2017年05月22日

日本盲教育史研究会の第5回ミニ研修会 in 金沢に参加して

 石川県は、点字毎日文化賞を3名も出しているところです。その風土を感じる好機と思い、金沢で開催された第5回日本盲教育史研究会のミニ研修会に参加しました。

 JR金沢駅前の鼓門は、印象的なデザインでした。

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 今回の会場であるルキーナ金沢(金沢福祉用具情報プラザ)は、駅前から徒歩で3分の至便の地です。

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 まず、開催の案内文を引きます。

第5回ミニ研修会 in 金沢 ご案内


金沢市内でのフィールドワークを中心に

―― 先人の足跡を訪ねる ――
 第5回ミニ研修会を金沢で開催します。今年は、石川県の出身で、新たな道の開拓者となった視覚障害者達の足跡を訪ねます。近代鍼灸教育の父と言うべき奥村三策は、元治元年金沢三社町に生まれました。岐阜盲学校の創始者となった森巻耳も金沢の生まれです。
 そして紹介したいのが、竹川リンと彼女に関わる人々です。リンは幼時に失明しますが母と二人の生活を支えて働きます。しかし、重篤な病に罹ると死後自らを解剖に付すことを遺言して、明治16年に43歳で亡くなりました。翌年建立された顕彰碑に往時を偲ぶことができます。
 短い時間ではありますが、ともに語りながら先人の足跡をたどることができますよう、お待ちしています。

主催 日本盲教育史研究会


 今回は、お弁当を食べながら、お2人の講演を伺いました。

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 これは、1日だけの研修会を充実させるため、食事時間を確保できない苦肉の策だとのことです。さらには、今後はフィールドワークを大切にした運営をするとのことです。今回は、それがうまく機能した研修会となっていました。運営関係者のご苦労が偲ばれます。
 参加者は60名という盛会でした。会場を設営なさった方にお聞きすると、49席の準備だったのが急遽イスを増やすことになり、嬉しいことだとおっしゃっていました。この会の会員数も、180名にもなるそうです。ますます大きくなっていきます。一人でも多くの方が会員として参加なさることを願っています。

 以下、今回伺ったお話を、自分勝手に整理しておきます。

第1部 11時00分から12時45分

ランチョンセミナー レクチャーと昼食交流

* 「竹川リンと支えた人々」
・・・講師 庄田 望 氏(元金沢部落史研究会)


 講師ご自身が執筆中の、天保11年(1841)に金沢で生まれた竹川リンを主人公にした小説の内容を語りながら、熱の籠もったお話でした。
 「浄土真宗の王国加賀で、(竹川リンが)献体する決意はどうして生まれたのか。」
 「盲目の女性リンに献体ということを教えたのは誰か」
ということがテーマです。
 結論は、ヨーロッパ啓蒙思想の流入と、金沢医学館の役割を明らかにすることでした。
 執筆中の小説は、今秋頃には自費出版なさるようです。

 お2人目の松井先生が、今回金沢での開催にあたって、現地側としてとりまとめをなさいました。
 また、お話の中心となった奥村三策のお孫さんも、遠路会場にお越しになっていました。

「道を開拓した石川県の視覚障害者達」
・・・講師 松井 繁 氏(金沢星陵大学)


 金沢生まれの近代鍼灸教育の父と言うべき、奥村三策の偉業を語ってくださいました。明治18年頃まで、差別的な扱いを受けていた鍼治教育の道を拓いた人です。
 針治療と西洋医学との葛藤があったことを知りました。また、1900年にパリ万国博覧会で「万国盲人状態改良会議」があり、そこで日本の盲学校鍼按科の状況が報告されています。これは意外な事実でした。
 戦後、GHQが鍼治療は危険で医療ではないということで、これを禁止しようとしたマッカーサー旋風のことにも触れておられました。私も少し調べてみたいと思うようになりました。
 奥村三策は、1907年に点字略字12字を公表しています。平成直前まで、この略字は教科書などに使われていたそうです。講師の松井先生は、読み書きが早くできるので、今でも点字の略字を使ってもいいと思う、とのことです。コミュニケーションツールに興味を持っている私は、いいヒントをいただきました。

 配布されたレジメには、「あえのこと」が輪島、珠洲、能登に伝承されていることに関する囲み記事がありました。これも、今回のレジメから引きます。

「あえのこと」

輪島市(白米)、珠洲市、能登町等では、「あえのこと」が伝承されている。毎年12月5日、全盲夫婦の田の神様を家に迎え入れて冬を過ごし、翌年2月9日、田にお送りする農耕儀式。1977年重要無形民俗文化財に指定、2009年ユネスコの世界無形遺産に登録。昔、偉大な盲人の活躍が示唆されるが不明である。


 午後は、今回のメインとなる外に出かけました。

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第2部 13時00分から16時30分
フィールドワーク(貸切バス)

* 竹川リン顕彰碑(金沢市上荒屋3丁目260番地)

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* 松江老医有道碑(白山市徳丸町207番地)
(松江安見は、竹川の解剖に深く関わり、顕彰碑を建立した医師。)

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* 金沢医学校(現金沢城・兼六園管理事務所分室、兼六園隋身坂口料金所手前)

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* 故奥村三策先生頌徳碑(金沢市卯辰山公園玉兎ケ丘)

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 兼六園では、個人的にありがたいものと出会えました。昨日もお茶のお稽古で難儀をした右足の疣に関するものです。
 「いぼとり石」は、今も金沢の人は、ゴシゴシと擦りに来るそうです。

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 さて、私の疣は今後どうなるでしょうか。とにかく、午前中は特にビリビリするのです。おまけに、左足首の骨折が、昨日のお茶のお稽古で少し無理をしたせいか、今日は終日熱をもっていました。庇って歩くと、どこかの筋肉が痛むようになります。両足がなかなか完治しません。困ったことです。

 金沢駅前で開催された懇親会も、多くの方が参加なさいました。
 私の周りには、ボランティアグループの「金沢視覚障害者外出支援サークル(KBOS)」のみなさまがいらっしゃいました。15名のうち今回は13名の方々が手助けに駆けつけてくださっていたのです。このご支援は心強いものでした。自宅からの交通費と食費しか出ないにもかかわらず、みなさまは目の見えない方々のために熱心にサポートをしておられました。ご苦労様でした。そして、ありがとうございました。
 ただし、活動の実態を伺う内に、ボランティア活動を地方自治体がうまく利用していることが、ここでも見ることとなりました。こうした活動を、行政側がうまく無償の勤労奉仕で掠め取っていることは、すでに社会活動におけるボランティアという面で問題が表面化しています。個人の善意と、公的機関の予算節約がうまくすり替えられています。実際に手助けとして参加なさっている方々の気持ちが純粋なだけに、これは、1日も早くボランティア団体の運営者側にも意識の変革が求められている、と思っています。無償の献身的な活動は、ボランティアではありません。営利ではない程度の、最低限の報酬は支払わなければ、これは続きません。このことを、私はインドで学びました。そして、私が代表理事をしているNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の運営でも、一番気をつけていることでもあります。もっとも、なかなか難しい問題であることは承知しています。

 懇親会の終盤で、戦時中に視覚障害者はどのような分野で、どのような形で参加していたのか、させられていたのか、ということが話題になりました。マッサージに駆り出されたことはわかるにしても、見えないからこそ夜間にも働かされたり、火花が飛び散る旋盤工の仕事などなど、まだ掘り起こすことは多いようです。いつもこの懇親会は、いろいろと考えさせられることの多い貴重な話題が交わされます。

 今の風潮として、事務手続きとしての出張において、懇親会は単なる飲み会だと位置付けています。しかし、そうではなく、こうして胸襟を開いて語り合い、実質的に障害者が直面する問題をぶつけ合い、話し合うことで問題点を日常レベルに立ち返って炙り出す会もあるのです。事務的な書類処理においては、懇親会は無為な徒食の懇談の場であるとされがちです。しかし、こうして濃厚な時間を共有することで貴重な場となっていることが多いはずです。このことは、さまざまな研究会などの懇親会で見られることではないでしょうか。放談の場だけではない、ということで、こうした懇親会の位置づけが、有意義な情報交換の場として認められるようになってほしいと思います。

 なお、配布資料の中には、CD-ROMがありました。その内容は、次の貴重なものです。自宅に帰ってから、じっくりと拝聴しようと思います。

CD・「音資料」
1NHKラジオ第2放送『盲人の時間』「人と行跡 奥村三策」1980年8月3日放送
2.「杉山検校を讃える歌」作詩奥村三策、作曲鈴木米次郎、1909年、歌林薫夫
3.「不滅の足跡を残した石川の視覚障害者達・関係者達の声」2014年11月製作
4.「石川県立盲学校創立100周年記念、音で辿る盲学校の歩み」(抜粋、編集)
5.「石川県音紀行」石川県製作

 
 
 

posted by genjiito at 09:30| Comment(0) | ■視覚障害
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