2017年11月30日

熊取ゆうゆう大学:「若紫」を読む(その8)「盤」という文字

 今日も大学の図書館の一角で、学部1年生を担当者として、橋本本「若紫」の写本を変体仮名に忠実な読みをしながら勉強しました。
 この勉強会は、社会人の方と学生とがテーブルを囲み、一緒に変体仮名を読む集まりです。あくまでも、自主的に開催している課外学習です。今日の参加者は7名でした。

 ちょうど、付箋跡がある所が出て来たので、私がこの「若紫」を実見した時のことを話しました。この付箋跡は、書写した写本の本文を、跡で修正や追記するための目印だと思われます。もっとも、書写した人とは違う、別の人の仕業かもしれません。あるいは、後の人が他本と校合しながら、補訂箇所に付箋を貼ったのかもしれません。
 いずれにしても、後でまとめて手を入れる作業をするため、その行頭に目印として付箋を貼り付けた箇所であり、剥がした跡なのです。
 原本の紙面を、懐中電灯の光を斜めに当てて仔細に見ると、付箋の痕跡がはっきりと確認できます。このことは、昨秋、日比谷図書文化館の講座を受講しておられた皆さんと、原本を閲覧した折に確認したことでもあります。テキストとして使っている『国文学研究資料館蔵 橋本本『源氏物語』「若紫」』(伊藤鉄也・淺川槙子編、新典社、2016.10)では、こうした痕跡も忠実に再現できるように注記しています。

 橋本本「若紫」を読み進めていると、「盤」を字母とする文字は濁る音に使われていることが多いのではないか、ということが想定できるようになってきました。このことに、参加者は大いに興味を示しました。ささやかなことながらも、この集まりとしては一つの発見なのです。
 今日見た本文では、次の「【見】ゆれ盤」という文字列がその例の一つです。

171201_ba.jpg

 手元にあるデータベースでこの「盤」が出てくる箇所を確認すると、この文字の使われ方の傾向がわかるはずです。来週にでも、テキストを作成した時の基礎資料が手元のにあるので、そのデータベースを使って、学生たちに調査してもらおうと思っています。疑問点や仮説が生まれたら、すぐに調べ、暫定的であっても何らかの結論を得ておく、という訓練をしてもらうつもりです。この勉強会に集まっている1年生は、まだ研究の意義も手法もわからない状態にいます。そうであるからこそ、こうした疑問を抱いたその時が、解決するための方策を模索する格好のタイミングなのです。そうした態度を、試行錯誤の中で身に付けてくれたら、という期待を込めて調査してもらおうと思います。

 もし、すでにこのことを記した書籍や論文などをご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると幸いです。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ■講座学習
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