続いて、点字によって変体仮名を翻字できるようにできないか、ということを、本ブログ「点字による変体仮名版の翻字は可能か(4/from 渡邊)」(2016年01月28日)を紹介しながら考えました。
さらに、挑戦的萌芽研究のオンラインジャーナル(創刊号)に掲載予定である、淺川槙子さんの「明治33年式棒引きかなづかいの今」を読みながら、問題点の所在を確認しました。こうした問題は、ずっと引きずったままで今に至っているのです。
ひらがなを表記してきた歴史は、これからを見据えて再確認しておく時期にあると思っています。
この日は、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」の24オモテ6行目から25ウラ最終行までの文字を確認しました。これまでで一番多く進んだことになります。
ここは、比較的問題の少ない箇所で、今の感覚のままで多くのひらがなが読めます。これまで以上に進んだのは、こうしたこともあります。
その中でも、注目したことを一例だけとりあげましょう。
まず、写真をご覧ください。
これは、24オモテの7行目と8行目の行頭部分です。
ここでは、7行目の上から2文字めから「万いり給へといへ八」と書写されています。
その右横の8行目の行頭には、「まいり給へといへ八」とあります。
語頭の「万」と「ま」が違うだけで、あとは書写されている文字の姿形はほとんど同じです。安定した書き振りである、といえます。
普通は、同じ字母が隣同士に並ぶことを避ける傾向があります。そこで、字母を変えたりします。しかし、ここでは、語頭だけ字母が異なるものの、それ以下はまったく同じなのです。
おそらく、書写に当たって見ていた親本もそうだったと思われます。この写本の書写者が、親本通りに書写していることがわかる例でもあります。個人の書写癖や個性の表出がない写本となっているのです。淡々と書写していたようです。
8文字も同じ文字が左右に並ぶことはめったにないので、ここで紹介しておきます。
なお、この箇所での本文異同について確認しておきます。
後者の「まいり給へといへは」が書写されていないのは、議会図書館本『源氏物語』と保坂本だけです。ただし、共に「侍従の君よひ出てまいり給へといへは」と17文字がないので、これはちょうど1行分が同じ文字列に目移りして脱落したものだと言えます。諸本に異文はありません。
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