文庫本の帯には、「軽みのなかに深まる謎。人間心理を衝いた快作。」とあります。
あまりにも軽い話に終始するので、つい読み飛ばしてしまいました。ただし、登場人物の設定はユニークです。藤田の初期には、こうしたフッと気を抜いたものがあります。今回は藤田作品を読み直しているので、2回目となります。しかし、この内容はまったく記憶にありませんでした。エピソードすら何も覚えていなかったので、前回も軽く読み流したのでしょう。
藤田の持ち味の一つとして、軽妙と言えば聞こえはいいものの、読者としては気の張らないだらだらと読める物語があります。現実離れした、おもしろおかしい作り話で、肩の張らない作品です。それでいて、推理小説らしく筋道は辿れるようになっています。
人間の心理を何とか描き出そうとしています。その読後感は、吉本新喜劇を見終わった時によく似ています。その作り話の中に、少しだけ謎解きが盛り込まれているのです。
藤田の気ままなお遊びに付き合わされた、と言うのが読み終わっての実感です。明るさが取り柄と言えばいいのでしょうか。【1】
本書は「長編ユーモア謎解きミステリー」という分野に属し、藤田宜永が1988年に講談社ノベルスから刊行し、その後に光文社文庫に収録されたものです。
これまでに本ブログで取り上げた藤田宜永の初期作品で、本作『タイホされたし度胸なし』までのものは次のとおりです。
1986年10月「藤田宜永通読(15)『野望のラビリンス』」(2013年08月08日)
1987年4月「藤田宜永通読(16)『標的の向こう側』」(2013年08月28日)
1987年5月「藤田宜永通読(17)『瞑れ、優しき獣たち』」(2013年08月31日)
1988年1月「藤田宜永通読(21)『モダン東京2 美しき屍』」(2014年09月23日)
6月「藤田宜永通読(22)『モダン東京3 哀しき偶然』」(2015年02月09日)
8月「藤田宜永通読(23)『ダブル・スチール』」(2015年08月18日)
9月「藤田宜永通読(28)藤田宜永『呪いの鈴殺人事件』」(2016年06月14日)
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