2018年01月07日

清張全集復読(13)「笛壺」「山師」

■「笛壺」
 死に場所として、武蔵野の寂しい所を男は選びました。
 父親のことを、「俺が幼い頃、親父は女を作って家出し、零落して木賃宿住いをしていた。」(335頁)と言います。自分の父親のことを思い浮かべての文なのでしょう。
 男は今年69歳で、かつては延喜式の研究で恩賜賞を受けた畑岡謙造。彼は、妻子と1万5千冊の蔵書と学問を捨て、貞代という女に走りました。後悔はありません。
 25、6歳の頃、福岡県の中学で歴史を教えていた畑岡は、東大史料編纂所の淵島所長を調査地に案内し、高い評価を得て東京に出ることになります。しかし、恵まれないままようやく成果を出した後は、2人の女に恵まれない、孤独な学者の末路を歩むのでした。
 最後が、短編のせいもあってか、語りつくせないものを残して終わります。【3】
 
初出誌:『文藝春秋』(昭和30年6月)
 
 

■「山師」
 猿楽役者の大蔵藤十郎は、家康に知恵を授けます。それは、山師の技量を活かした金脈の掘削です。やがて天下を我が物にした家康は、佐渡金山と石見の銀山を唐十郎に任せました。職能集団の姿が描かれます。これは、清張自身の職工としての体験に裏打ちされた物語なのです。
 最後は、打算家としての家康の姿が描かれます。思い上がる職人を冷ややかに見つめる清張の奥深い眼を感じました。【3】
 
 
初出誌:『別冊 文藝春秋』(昭和30年6月)
原題は「家康と山師」
※『松本清張全集 35』(文藝春秋社、1972.7.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には次のようにあります。
私の歴史小説としては最初の気に入ったものである。(526頁)

 
 
 
posted by genjiito at 01:00| Comment(0) | □清張復読
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