2015年06月12日

読書雑記(133)指田忠司著『世界の盲偉人 その知られざる生涯と業績』

 『世界の盲偉人 その知られざる生涯と業績』(2012年11月、指田忠司、社会福祉法人桜雲会点字出版部)を読みました。


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 実は、この本は昨夏、日本点字図書館で購入したものです。次の記事の最後で紹介したままでした。

「江戸漫歩(82)高田馬場の「日本点字図書館」へ」(2014年06月20日)

 この本を読み終わろうとしていたところで、先月末に北海道で指田先生と偶然にも昼食をご一緒したのです。縁というものは不思議なものです。
 最後まで読み終わりましたので、あらためてここに紹介いたします。

 本書は、点字ジャーナルに連載された「知られざる盲偉人」に加筆修正したものです。世界中を見渡しての視点で記述されています。非常に幅広い視野から、目が見えない中で偉業を成し遂げられた方々のことが紹介されています。わかりやすい文章なので、読みやすい一書となっています。

 第一部は、学問、文学、音楽、政治などで活躍した視覚障害者30名を取り上げています。、
 第二部は、教育、福祉、文化の向上に尽くした44名が紹介されているので、合計74名が取り上げられたのです。

 ここに紹介されているのは、書名の副題にもあるように「知られざる生涯と業績」に関する人々であり事跡です。知られている、ヘレン・ケラー、アン・サリバン、塙保己一、本居春庭(本居宣長長男)、ルイ・ブライユ(点字発明者)等は出てきません。これが、本書の特色でもあります。

 そのため、人名索引を兼ねて、煩を厭わずに、以下にその目次を挙げることで後日の手掛かりとしておきます。
 なお、本書の『目次」では、ここの人名はゴチック体になっています。しかし、今は手間もかかるし時間もないので、スラッシュ(/)で代用しています。


 ― 目 次 ― 

まえがき(指田忠司)

本書の活用について(依田隆男)

第1部さまざまな仕事で活躍した先人たち
 
 第1章 学問研究の分野で活躍した視覚障害者
  1 英国の数学者/N.ソーンダーソン
  2 失明を乗り越えた天才数学者/L.オイラー
  3 現代数学の開拓者/L.S.ポントリャーギン
  4 点字数学記号の考案者/A.ネメス
  5 米国初の視覚障害原子物理学者/サミュエル・B.バーソン
  6 ドイツの裁判官/H.E.シュルツェ
  7 法学研究と途上国の国家建設に尽力する/H.ショラー
  8 障害者の人権保障に尽くした/J.A.ウォール
  9 米国初の全盲医師/J.ポロティン
  10 歴史学研究と視覚障害者の権利実現のために活動する/F.リード

 第2章 文学の世界で活躍/J.ミルトン
  12 賛美歌の作詞者/ファニー・クロスビー
  13 名作のモデルとなった/M.Aインガルス
  14 オーストラリアの全盲女性作家/M.A.アストン
  15 アジアで才能を開花させた文学者/エロシェンコ
  16 反ユートピア論を展開した/A.L.ハクスレー

 第3章 音楽の世界で活躍した視覚障害者
  17 18世紀英国のオルガン奏者/J・スタンリー
  18 米国の俗謡保存に貢献した/E.デュッセンベリー
  19 天才ピアニスト/ブラインド・ブーン
  20 スペインの代表的作曲家/J.ロドリーゴ
  21 盲目の哲学的音楽家/ムーンドッグ
  22 バッハ演奏の大家/H.ヴァルヒャ
  23 20世紀米国を代表する歌手/レイ・チャールズ
  24 シンガーソングライター/T.ケリー

 第4章 政治分野で活躍した視覚障害者
  25 ロンドン警察の基礎を築いた/J.フィールディング
  26 米国初の全盲連邦議会議員/トマス・D.シャール
  27 米連邦上院議員を務めた/T.P.ゴア
  28 元テネシー州議会議員/J.ブラッドショー
  29 ニューヨーク州知事に就任した/D.パターソン
  30 タイ王国上院議員に選ばれた/M.ブンタン

第2部 視覚障害者の教育・福祉・文化の向上に尽くした先人たち
 
 第1章 視覚障害教育を築いた人々─盲学校の設立と点字・歩行技能の開発訓練
  31 近代盲教育の祖、バランタン・アユイと同時代の盲人たち
  32 パーキンス盲学校初代校長/S.G.ハウ
  33 ハウ博士を支えながら、文学的才能を開花させた/J.W.ハウ
  34 オーバーブルック盲学校の創立者/J.R.フリードランダー
  35 ニューヨーク・ポイントの開発者/W.B.ウエイト
  36 ムーン・タイプの考案者/ウイリアム・ムーン
  37 ドイツ盲教育の先駆者/カール・シュトレール
  38 通信制盲学校を創始した/W.A.ハドレー
  39 白杖歩行の訓練方法を開発した/R.E.フーバー
  40 戦後統合教育の基礎を築いた/G.L.エイベル
  41 アメリ力点字協会の創立者/J.R.アトキンソン
  42 点字触読の普及に貢献した/S.マンゴールド

 第2章 視覚障害者のための福祉団体、当事者団体を築いた人々
  43 RNIBの創立者/トマス・R.アーミテージ.
  44 CNlBの創設と発展の功労者/E.A.ベイカー
  45 AFBの基礎を築いた/R.B.アーウィン
  46 NFB初代会長/J.テンブロック
  47 NFB発展の功労者/K.ジェーニガン
  48 ACB機関誌初代編集長/マリー一・ボアリング
  49 インド障害者運動の父/L.アドヴァニ
  50 オンセの改革に尽力した/A.ヴィンセンテ

 第3章 視覚障害者の文化の向上に尽くした人々
  51 1世紀以上無償で発行しつづけた点字月刊雑誌の創始者/マティルダ・ジーグラー
  52 点字月刊雑誌初代編集長/ウォルター・ホームズ
  53 ナショナル・ブレイル・プレス社を創立した/F.イエラディ
  54 米国の図書館サービスの法制化に尽くした/ルース・S.B.プラット
  55 ラジオとカセットで情報提供を続けた/S.ドーラン
  56 盲導犬普及の父/R.H.ウィトストック
  57 盲界のエジソン/ティム・クランマー
  58 クロスカントリー・スキーの普及に尽力した/R.F.キース

 第4章 視覚障害者の職業自立と人権保障に尽くした人々
  59 視覚障害者雇用に貢献した/J.ランドルフ
  60 視覚障害者の教育と雇用の発展に尽くした/R.レズニック
  61 民間職業リハビリテーション施設を作った/R.クンペ
  62 視覚障害者の職業自立に尽くした/D.K.マクダニエル
  63 フロリダのマザー・テレサ/T.ブレッシング
  64 米国初の盲人外交官/A.ラビー

 第5章 開発途上国の視覚障害者支援に尽くした人々
  65 失明予防に尽くした/ジョン・ウイルソン
  66 視覚障害女性の地位向上に尽くした/S.マクブール
  67 国際協力と視覚障害者の権利保障に尽くした/H.W.スナイダー
  68 WBU元事務局長/ペドロ・スリータ

 第6章 盲ろう者の教育とリハビリテーションの発展に尽くした人々
  69 近代教育を受けた初めての盲ろうあ者/ローラ・D.ブリッジマン
  70 ろう社会で育った盲ろう教育の第1号/J.プレイス
  71 オーストラリアのヘレン・ケラー/アリス・ベタリッジ
  72 盲ろう者のリハビリ訓練を切り拓いた/P.サーモン
  73 盲ろう者の自立に貢献した/R.J.スミスダス
  74 盲ろうのシスオペで活躍する/G.グリフィス
 
あとがき(指田忠司)

参考資料・写真について


 ここには、アメリカ、イギリス、インド、カナダ、スペイン、タイ、ドイツ等々、世界中の人々が、しかも17世紀から今日までと、実にさまざまな事例が取り上げられています。

 この中で私がチェックした箇所を、備忘録として抜き出しておきます。


・ガリレオは、教皇朝による審問の結果、1633年からフィレンツエ郊外に幽閉されていたが、1638年の恩赦でフィレンツェの自宅に戻っていた。ガリレオは幽閉中に失明し、ほぼ全盲の状態だったという。(53頁)
 
・ミルトンの脳裏には、古代ギリシアの盲目詩人、ホメロス(注)とその作品が浮かんでいたとも言われている。(55頁、脚注「ホメロスの存在した証拠はいまでに確認されていない。」)
 
・1970年代半ば、19世紀後半の米中西部を舞台に、貧しい開拓農民一家を描いた物語「大草原の小さな家」(Little house on the Prairie)というテレビドラマが、全米で大ヒットした(注1)。
 このドラマには盲学校で教師を務める「メアリー」が登場するが、これは原作の作者ローラ・インガルス・ワイルダー(1867〜1957)の実の姉、メアリーA.インガルスをモデルにしたものであった(61頁)
(注1)わが国でも、1975年から1982年まで、NHK総合テレビで日本語吹き替え版が毎週放送され、その後も数回にわたって再放送が行われた。
 
・RNIB 本部は、ロンドンの交通の要衝キングズクロス駅に近いジャド・ストリートに移転したが、トマスの胸像はこの新しい事務所の玄関に移設され、以前と同じくRNIB を訪れる人々を見守っている。(167頁)
 
・1947年、ラルはインド政府文部省に入り、手始めに視覚障害者の教育環境の整備に尽力する。1951年にはスニティ・カマル・チャタリー博士と協力してヒンドゥ語の点字表記の基準を作成し、点字雑誌の発行を始める。
(中略)
 ラルの生涯をみると・視覚障害者としてさまざまな分野で「インド第1号」の栄誉を担ってきたが、ラルのすばらしさは、単に第1号となっただけでなく、その先駆者としての役割を自覚して他の視覚障害者、他の障害者のために働き続けたことにある。ラルには論文や著作も多く、彼の歩んだ人生を概観するだけで、インドにおける障害者運動の歴史が浮き彫りになるのである。その意味で、今後もインド、パキスタン、西アジア地域の障害者運動の発展を後づける上で、ラル・アドヴァニ研究が欠かせないものとなるであろう。(185〜186頁)


 なお、立体文字に関する記述が、以下の3箇所にありました。
 現在取り組んでいることに関連することなので、引いておきます。


・1784年、バランタン・アユイ(Valentin Hauy)は、パリに王立盲青年協会(後の国立パリ盲学校)を設立し、そこで盲人たちに浮き出し文字を使って読み書きを教え始めた。(127頁)
 
・ウイリアムは、こうした状況をみながら研究を重ね、ついに1844年、26歳の頃、独自の読み書き指導の文字の開発に成功する。この文字は、墨字のアルファベットの形を元にして、指で判読し易いよう浮き出させた14種類の記号を用いるもので、英語で使われる26文字のアルファベットは、この記号の一部を回転させて表す方式で、ウイリアム自身が名付けたかどうかはわからないが、「ムーン・コード」(Moon Code)と呼ばれた。筆者は、1987年にロンドンのRNlB(当時の英国盲人援護協会)を訪れた際、この方式を使って印刷された図書を手にしたことがあるが、その時の説明では、「ムーン・タイプ」(Moon Type)と呼ばれていた。
(中略)
 ここで二つの文字を簡単に比較してみると、ムーン・タイプは墨字の形を基本に置いていることから、中途失明者にも読みやすいという利点がある反面、その作成が自力では困難という点で問題がある。これに対してブライユの6点点字は、触読できるまでに時間がかかるが、自分で簡単に書けるという点で、極めて大きな利便性がある。したがって、ブライユ式点字が普及した後でも、ムーン・タイプの読みやすさに引かれて、中途失明者を始めとして、ムーン・タイプで書かれた図書へのニーズは長く続いたのである。(145〜146頁)
 
・米国で視覚障害者用図書の貸し出しサービスが行われるようになったのは、1880年代からで、1832年にマサチューセッツ州ボストンに開かれたパーキンス盲学校の初代校長ハウ博士は、ヨーロッパから持ち帰った浮き出し文字を使った図書を使って教育を行うとともに、その後ボストン・ラインという米国式の浮き出し文字印刷を開発して視覚障害者用図書の製作に努めていた。(201頁)


 本書の編者である指田先生は、積極的に海外にでかけ、精力的に情報を収集しておられます。また、多くの方々とのコミュニケーションを大事にしておられます。

 先日、札幌でのお話をさらに展開できる件で、ありがたいメールをいただきました。
 指田先生との話が進展したら、またここに報告いたします。
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ■読書雑記
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