2017年06月04日

お茶のお稽古に行く大和路の道々が小旅行になる

 近鉄特急を使って、大和平群にお茶のお稽古に行きました。新しい車輌だったので、いろいろと工夫がなされていました。
 まず、座席番号が点字でも刻印されています。しかも、指先をパネルに普通に乗せるだけで触読できるフラットタイプです。

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 一般的には、指先を垂直に立てて触読しようとするものが多いので、手首がつって痛くなります。エレベーターや駅などでは、ほとんどがそうです。目の見えない方々の手首に優しい配慮が、これまではあまりなされていませんでした。垂直タイプは、肉体的な苦痛を伴います。それを、この近鉄では、よくわかっている方が作られたようです。
 このことは、これまでにも指摘してきました。

「バリアフリーやユニバーサルデザインから学ぶこと」(2014年11月28日)

「駅のホーム等で点字表示が改善されています」(2016年01月24日)

 自分で点字を実際に触るとわかることです。親切の押し売り、という側面があったと思っています。また、目の見えない方々も、好意からのものであることがわかっているので、こうしてほしいという注文は控えておられたように見受けられます。
 点字を貼り付ける位置は、垂直な面での表示から、傾斜のある面か水平に近い面にすべきだと思います。その意味でも、この近鉄電車の点字は、適切な表示方法になっています。

 また、座席の前の面にも工夫があります。傘を固定するゴムバンドです。これは、雨の日には助かります。
 さらには、電気のコンセントも、一人に一つずつあります。

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 これまでは、コンセントがあっても一つでした。次の写真は、今日乗った帰りの特急のものです。

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 コンセントがシートに一つずつあると、携帯電話の充電切れで、いざという時に、隣の人に気を使わなくてすみます。

 お稽古のお茶室で、床に飾ってあった今日のお花の一つが「未央の柳」でした。『源氏物語』の「桐壺」巻では、白居易の「長恨歌」に出てくる言葉としてこれが引かれています。しかし、その名を冠した花を、私は見たことがありませんでした。江戸時代に中国から渡来した花のようです。
 先生のお宅の庭から塀越しに咲きかかっていたので、黄色い花を咲かせている「未央の柳」を撮しました。

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 今から36年も前に、「絵に描ける楊貴妃考 −桐壷巻における別本の位相−」という論文を『王朝文学史稿 第9号』(1981年)に発表しました。その後、『源氏物語受容論序説』(桜楓社、平成2年)にその論文を収録して刊行しました。それなのに、これまでに「未央の柳」というものがあることはもちろん、それを実際に見たことがなかったのです。見ていても、それと気づいていませんでした。『源氏物語』の解釈には関係しないものの、お話をする際の逸話にはなります。
 先の論考では、さまざまな異本や異文を調べて論文として仕上げました。『源氏物語』の本文では、次のように語られている所です。

 絵に描ける楊貴妃の容貌は、いみじき絵師といへども、筆限りありければ、いと匂ひ少なし。
 太液の芙蓉、未央の柳も、げにかよひたりし容貌を、唐めいたるよそひは麗ししうこそありけめ、懐かしうらうたげなりしをおぼし出づるに、花鳥の色にも音にも、よそふべき方ぞなき。」(伊藤・須藤編『池田本『源氏物語』校訂本文「桐壺」[第1版]』小見出し〔38〕、26頁)


 鎌倉時代の『源氏物語』の注釈書である『原中最秘抄』では、藤原行成による自筆の『源氏物語』には、「未央の柳」という一句がミセケチになっていたというのです。この「未央の柳」という語句を持つ本、持たない本、そしてその語をミセケチにしている本など、いろいろな本文が伝わって来ているのです。

 こうして、いろいろな見聞を経て、少しずつ作品の理解が深まっていくことを実感するようになりました。それが、この頃は楽しくなってきています。

 このところ、季節の変わり目ということもあってか、身体が疲れ気味です。帰りも、少し贅沢をして近鉄特急に乗りました。
 車窓からは、大阪湾に沈む夕陽が山際を燃やしているのが見えました。

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 東寺の五重塔の背景も、あざやかな朱に染まっていました。

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 ささやかながら、お稽古に行く道々が楽しい小旅行となりました。
 
 
 
posted by genjiito at 22:03| Comment(0) | ・ブラリと
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