2014年09月23日

藤田宜永通読(21)『モダン東京2 美しき屍』

 『モダン東京2 美しき屍』(2001年12月、小学館文庫)は、探偵・的矢健太郎シリーズの第2集です。


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 書誌に関して、本書巻末の「本書のプロフィール」には、「この作品は一九八九年七月、集英社文庫書き下ろしとして刊行された後、朝日新聞社より一九九六年七月、単行本として刊行されたものです。」とあります。
 しかし、ウィキペディアには、「1988年1月 集英社文庫 / 1996年8月 朝日新聞社 / 【改題】『美しき屍』2001年12月 小学館文庫」とあります。
 刊行年月が異なる点については、後日再確認します。

 的矢健太郎シリーズの第1集は『蒼ざめた街』(1996年7月 朝日新聞社 / 2000年11月 小学館文庫)とされています。ただし、これは『美しき屍』よりも古い時代を描いているために第1集となるだけです。実質的には本作『モダン東京2 美しき屍』が的矢健太郎に関する第1作となります。

 アメリカ帰りの的矢健太郎は、秘密探偵としてシトロエンに乗って昭和初期の東京の街を走り回ります。軽快に幕開けです。

 ただし、昭和初期の雰囲気はいまいちです。話が高輪、白金台あたりから展開していくのはオシャレです。それでいて、銀座や新宿の昭和初期の様子が、取って付けたように粗削りです。テンポのよさにごまかされているのでいいのですが……。

 23の小節に小分けされて全体が構成されています。次々と話が展開するスピード感は、こうした小刻みに幕が上げ下ろしされる仕掛けによるものです。

 殺された倉光の部屋は整然と片づけられていたとして、その本棚には、「小説の類はわずかに改造文庫で出された夏目漱石の本が二、三冊混じっているだけだった。」(73頁)とあります。
 試しに「CiNii」で検索したところ、改造文庫から刊行された夏目漱石の小説は、昭和4年に「坊つちやん」「草枕」「それから」の3冊があることがわかりました。この作品の背景には、昭和4年があるようです。

 また、この時代に日本映画がトーキーではなかったことも書かれています(84頁)。これについても調べてみたところ、昭和6年の『マダムと女房』(松竹キネマ製作、五所平之助監督、田中絹代主演)が、日本最初の本格的なトーキー作品だそうです。これで、本作の時代設定が類推できます。
 現在、私は昭和一桁の世相や風俗に興味を持っています。その意味で、昭和初期の東京に関するイメージトレーニングにはなりました。

 後半になるにしたがって、話が凝縮されておもしろくなります。テンポもさらによくなります。しかし、謎解きが中途半端です。

 昭和5、6年という興味深い時代設定と背景に、社会と風俗が活写されています。それだけに、私の想像力を刺激する意味から、可能であればもっと詳しく語ってほしかったところです。それでも、藤田宜永の良さが、至る所に見られる作品となっています。【3】
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | □藤田通読
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