「国文研ニューズ」や「国際日本文学研究集会 チラシ」をはじめとして、国文学研究資料館の広報・宣伝やイベントの資料を、今日もいろいろとお渡ししました。
また今日は、印刷製本を終えて納品されたばかりの『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤鉄也・阿部江美子・淺川槙子 編著、新典社、2015年10月)を何冊か受け取るため、日比谷図書文化館へ行く途中に水道橋駅経由で新典社へ立ち寄りました。
参会のみなさまには、出来立てほやほやの、今にも湯気があがりそうな本を回覧し、見ていただきました。現在読み進めているハーバード本「蜻蛉」とは兄弟本になる本なので、興味深く見ておられました。
今日は、日常生活の中で、手書きの文字をどれくらい読み、書いているのか、ということから話を始めました。
私は、毎日たくさんの文字を読み書きしています。しかし、手書きとなると、ほんの少しです。
今日は、事務に提出した書類に自分の名前を手書きでサインしただけです。
文字というと、コンピュータに入力したり iPhone に入力して、コミュニケーションに役立てています。手書きは、まったくと言っていいほど、日常生活から遠ざかりました。
そんな時代に、縦書きのための日本語の文字の筆順を学校で教えたりする手間や時間は、もっと有効活用に使えるのではないでしょうか。そもそも、書き取りとは、今どのような意味を持たせて学校で指導をしているのでしょうか。文字を覚えるための反復練習のために、手で文字を書くのであれば、その筆順の必要性は自ずとかわってくるはずです。
明治33年にひらがなが一つだけに統制され、今に至っていることの意味も、そのような流れの中でお話ししました。
「あ」を手書きした時の最後の筆先は、学校で教わった筆順で書くと左下に向かっています。しかし、横書き主流の現代社会において、左下に向かう線の勢いを右上に引き上げるのですから、理に合わない書き方をしているのです。かつてはやった、丸文字(変体少女文字)は、こうした理由も発生原因にあるとされています。
現代の日本においては、早くきれいに文字を書くことからはおよそ縁遠い手書き文字を書かされています。それが横書きであればなおさらです。
そうした目で日常生活の中の日本語を、それも文字を、さらにはひらがなを見つめると楽しいですよ、という内容です。
また、漢語についても触れました。
日常生活で使う漢語を和語に、というよりも大和ことばに置き換えて表現したら、どのような言語生活になるのかも、明日から実践してみることの楽しさをお話しました。
漢語も英語と同じように外来語と考えられるので、日本文化から生まれた和語で表現し直す遊びから、あらためて日本の文化が見直されるのではないか、という趣旨での話題です。
配布した資料を使っての説明では、今読み進めている「蜻蛉」巻の「蜻蛉」とは何か、ということもお話しました。トンボではないのです。一応、「蜉蝣」ということで留めておきました。
ハーバード本「蜻蛉」の影印本の翻字については、第18丁オモテを確認しました。
その中で、次の箇所では質問をいただきました。
それは、私が「ん」の右横に書かれた「む」は、「なん」という表記以外に「なむ」という表記があったことを傍記している、と言ったことからの疑問だったようです。
異本注記の形で残されている、と説明したことに対する別見解でした。
いつも写本の翻字などでデータベース構築の支援をしていただいているOさんから、この「む」は「ん」との関連ではなくて、次の「かしより」に関係するものであり、補入の意味で書かれ文字「む」ではないか、ということでした。ただし、補入記号はないが、ということです。
私の手元に詳しい資料がなかったので、詳細な説明ができませんでした。確かにその可能性が高いのでOさんのご意見を認め、詳しくは次回に調べた結果を報告することにしました。
今、この箇所の諸本を調べたところ、次のような書写状況になっていることがわかりました。
まさに、「む」は補入とすべきです。また、私の手元にあるデータベースでも、ここは「±む」となっており、補入記号のない「む」としてデータは作られていました。
私の確認不足でした。
侍るをなん[ハ]・・・・521684
侍をなん[大平国]
はへるをなん[尾正]
侍るをなむ[御]
給をなん[L]
侍なむ[陽]
侍てなん[保千]
侍をなむ[高]
侍るを[池]
侍を[麦阿]
かしより/±む[ハ]・・・・521685
むかし[大池尾平阿御正L国千]
昔[麦高]
んかし[陽]
むかし/か〈改頁〉[保]
諸本の様子をよく見ると、「侍るをなん(む)」の「なん(む)」がない写本があったり、陽明文庫本では「んかし」という本文を伝えているのです。
「むかし」の直前の「なん」の「ん」と、それに続く「むかし」の「む」の本文伝承上の混同が背景にあって、この1文字を写し忘れたという事情もあったかもしれません。
いずれにしても、写本をあるがままに見ていた私には、その背景が正確には摑みきれていませんでした。今後は、文意と諸本の異同にも、さらに注意をして見ていきたいと思います。
Oさんの慧眼に感服しました。
ありがとうございました。
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