39年前の昭和50年の誕生日に、この場所にあった「全特会館」で結婚式をあげました。
「全特」とは、「全国特定郵便局長」の略称です。
新宿伊勢丹のブライダルコーナーで、私の誕生日に式が挙げられる所を相談したところ、ここを勧められました。
私がまだ大学院に入ったばかりの、修士課程1年生の時です。
お仲人は、学部生時代の指導教授であった小林茂美先生ご夫妻でした。
主賓が、大学院での指導教授だった内野吾郎先生。
内野先生は近世国学の研究者で、ドイツ帰りの先生からドイツ文献学のお話を聞いて、文献学に興味を持ちました。
それまでが、折口信夫の民俗学的研究の末流にいて、唱導文芸の勉強をしていました。
民俗学から文献学へと、結婚を境に一念発起の転身でした。
以来、今に至るまでの40年間、文献を扱う仕事をしています。
私があちこち歩き回るのは、民俗採訪の調査旅行をしていた頃の影響でしょうか。
今日も、学生時代から一緒に調査旅行に出かけていた妻と、この会館に足を運びました。
周りはすっかり変わっていました。この都心で40年も経つのですから当然です。
会館の前から見えたはずの東京タワーは、今や高層ビル群に囲まれています。少し移動するとやっと見えました。
坂を下ると、すでに住む人のいなくなった家々が、肩を寄せ合うように建っていました。周囲とはまったく違う、昭和30年代から時間の流れが止まったかのような姿を見せる一角です。
後から聞くと、すでに区画整理の対処となっているところだそうです。
その場所からも、東京タワーが望めました。
さらに進んで東京タワーの裏側に出ると、正面とはまた違うアングルで見上げることができました。
隣接する芝公園の紅葉も色付き出したところでした。
芝公園から東京タワーを見上げると、お馴染みのシルエットも季節感を纏った姿になります。
公園の中では、モデルさんを囲んでの撮影会が催されていました。
女性を舐めるようにしてレンズを向けるカメラマンの姿態は、あまり見たくない人間の姿なので好きではありません。せっかくの紅葉見物が色褪せそうになったので、早々に公園を出ました。
モダンな六本木という都心の一角で、想い出の地と共に、古いものが消え去る直前の光景を見たことになります。スライド写真から一部分が消え、そこに新しくビルやマンションが屹立する映像が、数年後には映し出されることになります。
いい時に、この変わりゆく風景を目にしました。
先日行った大森の山王一帯がそうであったように、かつて自分が体感した場所は、記憶を鮮やかに押し留めておくためにも、今の内に再訪すべきかもしれません。
それを意識して、また時間を見つけて散策に出かけることにします。
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