2014年11月13日

日比谷図書文化館でハーバード本を読む(3)

 今日は、立川で午前中の会議に出た後、業務や科研の打ち合わせをしてから、日比谷図書文化館へ向かいました。ハーバード大学本『源氏物語』を読む講座が、夜間にある日だからです。

 国文学研究資料館から立川駅まで、健康維持のために歩いて3,500歩、20分。
 JR中央線で中野駅経由で東京メトロ東西線の大手町駅まで出ました。
 そして、そこで長い乗り換えの通路を歩いている途中で、考え事をしていたこともあってか迷ってしまいました。長々と歩いて地下鉄丸の内線の乗り換え改札に辿り着き、やっと霞ヶ関駅に着いたのは、予定よりも大幅に遅くなっていました。

 住み慣れたはずの東京も、地下鉄の乗り換えではよく失敗をします。大手町や飯田橋などは、地下通路を延々と歩かされるからです。
 日比谷図書文化館に着いたのは、約束の時間の数分前でした。

 今日は本ブログの過去のプリントをもとにして、これまで勉強して来たことの確認から始めました。
 日々の記録として続けているこのブログも、さまざまな局面で活用しています。

 前回、ハーバード大学本の1丁表までの確認を終えているので、今日は1丁裏から2丁表までの2頁分の本文を、変体仮名の特徴と字母を確認しながら、翻字をする上で注意点をお話しました。
 もっとも、丁寧に読み進んでいったこともあり、2丁目には入れませんでしたが。

 ナゾリの部分や墨継ぎ箇所と共に、行末の筆の動きにも注意を払いながら読んでいきました。

 1丁裏の最終行(10行目)の行頭にある「たてまつりけん」とあるところでは、「け」の右横に小さく「て」という傍記があることと、諸本の本文に異同があることにも及びました。

 15本の写本の本文が見比べられるように整理したプリントでは、次のようになっているのです。


たてまつりけん/け〈判読〉=て[ハ]・・・・520087
 たてまつりてむ[大尾]
 たてまつりてん[池平御L陽保千]
 奉りてん[麦阿正]
 たてまつりてと思ふを[高]
 たてまつりてとおもふを[国]


 ハーバード大学本は「けん」です。しかしそれ以外の諸本は、「てむ(ん)」とか「てと思ふを」となっているのです。現在一般に読まれている大島本は「たてまつりてむ」です。

 そうした諸本の異文の状況を考慮して、ハーバード大学本の「け」は慎重に〈判読〉としてあります。写本を見て翻字をするといっても、こうして諸本の本文の異同状況も視野に入れて読み取っていることをお話しました。
 この講座が、「翻字者の養成」をうたっているので、こうした翻字上の技の一部をお伝えするように心がけています。

 また、「思ふを」という文字列がある本などは、書写者が書き写しながら本文を書き加えていったものではないことも確認しました。この行の字の詰まり方や、この写本の書写者の態度などから、書写しながら本文に手を入れ、しかも書き加えることなど、書写する自分の首を絞めることに等しいことであることも、いつものように強調しました。

 書写の原則は、親本通りに書き写すことなのです。本文に手を入れるとしたら、今日確認した1丁裏の最終行末にある「有」などが、親本では「あり」とあった所を、スペースの関係で漢字の「有」にしてその行に収めたと思われるくらいである、ということは考えてもいいかと思います。

 今日は、本文異同についてはこの一例だけだったので、次回はそれ以外の確認をする予定です。

 また、今日は、翻字の校正とデータ作成の実習をするために、「蜻蛉」の巻頭一葉の実習用プリントを配布しました。赤ペンを使っての、へたな字で書き込みをしているものなので、恥ずかしい資料です。あくまでも実情をお伝えするために、あえて掲載するものです。


141113_kouseirei




 ただし今日は、ハーバード大学本の1丁裏の10行分の本文確認で時間をとったので、ナゾリと傍記のことを少し説明しただけに留まりました。

 次回は、翻字作業で使用している「翻字凡例」(本日配布済み)の資料をもとにして、実際にみなさんに翻字作業を体験していただくことにします。

 少し内容が込み入ってきて、参加なさっているみなさんに戸惑いがないか気掛かりです。
 次回、そうした点は、極力補足しながら進めていきたいと思っています。
posted by genjiito at 23:16| Comment(0) | ◎NPO活動
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