2016年03月07日

藤田宜永通読(27)『探偵・竹花 帰り来ぬ青春』

 『探偵・竹花 帰り来ぬ青春』(双葉社、2015.1.25)を読み出してから、これはもう読んだ作品ではないかと思いました。冒頭部における別荘地の雪道でタイヤが空回りする話です。しかし、しだいに初めての話であることがわかり、別の作品で読んだものを思い起こしたようだと気づきました。
 藤田宜永の作品では、よくあることです。


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 開巻早々、懐メロのスタンダードとしてシャーリー・バッシーの『帰り来ぬ青春』が出てきます。これには、「若かりし頃の、無謀な生活を述懐する内容の歌である。」(22頁)と説明されます。
 この曲名が、本作の題名ともなっているので、あまりのネタバレに拍子抜けしました。そうでないことを祈りつつ、読み進みました。

 手記や日記に関して、おもしろいことが書かれています。


 書かれたものが真実を伝えているとは言えない。そんなことを或る哲学者がどこかに書いていた。それは遺書の場合にも当てはまる。手記や日記に、事実は書けても、真実は認められないものだ。野球選手が難しい球をホームランできた時、「自然にバットが出た」と言うことが多い。後でそのビデオを見た時にはどうしてホームランになったか説明できるだろうが。手記や日記は、後になって見たビデオを見た時の説明に似ている。そういう意味で書かれたものは嘘なのだ。遺書も手記の一種である。(67頁)


 首吊り自殺と拳銃の暴発という事故死が、話を複雑にしていきます。さらに、そこに化石が絡んできます。わからないことだらけの展開に、読者は引きずり回されることになります。

 話が八丁堀や明石町を、舞台にするようになると、私の生活圏であることもあって俄然のめり込みます。

 最後まで犯人の見当がつかないのがいいと思います。
 探偵竹花に、楽しい時間を付き合わされました。

 相変わらず、女性が描けていません。しかし、男たちの友情はしっかりと伝わってきました。

 話の構成と展開がおもしろかったので、また藤田宜永の作品を読もう、と思わせます。【4】

※初出誌︰『小説推理』2013年6月号〜2014年6月号
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | □藤田通読
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