2015年10月08日

共立女子大学での触読調査と実験と新展開

 皇居の東側にある共立女子大学へ、竹橋駅から歩いて行きました。
 再来週、触読研究に協力してもらっている全盲の学生さんと一緒に、京都へ行きます。京都開催の「源氏写本の触読研究」の研究会と、翌日の日本盲教育史研究会に参加することに関して、その打ち合わせをしました。
 お互いに非常に楽しみにしている、調査と研究の旅なのです。

 1泊2日の詳細な打ち合わせをした後、今夏の続きとして、『源氏物語』の古写本を触読してもらいました。
 今日は、ハーバード大学本「須磨」巻の冒頭部分である「よの中〜」と、初見(初触?)となる国文学研究資料館蔵本である榊原本「夕顔」巻の巻頭部分の「六条渡りの〜」について、いろいろな話をしながら読んでもらいました。この前とは、文字の大きさも微妙に変えたものを持って行きました。


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 『源氏物語』の本文をいろいろな大きさで立体コピーして持参したので、その感触を尋ねました。
 前回は7月だったので、あれから3ヶ月ほど経っています。
 二十歳という若さだけではなくて、本人も努力家なので、格段の進歩を感じることができました。

 この前は、江戸時代の版本を中心とした勉強をしていて、そのような中で突然鎌倉時代の『源氏物語』の文字を触ってもらったので、本人もいろいろと戸惑いながらの触読だったようです。

 今日は、江戸時代と鎌倉時代の文字の違いが、より一層理解できたようでした。鎌倉時代の文字にも少しずつ慣れてきていることを、私が横でその触読の様子を見ているだけでも実感できました。
 とにかく若いので、その伸び代の大きさを頼もしく思いました。

 そのような中で、文字の大きさはそんなに問題にはならないことがわかりました。
 「文字を覚えてしまえば、小さい文字の方がストレスもなく触って読める。」という本人からのことばは、新たな収穫となりました。

 また、あまり文字が大きいと、なぞる範囲も広く、そして触読する時間も長くなるので、一行を読むうちにそれまでの言葉を忘れてしまう、ということです。さらには、飽きるし、どっと疲れるとも。

 なるほど、と得心しまた。

 つまり、可能であれば、適度にコンパクトな文字を触れるのがいいのです。その適度、というのが難しいので、これは今後の触読実験を繰り返す中で確定したいと思います。しかし、おおよそ文字の大きさはわかりました。文字が大きければいい、ということではないのです。正確に読めること以上に、〈流れるように読める〉、という要素も大切なことなのです。

 列帖装の写本半丁に書写された10行(約16cm ほど)が、A4版にゆったりと浮き出し文字で触読できるような、そんな立体コピーを作成すればいいのです。

 さらに、これは必備のものとして、使い勝手のよい立体コピーによる字書があれば、それを確認しながら自学自習できる、ということもわかりました。

 学生本人は、A3版大の大きな立体文字をまとめた手作り字書を使っています。学校で作っていただいたものでした。しかし、これは大きくて重たくて頁数が多いので、何かと不自由をしているようです。
 小さくてもいいので、編集さえしっかりとしていれば、折々に変体仮名が調べられて重宝する、とのことです。

 このことばを聞いて、早速神保町にある出版社に連絡をし、指導教授の了解を得てから、学生さんと一緒にこの字書の話をしに目指す会社へと出かけました。
 共立女子大学から出版社まで、一緒に歩いて10分もかからないので、この近さもこの話の進展に寄与することとなりました。善は急げを即実践したことになります。

 変体仮名をもとにした、立体文字による新しい字書作りというプロジェクトが、本日スタートすることとなりました。
 これについては、また折々にここにその進捗状況を記します。

 さらに、『百人一首』の変体仮名バージョンに取り組むことも、今日の話の中で理解を得ました。
 これは、昨日、国文学研究資料館に鎌倉時代に書写された『源氏物語』を閲覧しにいらっしゃった書道家のみなさまのお世話をしている中で、その延長上で協力が得られることとなったので、弾みがついた新プロジェクトです。

 ハーバード大学本「須磨」巻の中で使われている文字だけを使って、『百人一首』の恋の歌20首の下の句を、カルタに書いていただくことになったのです。
 平安時代の上代様の文字で書いてくださるとのことです。そのためには、現行のひらがなだけで書いたカルタは初心者用に、変体仮名を交えたものは中級者用に、さらに上級者用としてはレベルの高い変体仮名と散らし書きを交えたものにしていただく予定です。
 下の句七七の内、最初の七文字は少し大きめに書いていただくことも決めました。
 現在使われている点字百人一首には、和歌が点字で貼られています。しかし、今回の変体仮名版の立体文字のカルタには、点字は貼らずに、あくまでも各自が触読して札の配置を決めてカルタ取りをしてもらうのです。

 どこかの早い時点で、1首でもいいので全盲の方に作品を触っていただき、その感想を次のカルタの文字に反映させていくと、よりよい書写作品ができるのではないか、と思っています。
 そこに書かれた文字の形や線の流れが、このカルタの生命となります。

 とにかく目の見えない方々が触られるので、その方々と意見交換をしながら取り組んでいくしかないのです。書家のみなさまの個人の書写作品ではなくて、みんなで作り上げるという趣旨をご理解いただく中で、この変体仮名版の触読カルタを作っていきたいと思っています。

 この変体仮名版『百人一首』ができ次第に、また大方のご意見をいただきながら改良していくこととなります。

 もう一点。
 指に嵌めて使う「ゆび筆」が届きましたので、共立女子大学に持参し、学生さんに実際に指に嵌めてもらいました。感触は上々です。


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 これは、左手で古写本『源氏物語』の立体文字を触読しながら、右手に嵌めた「ゆび筆」で臨書しよう、というものです。
 そして、臨書が終わると、それをさらに立体コピーすることで、自分が書いた文字の正確さが確認できます。書写しながら、写本の変体仮名も確認でき、あらためて字形を意識して仮名文字を覚えることになります。
 自学自習用として、これは楽しく文字を学ぶプログラムに成長させたいと思っています。

 さまざまな成果が期待できるプロジェクトが、今日だけでもいくつか新たに展開し出しました。
 こうしたことに、興味と関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、本ブログの今後の記事にご意見をお寄せいただけると幸いです。
posted by genjiito at 21:22| Comment(0) | ◎源氏物語
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