2018年02月06日

読書雑記(221)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ・4』

 『京都寺町三条のホームズ・4 ミステリアスなお茶会』(望月麻衣、双葉文庫、2016年04月)を読みました。

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■「年の初めに」
 本書のシリーズ化に伴い、読者を引きつけるために置かれた小話です。矢田地蔵、楽茶碗、コーヒーフレッシュと、物語世界の用意が整いました。


■「ビスクドールの涙」
 八坂神社から清水寺という、京都観光の王道とでもいうべきコースを、清貴と葵は散策します。お互いが好意を伝え合えないまま、その気持ちを内に抱え込んだままに、初々しいデートです。祇園のチョコレートカフェや、祖母の人形にまつわる推理など、読者へのサービス満点の話としてまとまっています。物語の中味よりも、その語り口が優しいので、次の話が楽しみになります。【4】


■「バレンタインの夜会」
 バレンタインの夜、吉田山荘のカフェ真古館で朗読会があります。それまでの話が退屈だったので、私は適当に読み流そうとしていました。ところが、夜会が始まるや、がぜんおもしろくなったのです。一気に読ませます。前半でもっと読む者を惹きつけておけたら、さらに完成度が高くなったことでしょう。【4】


■「後継者の条件」
 今宮神社の話をもっと語ってから、その西にある鷹峯の屋敷での骨董鑑定につなげたらよかったのに、と思いました。今宮神社では、毎月1日に骨董市が開催されます。雑多な古物が境内に並びます。せっかくの話題が、うまく連携しないのは惜しいことです。もう一捻りです。作者は、まだこの骨董市に行っていないのでしょうか。
 さて、本題の鑑定は楽茶碗から始まります。しかも葵が。八碗の茶碗の陶工の名前を当てる試験です。これはありふれた内容で、おもしろい展開にはなりません。引き続き、家の中の宝物探し。その話の合間に語られる男と女の愛憎と純愛の話題は、どうも取ってつけたようでぎこちないのです。作者は、恋愛心理の分析が苦手なのかもしれません。巻末の場面でも、月に爽やかさがありません。【2】

 本作品は、語り口が優しくて、流れるように読み進められます。話にも無理がなく、今の京都の文化が伝わって来ます。本シリーズは、この調子で続くことを楽しみにしています。
 ただし、物語の展開が京都という背景に埋もれています。場所や物をもっと煮詰めて、背景に頼りすぎない物語にしたらいいと思いました。
 
 
 
posted by genjiito at 22:41| Comment(0) | ■読書雑記
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