2018年02月16日

清張全集復読(15)「父系の指」

 不遇だった父を想う、清張の情愛に溢れる言葉で綴られた回想記となっています。やはり、清張にとっての父は特別だったのです。それは、他の作品を読んでいると、父への思い入れが異常なほどであることからも言えます。
 本作品で言えば、特に前半は、事実に近い自伝だと思われます。
 かつて、『白い系譜』という作品について、本ブログで連載しました。この「父系の指」は、これと対峙する作品だと言えます。

「清張全集復読(1)松本清張の家系の謎『白い系譜』(1)」(2014年08月08日)

「清張全集復読(2)松本清張の家系の謎『白い系譜』(2)」(2014年08月09日)

「清張全集復読(3)松本清張の家系の謎『白い系譜』(3)」(2014年08月10日)

 後半は多分に創作も交えた話となっているのではないでしょうか。迫力が途端になくなっているからです。

 鳥取県の南部、現在の日野郡日南町の矢戸が父の生まれた場所であり、今は清張の文学碑がこの矢戸を見つめています。
 池田亀鑑賞の授賞式に出席するため、この10年で何度もこの町に通いました。そして、清張のことを調べておられる足羽先生に町内を案内していただいたり、久代議員のお世話で清張のことを幾度も聴きました。住民の方にもお目にかかり、知られていないこともうかがっています。自分にとっても身近な日南町のことなので、清張の話を聞き入るようにして読みました。
 清張が父を語る時には、万感の想いが込められています。
 父の相場師仲間に盲人がいたことが出て来ます。このことは、何かの小説に出てくるのでしょうか。今、思い出すものはありません。
 清張が、大阪の出張帰りに途中下車をして矢戸に立ち寄ります。その時、こんなことを書いています。後の『砂の器』を連想しました。

この奥の出雲の者らしく、東北弁のような訛である。(411頁下段)


 伯備線の生山駅を降り、親戚の家に行きます。医者をしている家です。写真を見せられて時間潰しをするものの、ご主人がなかなか帰らないので、そのまま帰るのでした。その後、東京で父の兄の豪邸に行きます。そして、血のつながりを思わす父系の指に出くわします。
 父を通して、肉親というものへの複雑な感情を綴っています。清張の小説の底流をなす物の見方が、余すところなく語られています。【5】


初出誌:『新潮』(昭和55年9月)
 
※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)に「「骨壺の風景」と並ぶ清張の数少ない私小説の一つで、家族に関する事実関係は自伝『半生の記』とほぼ合致する。(154頁)。」とある。
 
 
 
 
posted by genjiito at 22:10| Comment(0) | □清張復読
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