2014年07月03日

藤田宜永通読(20)『孤独の絆』

 藤田宜永の『探偵・竹花 孤独の絆』(2013.2.10、文藝春秋)を読みました。「探偵・竹花」シリーズの4作目です。
 数年前の作品を集めたものです。私はこの時期の作品が好きです。


140604_kodoku




 これまでの3作は以下の通りです。

(1)「探偵・竹花 ボディ・ピアスの少女」(1992年、双葉社)
(2)「探偵・竹花 失踪調査」(1998年、光文社文庫)
(3)「探偵・竹花 再会の街」(2012年、角川春樹事務所)


 ある時から恋愛物に宗旨替えした藤田宜永に、私は大いに失望していました。しかし、最近は少しずつではあるものの、かつてのテンポのいい作品を発表するようになりました。藤田宜永らしさは、このスリリングで軽快な展開にあると思っています。この軌道修正を歓迎しています。
 読者が作者の作風に拘るのも、現役として活躍する作家だからこそ要求出来ることなのです。

■「サンライズ・サンセット」
 藤田宜永の探偵物は、テンポのよさが特徴です。今回も快調です。人間関係の説明は、相変わらずうまくありません。本話は、一幕ものの芝居として、よくまとまっていると思います。欲を言えば、スパイスをもっと、という勝手な思いを抱きました。【3】
 
(初出誌『オール讀物』2010年2月号)
 
 
■「等身大の恋」
 探偵が、些細なしぐさに目がいっているところがおもしろいと思いました。昔の音楽や車の話は、作者が得意とするネタです。この車のことが活かされています。話はテンポよく、会話も生き生きとしています。ただし、人間関係の設定が雑です。もったいないことです。人間をじっくりと見据えて語ることは、どうやら苦手のようです。【2】
 
(初出誌『オール讀物』2010年8月号)
 
 
■「晩節壮快」
 認知症の老人を扱った話です。美術ギャラリーでの詐欺や、競馬の大当たり等は、稚拙な設定に留まっています。しかし、人間の温かさが描けています。その意味では、雑ながらもまとまった作品に仕上がっています。【3】
 
(初出誌『オール讀物』2011年2月号)
 
 
■「命の電話」
 孤独に生きることがテーマとなっています。理屈っぽい展開です。藤田にしては、めずらしい構成です。キルケゴールのポジティブな発想を、もっとわかりやすく、明るく語ってほしいと思いました。
 話の構成に無理があるように思えます。しかし、人間が炙り出される手法を身に着けた藤田は、新しい小説の世界を見つけたようです。今後の活躍が楽しみになってきました。【4】
 
(初出誌『オール讀物』2012年2月号)
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | □藤田通読
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]