2015年06月27日

第4回池田亀鑑賞授賞式と講演会

 第4回池田亀鑑賞授賞式と講演会が始まる頃には、午前中の雨は爽やかに晴れ上がっていました。


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 池田亀鑑賞の授賞式の司会進行は、今年も図書館の浅田幸栄さんです。
 まず文学碑を守る会の加藤和輝会長の挨拶で始まりました。


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 加藤会長から、受賞者である滝川さんに賞状と賞金が渡されます。


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 続いて私が、本日ご欠席の伊井春樹会長の代わりとしての挨拶と、選考委員長として選考過程と選定理由などの説明をしました。


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 授賞式の内容がわかりやすいように、私が用意していた原稿を引用します。
 もっとも、手持ち原稿を読みながらの研究発表や講演はしないように、という伊井先生からの指導を徹底して受けているので、この原稿通りにお話はしていません。ほぼこのような内容でした、ということでご理解ください。


挨 拶   伊藤鉄也

 滝川幸司さん。このたびは第4回池田亀鑑賞の受賞、おめでとうございます。

 池田亀鑑賞の選考委員会の伊井春樹会長が、本日は宇和島伊達400年祭 記念文化講演会に出席のためにご欠席です。伊井先生は宇和島のご出身です。

 そこで、選考委員長を務める私が代わりましてご挨拶申し上げます。
 併せて、池田亀鑑賞の選考についても報告いたします。

(1)池田亀鑑賞 設立の意義

 文学研究の基礎を支える資料を整理し、成形し、提供する営為には、多大な時間と労力と根気が必要です。

 そして、こうした作業や仕事にこそ、弛まぬ努力と継続に対する理解と応援が必要です。

 池田亀鑑賞は、日頃の地道な調査研究活動に光を当て、さらなる励みと新たな目標設定を支援するところに意義があると思っています。

 達成したものばかりではなく、進行しつつあるものも含めて、研究環境の整備に貢献した仕事を顕彰したいと思っているところです。

 この「池田亀鑑賞」は、今から5年前、平成22年(2010年)3月13日に日南町で開催された講演会「もっと知りたい 池田亀鑑と『源氏物語』」が原点です。

 そのイベントが契機となり、日南町と「池田亀鑑文学碑を守る会」が平成23年(2011年)5月2日に「池田亀鑑賞」の設立を実現しました。

 「池田亀鑑賞」は、文学の研究基盤を形成する上で、顕著な功績のあった研究に対して贈るものです。その地道な努力を顕彰し、さらなる成果の進展を期待する意味を込めています。

 来年は、池田亀鑑の生誕120年、没後60年の記念すべき年となります。

 中古古典文学研究などの奨励となり、源氏物語千年のかがやきのような光彩を放つ賞として、今後ともみなさまのお力添えを得まして、末永く継承したいと考えています。

(2)選考対象と選考方法

 「池田亀鑑賞」は、前年度に発表された平安文学に関する学術図書、研究論文、資料整理及び資料紹介に対し、学界に寄与したと評価されるものを選定しています。

 応募作の評価については、選考委員全員があらかじめすべてに目を通し、毎回4つのチェック項目について5段階評価をし、それに各委員が講評(200字)を付けた評価表を提出していただいています。

 その4つの評価項目は、次の通りです。

 @地道な努力の成果
 A研究の基礎を構築
 B研究の発展に寄与
 C成果が顕著な功績

 そして、その資料を参考にしながら、自由討議によって選考を進めていきます。

(3)選考経過と理由

 @3月末日〆切り
 A選考委員会は、本年5月2日(土)午後2時より、伊井春樹先生の逸翁美術館・池田文庫で開催

【選評】
滝川幸司『菅原道真論』(塙書房)

 今回の受賞作『菅原道真論』は、700ページにも及ぶ、平安前期の漢学者・漢詩人の研究です。
 今回の応募作の中では、群を抜く大著でした。
 本書は、『源氏物語』を中心とした平安文学を視野に置く池田亀鑑賞にはやや違和感があるかもしれません。しかし、昨年度の『狭衣物語』の研究がそうであったように、「地道で基礎的な研究」という点では申し分のないものです。
 歴史史料を精緻に読解し考証することから、多くの成果を導き出しているのです。しかも、道真だけでなく、その周辺の人物の伝記をも詳細に考証しています。
 特に、第二篇「道真の交流」は、文学や歴史学に多大な恩恵をもたらす成果となっています。
 全編にわたり力作の論稿が多く、それでいて全体が統一されています。
 努力の成果が、基礎研究と顕著な功績として一書をなしているのです。
 本書は文学研究にとどまらず、歴史学などの他領域にも影響を及ぼす可能性が高いものです。
 著者の今後の展開にも期待したいと思います。
 なお、取り組む研究テーマを異にする者にとって、初見の人名と書名が頻出する論稿を理解する上で、巻末索引(「人名」「研究者名」「官職・官司」「書名・篇名・詩題」)は配慮が行き届いており、理解を助けるものとなったことを申し添えておきます。

 以上、池田亀鑑賞の趣旨に最も合致する著作として、滝川さんの『菅原道真論』を、第4回池田亀鑑賞の受賞作といたしました。

 文学研究の基本となる文献を大切にする研究者として、今後とも注目したいと思います。

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 本日は4時から、第三部として池田亀鑑が生涯の仕事とした『源氏物語』の古写本を読む、ということの体験をみなさまと一緒にしたいと思います。
 この古写本を読むことについては、今後とも継続して、この日南町で行います。これは、私と原豊二先生が担当し、年に複数回実施したいと計画しています。
 今回はその第3回目です。
 今から700年以上も前の鎌倉時代に書き写された『源氏物語』を、一緒に読んでみましょう。そして、日本の文化の奥深さを、ご自分の目と手で実感していただければ幸いです。
 多数のご参加をお待ちしています。

(4)広報活動

 池田亀鑑賞に関する幅広い広報・普及活動の検討と対策を考えています。
 その一環として、今秋広島で開催される中古文学会のフリースペースに、池田亀鑑賞関係の展示とパンフレットの配付を検討しています。



 長々と引用しました。おおよそ、以上のような内容の挨拶をしましたので、記録に留めておきます。

 次に、選考委員の紹介です。


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 池田研二先生は、会場後ろに池田亀鑑の自筆原稿を展示したことに関して、見る際のポイントと簡単な説明をなさいました。


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 妹尾好信先生は、来月19日に米子の今井書店「本の学校」で開催される「文藝学校」講演会の紹介をなさいました。


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 原豊二先生は、私が言及した文学部がなくなって行くことに関連した中国地区の現状と、本日の研究発表者である杉尾瞭子さんの紹介でした。


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 続いて、来賓挨拶として、日南町の増原聡町長から祝辞をいただきました。


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 そして、町議会の村上正広議長。


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 日南町の丸山悟教育長からの祝辞もありました。


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 第1部は、受賞者である滝川幸司さんの記念講演会です。


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 菅原道真の2つの漢詩を例にして、これまでとは異なる解釈により、従来よくわからないままに来た問題を、誰にでもわかりやすく読み解いてくださいました。
 漢字が並ぶ漢詩漢文は、苦手な方が多いと思います。しかし、今日のお話では、「未知」と「断腸」の解釈をみごとに解き明かし、漢詩を読む楽しさを教えていただきました。

 配布された講演資料を見た時には、こんなに難しい内容では参会者のみなさんは頭を悩ませられるのではないか、という主催者側の心配は、まったくの杞憂に終わりました。難しそうな内容をわかりやすく語るという、みごとな講演でした。

 第2部は、ノートルダム清心女子大学の博士前期課程二年生の杉尾瞭子さんの研究発表です。
 タイトルは「池田芙蓉(亀鑑)『馬賊の唄』について」でした。


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 作品を丹念に読み解いての発表でした。
 土井晩翠の「万里長城の歌」の引用の研究は、実証的で説得力のあるものでした。
 続く懐かしの歌となっている「馬賊の歌」は、大正後期に宮崎滔天が作ったものだそうです。それが、断片的に池田亀鑑の小説に引用されているのです。乃木希典の漢詩もそうです。

 出典に関しては、いずれもが剽窃だとわかります。もっとも、権利意識の薄い当時にあっては、その時代の考え方でものを見て行く必要もあります。
 時代背景に関して、アジア主義や侵略思想への言及がありました。少年の大陸飛雄の夢を描いたものだというまとめは、今後の課題として、さらなる研究の発展が期待できます。
 こうして若手が臆することなく、各種資料を吟味しながら多視点による調査結果を研究発表することは、今後が頼もしく思えます。

 第3部は、私が担当するもので、「鎌倉時代の『源氏物語』古写本を読み、池田亀鑑を追体験する」という実習講座です。


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 今回は、国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」の巻頭を、みなさんと一緒に、字母に注意しながら読みました。30分という短い時間でした。しかし、みなさん懸命に変体仮名に見入ってくださいました。
 また、古写本『源氏物語』の触読研究というプロジェクトについてもお話し、視覚障害の方々と一緒に『源氏物語』を手や耳を使って読む取り組みについても報告しました。

 最後は、石見まちづくり協議会の吉澤晴美会長より閉会の辞をいただきました。


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 今回の参加者は60名と、いつものように多くの方々が参会してくださいました。

 日南町は、小さな過疎の村だといわれています。しかし、向学心や知的好奇心に溢れる町民のみなさまの熱意は、企画や運営の立場から見ると驚嘆というのが実感です。さすがは、池田亀鑑の生誕の地であり、井上靖の文学館があり、松本清張の文学碑がある町です。

 国として文学の評価が消極的な現在のご時世において、こうした文学研究という専門性の高い内容にも、日南町の多くの方が興味と関心をもって理解をしていこうとなさる風土は、地方創生のエネルギーを秘めているように思えます。高い評価と共に、全国から注目される町となるのも、そう遠くはないことでしょう。

 来年は、池田亀鑑の生誕120年、没後60年、そして池田亀鑑賞の第5回目となります。
 記念になるイベントにしようと、みなさんで楽しく語らいながら、名残惜しい中での閉会となりました。


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 終了後は、恒例となっている池田亀鑑文学碑のある石見東小学校の校庭横へ行き、関係者で記念撮影をしました。


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 ちょうど2日前に、この文学碑の横に非常に珍しい亀の子石が置かれたところでした。


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 この碑の周りは、今後ともますますいい環境に整備されていくことでしょう。
 また来年、この地に来られる日が、今から楽しみです。

 なお、これまた恒例の懇親会が、今回も宿舎となっている「ふるさと日南邑」で行われました。
 会場に帰り着いた頃には、また雨が紫陽花に降り注いでいました。山陰の気候の特徴のようです。


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 この懇親会は、ただ単にお酒を飲む場ではなくて、夢が語られ、思い出が語られ、町民の方々が元気になる話題に満ちています。

 今日も、今では手に入らない池田亀鑑の随筆を集めた『花を折る』の復刊について、計画を実質的に詰めることができました。
 すでに関係者には事前に相談をしておいたこともあり、その概要と役割分担が即決です。

 ・新典社から刊行
 ・本文は現代仮名遣いに改訂
 ・地名、人名、行事、気候、風土などの脚注/浅田幸栄
 ・上記以外の脚注とコラム/原豊二
 ・コラム数本/未定
 ・池田亀鑑の写真選定と説明/池田研二・伊藤鉄也
 ・寄稿/池田研二
 ・寄稿/久代安敏
 ・解題/伊藤鉄也
 ・事項索引/NPO法人〈源氏物語電子資料館〉

 以上は、今日の確認事項です。
 『花を折る』に収録されていない池田亀鑑の随想等は、これから編集に着手することになります。
 今後とも些少の変更があるとしても、来年の6月25日(土)に予定している、第5回池田亀鑑賞の授賞式には間に合うように刊行することになります。
 さまざまな確認事項や不明な点の解明が、いまから大仕事として降りかかることが想定されます。
 しかし、みなさまのご理解とご協力を得て、良い本に仕上げたいと思います。
 関係者のみなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | □池田亀鑑
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