2014年11月11日

井上靖卒読(189)「石濤」「炎」「ゴー・オン・ボーイ」

 井上靖は、短編作品を270編以上発表しました。
 ここで紹介する3編は最晩年のものです。
 
■「石濤」
 中国・清初期の画家である石濤が描いた軸を預けられたまま、日数が経ちます。ウィスキーのグラスを口にしながら毎夜見ているうちに、しだいに魅かれていきます。死んだと思っている軸の持ち主と、想像の世界で話を交わします。井上靖が好きな、死者との対話です。これが剽軽でおもしろいのです。石濤の「湖畔秋景」の画面を見ながら老人と語ることを、井上は「私が勝手に頭の中に作り上げている対話劇」だと言います。
 問わず語りのような話の間に、アレルギーの話があります。これも、おもしろいネタになっています。
 エッセイ風のエピソードが印象的な小品です。【3】
 
 
初出紙:新潮
初出号数:1980年3月号
 
新潮文庫:石濤
井上靖全集7:短篇7・戯曲・童話
 
 
 
■「炎」
 3年前の「川の畔り」を受けて、好きな川について自由気儘に語ります。まず、新疆ウイグル自治区のタリム川から。天山山脈と崑崙山脈に挟まれた、いわゆる西域地帯です。ここを流れるタリム川は、地上を流れるというよりも伏流する川です。その不思議さや、川の合流点の話が興味深く描かれています。西域は歴史も人の生涯も、伏流しているのです。話はやがてパキスタンを旅した時のインダス川とカブール川にの合流地点の話に移ります。そしていつしか、ジェラル・ウディンという無名戦士の話となります。ウディンはチンギスカンに追われ、デリー方面に退きます。私の好きな話です。さて、第3話は、アフガニスタンのクンドゥズ川とアム・ダリアの話になります。前作の「川の畔り」を角度を変えて語ります。Q・R 氏と火災については、他の作品でも取り上げられたもので、作者にとって忘れられない人として出てきます。本作のタイトルは、この話から付いたものです。【3】
 
 
初出紙:小説新潮
初出号数:1979年3月号
 
新潮文庫:石濤
井上靖全集7:短篇7・戯曲・童話
 
 
 
■「ゴー・オン・ボーイ」
 パキスタンの北部カラコルムへの旅の話です。まず、ギルギッドの街の様子が詳しく語られます。点を一つずつ押さえるようにして。続いて、フンザとナガールへ。一人の少年のことが、印象的に語られていきます。【2】
 
 
初出紙:文學会
初出号数:1979年11月号
 
新潮文庫:石濤
井上靖全集7:短篇7・戯曲・童話
 
 
 
〔参照書誌データ〕
「井上靖作品館」
posted by genjiito at 22:57| Comment(0) | □井上卒読
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