行って帰ってきたことを想定してもいいでしょう。
 7行目の行頭「そは人」と書いていき、その行末の「八へり个」まで書く間に、書写者は糸罫がずれていることに気づいたようです。私は、「そは人の」の「の」が「人」の左下で不自然な位置にあるので、この文字あたりからではないかと見ています。
 8行目の行頭の「れ」が前行末尾の「个」と墨色が異なり、時間の経緯を示していることから、ここで糸罫を置き直してのではないかと推測したらどうでしょうか。
 糸罫を所定の位置にセットしてから、墨継ぎをして「といひいつる」と書いていくのです。ただし、まだ置き方が中途半端だったのか、その行末では「さること」に続く「も」を、十分に空間があるにもかかわらず、左行間に書いています。

 糸罫がずれたのは、まだ理由があります。
 4行目の中ほどで、「人もまこらへ」と書いた時、すぐに間違いに気づき、「こらへ」の上から「ことに」となぞっています。その横の傍記である「こと尓」は、本行の「ことに」がなぞったものであるために読みにくいことから、後の人が傍記の形で正しい読みを書き添えたものと思われます。

 ここには、さらに書写者のミスがあります。それは、「まことに」となぞったすぐ後に、「をし」と書いているところです。ここは、諸伝本ともに「を可し」となっているところです。「可」が小さかったために見過ごされ、結果的に脱字の状態で書いたことになったのです。
 とにかく、ここを書写していた人は、ここでなぞりと脱字を冒すほどに集中力を欠いていた時でもあり、つい糸罫を不用意に触って動かしたのだろう、と考えてみました。そのために、5行目から8行目の頭部が左に少し振られたように書かれているのです。

 以上はすべて、糸罫が動いて行が少しゆがんだ、ということを想定しての推測です。このように考えると、写本の紙面に書写された文字列のゆがみや、書写間違いや訂正を含む書写者の状況が説明できるのです。
 一案として提示しておきます。

 今日は、8丁表5行目行末の「秋」まで読みました。
 次回の[町家 de 源氏物語の写本を読む]の集まりは、6月18日(月)午後2時から「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で行ないます。この日は、月曜日です。曜日にお気をつけください。
 
 
 
posted by genjiito at 21:15| Comment(0) | ◎NPO活動
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