折角の機会なので、あらかじめ講座を運営なさっている部署の了解を得た上で、渡辺先生にも参加していただく段取りを整えていました。受講者のみなさまと一緒に、全盲の方を交えて変体仮名の翻字学習を進めました。
そんなこともあり、この日は見開き1丁分を頑張って読みました。1字でも多く渡辺先生に確認していただき、触読の感想を聞きたかったからです。
まず、ナゾリが認められる2カ所についての確認からです。もっとも、目が見えない渡辺先生には、こうしたナゾリの部分の判読には参加してもらえません。ここは晴眼者が役割を担う部分です。
この2カ所については、下に書かれている文字の判断を保留したい旨を伝えました。写真版を見れば見るほど、次第に自分の認定に疑念が生じたからです。
「伊」(14丁裏1行目)の下に「以」があるようです。しかし、どうも下の文字は「以」ではないようにも思われます。
同じことは、「幾」(14丁裏3行目)の下に「久」が認められます。しかし、じっと見ていると、下の「久」の認定に疑念が残ります。書きさしたようにも見えます。
これは、原本を再度実見しないと確定できないと思い、そのことを正直にお話しました。
これまでに、ハーバード大学にある原本は3回確認しています。しかし、ここを丹念に見たのかどうか、今思い出せません。
次世代への引き継ぎ事項にしておきましょう。
また、この写本では、「奈」の字体が一定しません。非常に不安定な「奈」なのです。
これは、この「蜻蛉」の書写者が「奈」の平仮名を苦手としていたのか、またはこの字で書写の雰囲気を変えようとしていたのか、その理由が今は思い当たりません。ご教示をお願いしたいところです。
「寸」については、8行目の字体が極端に異なります。これは、行末だったために平たくなったものではありません。
これも、この書写者の筆癖の一つとして挙げておきます。
15丁表の4行目の「し」にミセケチのような2本線が見えます。テキストは白黒なので、これが紙の繊維なのか汚れなのかゴミなのか、判別がつきません。
この日はカラー画像を持っていなかったので、次回に結果をお知らせすることにして、先に進みました。
ここは、次のようになっています。
紙面のシミが、くっきりと確認できます。
やはり、カラー画像は、こうした時の確認に必要です。
次回は、8月20日(木)に15丁裏から読み始めます。
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