2018年01月10日

読書雑記(218)白川紺子『下鴨アンティーク 神無月のマイ・フェア・レディ』

『下鴨アンティーク 神無月のマイ・フェア・レディ』(白川紺子、集英社オレンジ文庫、2016年7月)を読みました。シリーズ第4作です。

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■「星の花をあなたに」
 登場人物たちが考え、そして、自分の思いを語っています。その背景に、ファッションや草花が鏤められています。丁寧な語り口に惹かれます。
 ただし、ゆったりとした流れに、つい読み飛ばした部分があります。この作者の語りは、読む場所と時を考えて、のんびりと読み進むのがいいようです。作品は上質です。しかし、それを読もうとする私が慌ただしすぎました。『万葉集』を謎解きに使った、古典的な和歌の世界を持ち込んでいます。機会があれば、次はゆったりと読みましょう。【4】


■「稲妻と金平糖」
 鹿乃が生まれた野々宮家は、明治までは陰陽道が家職で拝み屋だったそうです。これは、別の作品に展開していく芽でもあります。
 後半で、やっと人の情が語られます。これまでとは違う文章になっています。突然のように、作者は新しい表現方法を手に入れたようです。前作でやや文章に張りがなくなっていたので、これは今後につながるいい傾向です。
なお、賀茂の丹塗りの矢の伝説は、作中に生かしきれていません。そのために、話題となった雷の帯の話が死んでいます。せっかくいいネタを揃えたのに、もったいないことでした。【3】


■「神無月のマイ・フェア・レディ」
 人間関係が少し複雑になってきます。帯の謎を追いかけていくうちに、慧の親をめぐり、さまざまなことがわかりかけてきました。人のつながりが、思いやりを持って語られます。慧が母親について思い返す場面の点綴は巧みです。そして、慧と鹿乃の距離も接近します。さらにその間に、春野が割り込んできます。ますますおもしろくなっていきます。人間が描けていることで、読み物の領域を出て、小説として成り立っています。【4】


■「兎のおつかい」
 天皇の即位式の後の頃の話だとあります。大正時代ではなくて、昭和の時代でしょうか。とすると、新築されたという京都駅はいつのものなのでしょうか。いずれにしても、ずっと昔の話に立ち返って語られます。兎の櫛が話題となります。時代の雰囲気をよく伝える内容です。
 物語も、夫婦の縁についてのものです。そして、お互いが思い違いをし、すれ違いの愛情がうまく語られています。素直な心とボタンのかけ違いの話がよくわかりました。
 最後に、曽祖父の蛙のネクタイピンと、曽祖母の兎の帯留めの話が、きれいに物語をまとめ上げています。【5】
 
 
 
posted by genjiito at 20:18| Comment(0) | ■読書雑記
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