2017年07月05日

読書雑記(201)有川浩『阪急電車』

 有川氏の作品を読むのは、これが初めてです。聞き耳を立てて話を楽しむ味があります。

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 関西の香りと軽妙さが心地よい、いい作品です。そして、登場人物の役割と演出が絶妙です。仕組まれた言葉の棘が、随所でチクリと刺して来るので、大いに楽しめました。語られる言葉の端々に、温かい視線も感じられました。
 乗客たちを乗せて走る電車には、それぞれの物語も乗せて走っている
のです。
 若い男の子と女の子の気持ちを描き分けながら、その接点と距離感が微妙に絡まる話に仕上がっています。壊れそうな人の気持ちと相手とのバランスを、包み込むように語るので、短い話ながらも人に対する優しいまなざしが伝わってきます。
 全編を通して、透明感のある文章です。そのせいか、読み終わってみて、軽さが気になりました。
 最初、作者は男性かと思って読み進めていました。すぐにあれっと思い、作者は男女どちらなのかを楽しみながら読みました。
 何も知らない作家の作品を読むときには、こんな楽しみ方もあります。決め手は、男性の心が見通せているか、というところです。
 その意味では、『源氏物語』には、女性では書けないと思われる描写があって、この視点で物語を読むのもおもしろいと思っています。蛇足ながら、『源氏物語』の作者は紫式部という一人の女性だけが書いたとは思っていません。彼女は、あくまでも最終段階の総責任者に留まるのではないでしょうか。そして、今残っている文章には、その後の男性の筆が入っているようです。
 それはともかく、有川さんの、また別の作品を読んでみたいと思うようになりました。【3】

書誌メモ︰2008年1月、幻冬舎より単行本発行
     2010年8月、幻冬舎文庫として刊行
 
 
 

posted by genjiito at 21:51| Comment(0) | ■読書雑記
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