2018年03月22日

読書雑記(224)高田郁『あきない世傳 金と銀 五 転流篇』

 『あきない世傳 金と銀 五 転流篇』(高田郁、時代小説文庫〈ハルキ文庫〉、2018.2.18)を読みました。

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 桔梗屋を買い上げて店主孫六を助けた五鈴屋は、本店と高島店の2つの店舗としてスタートします。6代目の女房となった幸の機転と発案が、見事に好転していくのでした。筆の力もいよいよ確たるものとなり、物語は着実に前に進んでいきます。
 『みをつくし料理帳』のシリーズを堪能した者にとって、この新たなシリーズにはなかなか馴染めませんでした。話が江戸の料理から浪速の商売へと転じ、金儲けとは生来無縁な私にとって、なおさら話題が他人事でした。しかし、第5巻ともなると人間関係の妙に筆が及び、物語の背景が楽しめるようになりました。幸の才覚を楽しみにし、商売敵の真澄屋に出し抜かれないようにと応援するようになりました。これで、このシリーズも安心です。
 とにかく、智蔵と幸夫婦をはじめとして、人と人とのつながりを意識した、人間関係を紡ぐ物語となっています。
 第4章「結」が一番印象深い章でした。帯の結び目が前か横か後ろか。大坂の商家では当たり前のように結婚後は前に結んでいた帯に、妹の結の疑問から意識が変わります。文化の変わり目が投げかけられたのです。
 そして、幸の身体に変化が、結の将来を暗示する場面などなど。この章から、新しい物語の胎動を感じました。ただし、これはうまく躱されますが……
 第11章「十五夜」は、心に残る出来栄えでした。月光の下での智蔵と幸夫婦の会話は、高田郁が得意とする場面です。この語り口は相変わらずうまいな、と思います。
 智蔵と幸夫婦は、近々江戸に出るようです。『みをつくし料理帳』では、江戸で澪が大活躍しました。しかし私は、このシリーズではそうではなく、もっと大坂で展開する物語を期待していました。物語の幅と広がりと読者層などを秤にかけると、作家としては舞台を江戸にしなくては、ということなのでしょう。関西に踏みとどまって物語ってほしかったと願う者としては、しかたのないこととはいえ残念です。【5】
 
 
 
posted by genjiito at 23:15| Comment(0) | ■読書雑記
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