2018年03月25日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2017年度-その10)

 午前中に京橋区民館であったNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の打ち合わせ会を終えると、急いで日比谷公園に向かいました。公園内では、もう桜が満開です。「鶴の噴水」の周りが一番みごとでした。

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 「日比谷カレッジ 古文書塾 ‘てらこや’」の中で展開している5回でワンセットの『源氏物語』の講座も、今回でひとまず2回目のサイクルの最終回となります。5回の講義を一区切りとするものなので、月1回の講義もあっという間です。お陰さまで少しずつ受講者が増え続け、長年通い続けてくださる方も多くなりました。次は5月からスタートです。
 写本に書き写された文字を確認しているだけの講座にもかかわらず、多くの方々が受講してくださっていることに感謝しています。

 日比谷図書文化館の入口にあるイベントの案内板には、「古文書塾てらこや 国文学研究資料館「源氏物語 若紫」を読む」という掲示があります。これは、正確には「国文学研究資料館」ですね。

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 さて、今日はビルマ語訳『源氏物語』が見つかったことに始まり、ミャンマーにも糸罫や異体字があったことを報告することから始めました。これまでにまったく知られていなかった情報なので、興味を持って聴いてくださっていました。

 毎回提供している京都新聞に掲載されたニュースとしては、次の2つの話題を提示しました。

(1)洛北は洛中よりも気温が1.8度も寒いという記事(京都新聞、2018.3.17)
 (ちょうど我が家の辺りが例にあがっていたこともあり、京都を知る一助にと配布しました。ただし、これが古典を読む際に参考になるかというと、それはまた別問題です。現在の洛中の建物の高さと密集の度合い、そしてエアコンの室外機が吐き出す熱気を勘案すると、とても平安時代とは同じ環境だとは思えないからです。)

(2)京都府立盲学校所蔵で、明治11年設立の盲唖院以来の教材などが、このたび重要文化財に指定された記事(京都新聞、2018.3.14)
 (点字以前の「木刻凸凹字」のカタカナなどが写真で紹介されています。こうした手作り教材などの貴重な資料を、これまで多年にわたって詳細に調査研究をしてこられた岸博実先生のことが、この新聞記事には一字も見当たりません。この記事を書かれた記者の情報収集範囲が、盲聾学校の2人の校長のコメントに留まっていたことは、事実の外周部をなぞっただけという程度だったので残念でした。)

 さて、「若紫」の本文を確認する本題は、29丁裏7行目(76頁)から31丁表1行目までを、字母に注目しながら見ていきました。
 その過程で、私の翻字が間違っている箇所を指摘してくださいました。
 30丁表9行目で、テキスト『国文学研究資料館蔵 橋本本『源氏物語』「若紫」』(新典社、2016.10)の翻字が「うまれ」となっている箇所です。ここは「う万れ」となる、ということです。

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 確かに、ここの翻字は変体仮名を漢字にもどして表記すると、「万」となるべきところです。明らかなミスというよりも誤植というべきものなので、ここに訂正してお知らせします。

 また、31丁表5行目(79頁)の次の文字列「しろし免され」では、「さ(左)」と読むことになるはずの文字が、どう見てもそのようには見えない姿形で書写されていることも、皆さまと確認しました。

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 ここの翻字は、「しろし免△れ」とするか、「しろし免され/さ〈判読〉」かのどちらかとなります。この直後の「さ」の字形から見て、ここは仮名文字が簡略化され過ぎたための結果だと思われます。「△」という付加情報としての記号は、どうしても読むことができない不明な文字に当てるものです。ここでは、「さ」と読むことも何とか可能だということから、「〈判読〉」という付加情報を付けることで対処した、「しろし免され/さ〈判読〉」に修正したいと思います。
 なお、この部分に関して、諸本に本文の異同はありません。
 「変体仮名翻字版」でのデータベース化が遅れているので、明治33年に統制された現行の平仮名約50種類での表記による異文校合の結果で示します。

しろしめされさりける[橋=大尾中麦阿陽池御国肖日穂保高]・・・・052429
 しろしめされさりける/後さ〈改頁〉[伏]
 しろしめされける[天]


 さらに、用例の同じ行末近くに見られる「ける」の「る」が「【事】」の右横上に小さく添えられた形となっていることにも注意したいところです。
 さらには、次の行末の「【大殿】も万いり」の「万」の位置が、中心線から左に寄り、「も」と接近するように書かれていることも、ここでの書写状況をいろいろと教えてくれます。
 この書写者は、この辺りでは筆写する上での集中力が緩んでいる、と見ていいのではないでしょうか。そのために、字形が曖昧なままに、そして字配りがふらつきながら書写が続けられていったのではないでしょうか。あくまでも、勝手な想像を交えた見方です。

 昨日は、福島県立盲学校高等部国語科の渡邊寛子さんが、息子さんの介助を得て講座に顔を出してくださいました。全盲にもかかわらず、『源氏物語』の写本を触読できる仲間です。もう3年のお付き合いとなりました。いつも前向きなので、会うたびに私の方が元気をもらえます。
 渡邊さんは、その後の有楽町駅前での課外の勉強会にも参加してくださいました。日頃はできない話が、参加なさっていた十人ほどの受講生のみなさまと一緒に、楽しくできました。いい仲間に囲まれているな、ということをいつも実感しています。

 なお、日比谷公園から有楽町駅に行く手前の日比谷シャンテ前では、しばらく姿を眩ましていたゴジラが、あらためてその迫力のある姿を見せていました。おかえり、と声をかけたくなります。

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posted by genjiito at 20:59| Comment(0) | ◎NPO活動
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