2018年04月21日

[町家 de 源氏物語の写本を読む](第8回)(糸罫の試作品完成)

 今日の「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)での勉強部屋には、端午の節句の飾り付けがなされていました。
 いつも季節季節の雰囲気に包まれた和室で、気持ちよく『源氏物語』を読んでいます。

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 今回から、同志社大学2回生の若者が参加です。テキストである『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』を持参です。『和泉式部日記』の異本に興味があるとのこと。『四本対照 和泉式部日記 校異と語彙索引』(拙編、和泉書院、1991年)を参考にと渡しました。これは、もう27年も前にした仕事です。『和泉式部日記』の字母索引はこの本しかないので、今も利用されているようです。頼もしい新人の今後の活躍が楽しみです。

 さて今日は、待ち望んでいたものが持ち込まれました。毎回のように話題となっている糸罫の試作品です。NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の理事でもあり、この勉強会のお世話をしていただいている石田弥寿子さんの労作です。

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 裏面で糸を止めている処置はこれでいいのか、まだ検討課題はあります。しかし、とにかく物の形が見えると、写本がぐっと身近に思えてきます。この糸罫を書写する用紙の上に置き、親本のままに書き写していたと考えられます。

 試しに、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の巻頭部分の上に置いてみました。なかなかいい感じです。
 枠の大きさや、糸の張り具合については、追い追い調整しましょう。

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 目の前に糸罫があるせいか、写本を読んでいても、すぐに、どのようにして書写していたのかに話題がいきます。
 例えば、今日読み進んだ中では、6丁裏にあったこんな例で頭を悩ませました。

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 この写真の2行目(実際は4行目)の下から2文字目の「人」は、糸罫の行の横幅スレスレか、それよりも大きいものかと思われます。これまでは、左手の親指と人差し指で糸を押し広げて行間を広くして書いている、としてきました。しかし、この行末では大きく行間を広くできません。さて、糸罫をどう使っていたのでしょうか。それとも、糸罫は使わずに書いていたのでしょうか。

 その視点で見ると、その3文字上の「【侍】尓志」において漢字で書かれた「侍」の左側の人偏は、次の行の「那く」の「那」と糸を介してスレスレの位置になります。ここでは、筆が糸罫の糸に触れていたように思われます。これも、実際はどうだったのか知りたいところです。

 さらに、「人」の次の行末の「いま尓」の「尓」は、行末ということですぐ下に糸罫の横板があり、筆を下に抜くことができません。そこで、右横に筆を抜いています。それが、すぐ右横の「人」という文字と糸を挟んでぶつかりそうです。ここでも、文字と文字の間に張られている糸に、書写中の筆が触れていてもおかしくはありません。

 一行飛んだ行末の「【侍】ら」の「ら」は、糸罫の下部に木の部分があるため、糸罫を置いたままでは書けません。ここは、糸罫を5ミリほど下にずらしたのではないか、と考えてみました。行頭はきれいに文字が揃っているので、上にずらすことはなかったようです。この、書写中に使っていた道具である糸罫を下にずらすことは、実際になされていたのでしょうか。
 そう思いながら、さらにこの「ら」をよく見ていると、「ら」の文字の書き始めのところの背面に、なぞられた文字があるように見えて来ました。

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 その下の文字は、行末の文字としては枠内に収まっています。そして、この「ら」の下には寸足らずの「ら」が小さく書かれていることが判読できそうです。この形の「ら」は次丁にもあります。ということは、ここのなぞられた「ら」は、糸罫を外した後に小さく書かれた「ら」をなぞるようにして書き足された文字である、ということになりそうです。原本を再確認しないと、このことは断定できません。これも、今は疑問の残るところとして記録しておきます。

 もう一つの例もここにあげておきます。次回に読むところながら、7丁表の後ろから4行目と5行目は、その行間が明らかに狭くなっています。

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 ここは、どうしても糸罫は使っていない箇所だといえます。糸罫がズレたために、9行目からは本来の位置におき直した、ということは考えられます。しかし、実際にはどうなのでしょうか。なぜこのような書写になっているのか、糸罫という道具を使っていたという前提では、どうしても説明しにくい例です。

 今回は、糸罫の試作品ができたために、かえって書写状態について多くの疑問が生まれました。
 こうした点について、ご教示をお願いするしだいです。
 
 次回は、5月26日(土)午後2時から4時までです。
 さらに、その次は6月18日(月)午後2時から4時までです。この時だけは、月曜日なのでご注意ください。
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ◎NPO活動
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