2015年05月26日

立川市中央図書館で点字プリンタを使う

 今日は、出勤途中に立川市中央図書館へ立ち寄り、調査資料係でハンディキャップサービスを担当なさっている福島さんに、今私が抱えている問題の相談をしました。それは、点字プリンタに関連することです。

 今週末に、札幌で「日本盲教育史研究会 第3回ミニ研修会 in 北海道」が開催されます。それに参加するにあたって、事務局長の岸先生を通して「挑戦的萌芽研究」の宣伝チラシを現地で配布することの問い合わせをしていました。幸いにも運営委員のみなさまから歓迎との返信をいただき、ご理解いただけたことを喜んでいます。

 その回答の中に、点字版を作成するなら、という文言がありました。点字版に思いが及ばず、迂闊だったことを反省し、早速検討を始めました。今回は間に合わなくても、新たな取り組みが提示されたので、出来る時に出来ることを、という心構えで、この機会に試行錯誤を試みることにしました。

 そこで思いついたのが、立川市中央図書館にあった点字プリンタです。以前、説明を受けた時には、私の勉強不足もあり、その役割をよく理解できていませんでした。それが、このチラシの点字版という具体的な問題と直面し、自覚的にその道具の活用に思い至ったのです。

 一通り、点字プリンタの役割と、印刷するための文書を編集する「EXTRA」というウインドウズ版の自動点訳ソフトの実際を見せていただきました。現実の問題を抱えながら説明を聞くと、実によく話の内容がわかります。

 とにかく、ひらがなだけで文章を作り、それをパソコンで点字に変換して印刷するのです。
 ということは、チラシの文言をすべてひらがな書きにする必要があります。また、その表記は分かち書きによるもので、それなりのスタイルに整形しておくことも大事なことでした。

 頭の中を新しい知識でいっぱいにして、職場に向かいました。

 先日紹介した、立川駅前の原っぱで草を食むヤギさんたちは、今日の暑さにもめげずに除草作業という任務を遂行中です。


150526_yagi




 午後は、科研運用補助員として来ている関口さんの奮闘を得て、配布予定だったチラシの文言のすべてを、ひらがなの分かち書き表記文に作り替えることができました。

 それを持って、立川市中央図書館へ向かいました。
 職員の出退勤管理が厳密な職場なので、関口さんの勤務様態が国文研内ではなくて立川市中央図書館に変更となることと、その勤務に関しては私が全責任をとる旨を記した理由書を作成し、それを事務にはあらかじめ提出してありました。モノレールで1駅の所へ行って仕事をするのにも、こうした事務的な文書が発生するのです。

 立川市中央図書館では、ハンディキャップサービス担当の早坂さんと、以前この部署にいらっしゃった小林さんも助っ人としてお出でくださり、いろいろと手助けをしてくださいました。本当にありがたいことです。

 自動点訳ソフトの「EXTRA」で作業中の画面は、こんな感じでした。


150526_screenshot




 実際にはもう1段上にエリアがありますが、それは省略しています。
 ひらがな文が点字に置き換えられていくのは、実に気持ちのいいものです。と言っても、まだ私は自由に点字が読めるわけではありませんが……

 これを点字プリンタで印刷すると、こんな感じで打ち出されます。


150526_tenjiprinter




150526_tenji




 初めて自分が関わった点字文書なので、大きな感動がありました。
 ただし、予想に反して、点字プリンタから排出されたものは、3頁にわたっていました。1頁で打ち出される分量だと思っていたので、これをよい教訓にして認識を改めます。簡潔で要を得た文にすることが要諦だと知りました。

 実は、この図書館に来る直前に、国立民族学博物館の広瀬浩二郎さんにメールを出していました。それは、立川市中央図書館が使っている自動点訳ソフト「エクストラ」で読み込める、フリーの点訳ソフトでおすすめのものを尋ねるものでした。

 広瀬さんは、全盲にもかかわらずメールの返信が非常に速いので、目の見える私はいつも自戒しています。
 今日も、中央図書館で作業をしているときに、返信が届きました。

 広瀬さんからの返信には、別件の回答と共に、自動点訳ソフトについての詳細なアドバイスと、点訳資料を作成する上での貴重な意見が記されていました。こうしたことを教えてもらえるのは、本当に嬉しいことです。広瀬さんの人柄と共に、感謝感謝の思いで目を凝らして読みました。

 私が一人占めにしてはもったいない情報が書かれていたので、そのアドバイスをまとめて記しておきます。

 その前に一言。これも反省事項です。

 6月14日(日)の午後、地下鉄九段下駅すぐそばの千代田区立千代田図書館で、今回新規採択された「挑戦的萌芽研究」の第1回研究会を開催します。その案内状を協力者のみなさまに送りました。その中で、集合場所として「1階ロビー」としたことに関して、広瀬さんのメールには以下のようにありました。


 僕たち視覚障害者は初めて行く場所が苦手です。
 最寄駅から会場まで、晴眼の方に同行していただけると、いちばん安心です。
 九段下の駅までは独力で行けるので、改札口などで待ち合わせをしてもらえると、ありがたいです。
 ご検討ください。


 いやはや、お恥ずかしい限りです。配慮が足りませんでした。
 早速、駅の改札口で、という対処をします。

 目や耳が不自由な方々と一緒に『源氏物語』の古写本を読もう、というプロジェクトを立ち上げることによって、私はこれまで持っていなかった目をもう1つ得ることができました。それは、目の見えない人や耳が聞こえない人の感覚で、日常生活のそこここに目や耳が向くようになったことです。これまでは、そうした視点を持っていなかったので、自分が見知っていたことの狭さを、あまりにも狭小であったことを実感する日々です。

 私は、2個の見える目を持っています。これまでも、この目でいろいろなものを見てきました。見てきたと思っています。しかし、今は別の視点でものを見る目を持った自分が、自分の中にもう1人いるのです。視点が2つになった意義の大きさを痛感する日々です。長生きはするものです。いろいろなことに挑戦すべきです。思いもよらない生き方があるものですから。

閑話休題

 広瀬さんから自動点訳ソフトについて教えていただいたことを、取り急ぎ列記します。


(1)自動点訳ソフトを使うと、点字の知識がなくても点訳資料が作れる。
(2)自動点訳ソフトの変換効率は、英語の場合はほぼ100パーセント完璧な点字文ができる。日本語は読み間違いや点字の分かち書きのミスが出るため、完成度は80〜90パーセント。
(3)最終的には点字を知っている人が校正しなければ、正しい点字文にはならない。


 そして、さらに重要な指摘をいただきました。それは。


(4)「8割、9割の完成度でも、なんとか意味が通じるなら、自動点訳ソフトは有効である」という考えが一つ。
(5)「自動点訳ソフトの普及により、いいかげんな点字が流布するのは好ましくない」という考えもある。
(6)役所などから送られてきた点字が「いいかげんな点訳=自動点訳されたそのままのデータ」だと、あまりいい気はしない。
(7)外国でちょっとおかしな日本語表記に出合うのと同じ感じ。
(8)この科研プロジェクトの関連資料を(僕や高村先生のために)点訳してくださるのだとしたら、とりあえずは自動点訳したままの「ちょっと怪しい」点字文でもいいと思います。僕と高村先生なら、事情もわかるし、不十分な点訳でも、ないよりは、あった方がいいです。
(9)ワークショップなどで、不特定多数の視覚障害者に点字資料を配布する場合は、やはりきちんと校正した点字文にすべきです。いいかげんな点字資料を配布していたら、本プロジェクトの信頼にも悪影響を与えるでしょう。
(10)点字の校正をするためには、それなりの知識と経験が必要です。
(11)「EXTRA」があれば、他のソフトがなくても墨字データの自動点訳ができる。


 ここにあげた1つ1つが、私にとっては貴重なアドバイスです。ありがとうございます。
 そして、拙速は控えて、札幌には点字資料は持って行かないことにしました。

 さらにもう1点補足します。

 図書館の福島さんがチラシの文字を見て、ゴチックの方が弱視者などは助かるはずです、というアドバイスをくださいました。そうでした。広瀬さんからも聞いていました。本にも書いてありました。うっかりしていました。

 ことほどさように、私の注意力はまだまだ目の見えない方々には届かないレベルです。しかし、少しずつものが見え出したので、前に進んではいるようです。

 とにかく、新しい刺激を全身に浴びながらの日々に身を置いていることを実感しています。
 いろろいな方々にご迷惑をおかけしているかと思います。しかし、こうして秒針分歩の中にいることをご理解いただき、遠慮なく変わらぬご教示のほどを、どうかよろしくお願いいたします。
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ■視覚障害
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]