2015年01月25日

作成中の翻字データベースを〈源氏物語翻字文庫〉と総称する

 これまで、約30年にわたって作成していた〈源氏物語本文データベース〉を、〈源氏物語別本集成〉(略称は「GBS」)という総称で管理していました。これを、本年より「変体仮名混合版」に移行することにしたのを契機に、〈源氏物語翻字文庫〉(略称は「GHB」)という呼び方に改称したいと思います。

 今年に入ってから、『源氏物語別本集成 続』で提示していた凡例の見直しをした結果を、以下の記事にまとめました。

(1)「『源氏物語』を「変体仮名混合版」にする方針で一大決心」(2015年01月15日)

(2)「昨日の「変体仮名混合版」の具体例と確認」(2015年01月16日)

(3)「「変体仮名混合版」を後押しする手厳しくもありがたい批判」(2015年01月17日)

(4)「『源氏物語』の翻字本文に関する凡例の改訂(その1)」(2015年01月18日)

(5)「『源氏物語』の翻字本文に関する凡例の改訂(その2)」(2015年01月19日)

(6)「『源氏物語』の翻字本文に関する凡例の改訂(その3)」(2015年01月21日)

 今回は、その最後として、凡例の冒頭部分の文言の見直しを提示します。赤字の部分が、今回補訂した箇所です。
 これで、「変体仮名混合版」へ移行するにあたって、作業と利用に関して基本的な方針を確定したことになります。

 今後は、この凡例を補訂しながら、これまでのデータベースを〈源氏物語翻字文庫〉における「変体仮名混合版」として再生することに着手したいと思います。


〈源氏物語翻字文庫〉凡例 (2015.01.25)

(1) 本データベースは、『源氏物語』の本文が諸本間でどのような異同を持つものであるかを、容易に一覧できるようにした「変体仮名混合版」である。平成一四年に完結した『源氏物語別本集成 全一五巻』と、『源氏物語別本集成 続 全一五巻』(内、平成一七年に第七巻まで刊行済)を引き継ぐ形で、諸本の本文が変体仮名においては字母レベルで確認できるようになっている。

(2) 本書の底本に使用した写本は、別本とされている〈陽明文庫本〉である。〈いわゆる青表紙本〉や〈河内本〉とは異なる本文を伝える書写伝本を、現在のところ一応は〈別本〉と呼んでいる。その中でも、陽明文庫蔵の別本(三十九帖)は高い評価がなされており、現存する諸本を対校するにあたっての底本にふさわしいものである。ただし、陽明文庫本には本文の性質を異にする一五帖の写本が含まれている(「紅葉賀」「花宴」「明石」「絵合」「松風」「初音」「藤袴」「若菜上・下」「柏木」「横笛」「匂宮」「紅梅」「竹河」「夢浮橋」)。これらは、〈いわゆる青表紙本〉と呼ばれている本文群である。『源氏物語別本集成』では、陽明文庫本において別本とは言えない巻々には、他の別本を充てることで対処した。たとえば、『源氏物語別本集成 第二巻』で「紅葉賀」と「花宴」の底本に、天理図書館蔵〈麦生本〉を使用したのがそれである。しかし、『源氏物語別本集成 続』では、陽明文庫本のすべての巻を底本として採用した。

(3) 『源氏物語別本集成 続』における本文掲示のレイアウトは、『源氏物語別本集成』と大きく異なっている。『源氏物語別本集成 続』では、底本である陽明文庫本毎半葉に対する本文の諸相を、見開きで確認できるようにした。
 まず、見開き右頁上段右側の二段分の囲み中に、底本陽明文庫本の翻刻本文を掲げる。文節単位の区切りを中黒点(・)で明示したものである。その左側には、同じく二段分の囲みの中に、底本陽明文庫本の校訂本文を掲げた。
 陽明文庫本の校訂本文の提示は、『源氏物語別本集成 続』が初めての試みであった。これは、本文異同を確認するにあたって、あくまでも物語本文の流れを読み取る際の手助けとなるような試案として作成したものである。
 校訂本文の随所に、物語の内容を知る手がかりとなるように、小見出しを付した。校訂本文作成にあたっては、『CD─ROM古典大観 源氏物語』(伊井春樹編、角川書店、平成一一年)に収録されている、大島本の校訂方針を参照した。小見出しは、デジタルテキストのために作成された伊井版の改訂版である。

(4) 校異欄は、見開き右頁三段目から左頁にかけて、上掲の陽明文庫本の翻刻本文に対する諸本の異同のすべてを示した。『源氏物語別本集成』では、底本と同じ本文は、異同を示す校合本以外の本を引き算することによって判明する仕様となっていた。『源氏物語別本集成 続』では、その掲出方法を変更し、底本と同じ本文を有する写本の名称を、底本本文の直下に示し、諸本の異同の様態をより把握しやすくした。

(5) 校異欄において、底本本文に続く「・・・・・・」の後に付した一〇桁の算用数字(010001-000)は、『源氏物語』における当該文節の位置を知るために、目安として当てた通し番号である。『源氏物語別本集成』の時は、六桁の数字であったものを、『源氏物語別本集成 続』から一〇桁に拡張した。
 例えば、「010001-000」における最初の六桁は、『源氏物語別本集成』と同じ意味を持っている。つまり、底本本文を文節毎に区切った時に使用した通し番号(六桁の数字)は、本続編でもそのまま継承している。そして、ハイフォン(-)に続く三桁の数字が、『源氏物語別本集成』における文節認定の変更と、今後予想される異本異文の総合管理のために新たに付加したものである。この一〇桁の番号は、『源氏物語』におけるすべての異本異文までをも文節番号で取り扱える研究環境を提供することを視野に入れて、『源氏物語別本集成 続』から導入したものである。
 これにより、国冬本「鈴虫」における五〇〇文字以上の異文をも、文節番号によって取り扱うことができるようになる。『源氏物語』におけることばの位相が、その文節番号という位置づけによって把握でき、また語句が存在する場所の特定のみならず、諸本との異同を相対化できるようになる。なお、この番号の最初の二桁の数字は、『源氏物語』の巻順を示している。「桐壺」を「01」とし、以下順次連続する番号を当てて、「夢浮橋」が「54」となる。
 長編の巻で文節番号が五桁になる巻に関しては、文節番号の最初の二桁を記号〈A・B・C〉を用いて、次のように表記した。
  「若菜上」一〇二三四番目の文節番号 → 34A234-000
   同   一一二三四番目の文節番号 → 34B234-000

(6) 『源氏物語別本集成』では、書写本に書き込まれたもののうち、振りがな・振り漢字・主語・引歌・説明的注釈などは取りあげず、本文異同に関するものだけを、補足事項として注記していた。ただし、特殊な読みをする語句に読みがなが付されているものなどは、適宜取り上げる場合があった。これを、『源氏物語別本集成 続』では、そのすべてを取り上げて校合した。ただし、天理河内本などにある、鉛筆書きの書き込みなどは一切とらない。

(7) 『源氏物語別本集成 続』より、改丁(頁)箇所を明示することとなった。写本での確認を容易にするためと、書写状態を知るための手がかりの一つを提供するためである。改丁(頁)箇所には、改丁された頁の最初の文字を指して「/あ〈改頁〉」と表記する。丁数は明記しない。

(8) 本書に収載した各諸写本の本文は、とくに断らない限りは、原本に直接あたるか影印刊行物およびマイクロフイルムや紙焼写真によって、複数の担当者が翻刻確認した後に対校したものである。担当者は、「作業担当者一覧」に明記した。

(9) 本書の内容は、情報文具を利用した研究にも対応できるように、データーベースを目指して作成されている。語句検索や各本文の位相が分析研究しやすいように、利用法を考慮して元データは構成してある。本書作成にあたっては、以下の「A」〜「E」の方針をたてて資料の整理・編集をおこなった。

(10) 新たに「変体仮名混合版」を作成するにあたって、漢字表記及び字母表記に関しては次の翻字方針で対処した。
  「見る」などで「見」が意味を有する場合は、「見る/見〈漢字〉」とする。
  「形見/〈漢字〉」「身つから/身〈漢字〉」「見くるし/見〈漢字〉」「世けん/世〈漢字〉」などの場合も、「/〈漢字〉」という付加情報としての識別記号を用いて、漢字であることを明示する。

posted by genjiito at 00:52| Comment(0) | ◎源氏物語
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