2014年04月30日

第3回池田亀鑑賞は若手の『狭衣物語 受容の研究』に決定

 一昨日の本ブログで経過を報告したように、第3回池田亀鑑賞の授賞者が決定しました。
 本日の「池田亀鑑賞公式サイト」で、その受賞作品が発表されましたので、ここに報告いたします。

 第1回池田亀鑑賞は、40代後半の杉田昌彦氏(明治大学)の『宣長の源氏学』(新典社)。
 第2回は、60代前半の岡嶌偉久子氏(天理図書館)の『林逸抄』(おうふう)。
 そして今回の第3回は、20代後半の須藤圭氏(立命館大学)の『狭衣物語 受容の研究』(新典社)となりました。


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 私は公式サイトの「選考委員紹介」に、次のコメントを寄せていました。


文学研究の基礎を支える資料を整理し、成形し、提供する営為には、多大な時間と労力と根気が必要である。そして、こうした作業や仕事にこそ、弛まぬ努力と継続への理解と応援が必要である。池田亀鑑賞は、日頃の地道な調査研究活動に光を当て、さらなる励みと新たな目標設定を支援するところに意義があると思っている。達成したものばかりではなく、進行しつつあるものも含めて、研究環境の整備に貢献した仕事を顕彰したいと思っている。


 今回の須藤氏の『狭衣物語 受容の研究』は、まさにこれにぴたりと当てはまる研究の成果だと言えます。
 基本姿勢として、書誌的事項を押さえつつ写本や版本に立ち返って確認し、文献調査を踏まえた手堅い研究手法には、須藤氏が20代であることをを忘れさせます。実見できなかった資料は、国文学研究資料館のマイクロ資料で補う姿勢も徹底しており、極めて地道な研究だと言えます。


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 これからがますます楽しみな若い研究者を、池田亀鑑賞で顕彰することとなりました。
 これを契機として、若手研究者が文献を丁寧に読み解き、コツコツと一歩ずつ成果をまとめる励みともなれば、この池田亀鑑賞もさらに意義深いものとなることでしょう。

 最近の私の口癖となりましたが、読書感想文を突き抜けた、文献で実証する研究を後方支援する池田亀鑑賞となるように、今後とも目配りをしていきたいと思います。

 なお、「第四回 池田亀鑑賞 募集・選定概要」の内容が少し補正されています。
 来年3月末日までに応募していただく際には、お気を付けください。

 以下に、受賞者須藤圭氏の著作である『狭衣物語 受容の研究』(2013年10月25日、402頁、新典社)の目次を掲載します。


〈目次〉
はじめに 
  一 なぜ、そして、どのように、狭衣物語は読み継がれてきたか 
  二〈受容〉〈享受〉〈影響〉 
  三 本文について 

第一章 狭衣物語歌集の諸相 
 第一節 狭衣物語歌集の成立と展開 
  一「源氏集」の諸相 
  二 狭衣物語歌集の発生 
  三 現存狭衣物語歌集の諸相 
  四 物語をどう評するか 
  五 狭衣物語の和歌がもたらすもの 

 第二節 『類句和歌』の狭衣物語所収歌 
  一 三条西実隆と狭衣物語 
  二『類句和歌』の成立 
  三『新編類句和歌』の成立 
  四 大永期における新写本の作成 
  五 尊経閣文庫蔵『類句和歌四句』の狭衣物語 
  六 おわりに 

 第三節 伝尊鎮法親王筆『さころもの哥』 
  一 はじめに 
  二 諸本書誌 
  三 本文の様相 
  四 付載された定家詠十四首、慈円詠一種 

 第四節 鷹司信房筆『さころもの哥きゝ書』 
  一 はじめに 
  二 書誌と成立過程 
  三 依拠本文の推定 
  四 受容の様相 
  五 おわりに−信房と信尹と紹巴と−
  付 翻刻・山路の霧切、源氏物語夢浮橋巻切各一葉 

 第五節 近衞信尹外題筆『さ衣之集謌』 
  一 はじめに 
  二 依拠本文の推定 
  三 近衞家、連歌師の関与 
  四 おわりに 

 第六節 『古今類句』の狭衣物語所収歌 
  一 はじめに 
  二 『古今類句』の編者 
  三 依拠本文の推定 
  四 雅章とのかかわり 
  五 おわりに 

第二章 狭衣物語注釈の諸相 
 第一節 『狭衣三箇秘訣切紙』の方法
       −狭衣物語と涅槃経− 
  一 はじめに 
  二 諸本とその伝来 
  三 狭衣物語と源氏物語 
  四 狭衣物語と涅槃経 
  五 おわりに 

 第二節 切臨の解釈一面
      −承応三年版本の傍注と巻四「よそなから」歌の詠者−
  一 はじめに 
  二 問題の所在 
  三 承応三年版本傍注と下紐 
  四 宰相中将妹君の人物造形 
  五 おわりに 

第三章 狭衣物語本文の諸相 
 第一節 京都大学文学研究科蔵『さころも』の和歌の異文と空間 
  一 はじめに 
  二 諸本の様相 
  三 京大五冊本巻四の本文 
  四 「むかいひの岡」という表現 
  五 おわりに 

 第二節 巻四飛鳥井女君詠二首の異文 
  一 はじめに 
  二 二首を有する本文 
  三 二首の順序が相違する本文 
  四 二首を欠く本文 
  五 おわりに 

 第三節 狭衣物語古筆切の一様相
      −伝阿仏尼筆切(伝冷泉為相筆切・伝花山院師賢筆切)から−
  一 はじめに 
  二 伝阿仏尼筆狭衣物語の紹介 
  三 本文の検討 
  四 おわりに

資料紹介
 一 冷泉家時雨亭文庫蔵『口伝和歌釈抄』所収「さころもの哥」
 二 尊経閣文庫蔵『類句和歌四句』狭衣物語所収歌
 三 寛文六年版『古今類句』狭衣物語所収歌
 四 元禄五年東園基雅筆『源氏狭衣歌』所収「狭衣和歌抜書」

 初出一覧
 あとがき
 索  引
posted by genjiito at 19:30| Comment(0) | □池田亀鑑
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