2014年04月09日

ケンブリッジ大学図書館の『群書類従』に関する新情報

 昨日の本ブログで、「『群書類従』に関する講演会のお知らせ」(14年4月8日火)を書きました。

 これに関連して、早速ケンブリッジ大学図書館の小山騰先生から、以下のようなエピソードを詳細に教えてくださいました。

 この中には、渋沢栄一に言及したところもあり、職場の仲間にも関係する情報となっています。私の所に留めるにはもったいない内容なので、以下に小山先生からのご教示を引用して、大方の参考に供します。

 なお、ブログで読まれることを考慮して、いただいた文面の一文毎に改行処置を施し、画面で読みやすいように手を入れていることを、お断りします。

 さらなる関連情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、コメント欄を利用してご教示いただけると幸いです。


 ケンブリッジ大学は戦後日本研究・日本語教育を始めることになり、ケンブリッジ大学図書館は戦後の早い時期から日本語書籍を収集しようとしております。
 もちろん、戦前、1911年にはアストン・サトウ・シーボルト・コレクションがすでにケンブリッジ大学図書館に収納されていましたが、当時(戦後直後)近代の日本語コレクションはほとんどありませんでした。
 1949年〜1950年にはスカーブラ報告により政府から補助金を受けて、日本研究関係者が日本に出かけ大量の日本語書籍を購入いたします。

 スカーブラ報告の補助金による大量の日本語書籍購入以前には、日本との国交が回復していなかった事情などが影響して、直接日本から日本語書籍を購入することは困難でした。
 そんな事情から、ケンブリッジ大学図書館は、英国やヨーロッパで敵国財産として没収されたものなどを購入するなど、いろいろな手段で日本語書籍を収集しておりました。
 そのひとつとして、1849年にハワイ大学図書館から約330冊の日本語書籍を購入いたしました。
 当時、外貨の問題などがありましたので、直接取引はできず、ハワイ大学がケンブリッジ大学に日本語書籍を送り、ケンブリッジ大学はケンブリッジにあるHeffersという書店にその日本語書籍の代金を支払い、ハワイ大学はHeffersから必要な洋書を受け取るという方法を取りました。
 ハワイ大学が売りに出した日本語書籍は、ハワイで敵国財産として没収されたものやハワイ大学図書館では複本にあたるものなどでした。
 ホノルルにあった伏見宮記念奨学会東洋文庫の蔵本なども含まれておりました。

 ケンブリッジ大学図書館がハワイから受け取った約330冊の中に、経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」19冊が含まれております。
 それらの書籍には、ハワイ大学図書館の印や貸出用のカードも含まれております。

 まず、その経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」がハワイ大学図書館に収蔵されたのには、次のような経緯がありました。
 ハワイにハワイ大学が設立され、大正の終わりころには壮麗なる大学図書館ができました。しかし、日本関係の図書がきわめて乏しかったので、昭和のはじめころに、ハワイ大学関係者により渋沢栄一などの日本の財界人に働きかけ、日本で寄金を集め、日本語書籍をハワイ大学に寄贈する運動がありました。
 その結果、昭和3年に東京帝国大学図書館長である姉崎正治が選書した950冊が、ハワイ大学図書館に寄贈されました。
 その寄贈書の主なるもののリストが、「渋沢栄一伝記資料」第40巻(pp.444-445)に記載されています。そのリストの筆頭が「群書類従」正、続、続々、新編(64冊)です。
 それらの書籍には「Presented to University of Hawaii Library by Japanese friends in Japan and Hawaii」というラベルが貼られました。

 ケンブリッジ大学図書館は、ハワイ大学図書館から提供されたリストにより、1949年に約330冊の日本語書籍を購入しました。
 なぜそのリストに経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」19冊が含まれていたのか、そのあたりの事情は多少不可解な印象を受けます。
 というのは、現在インターネットで見られるハワイ大学図書館の目録によれば、経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」はハワイ大学図書館には所蔵されておりません。1949年の段階でも、厳密に言えば経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」は複本ではなかったような印象を受けます。
 おそらく、当時でもハワイ大学図書館には群書類従関係の書籍はたくさんあるので、経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」も複本に相当するとみなされ、ケンブリッジに提供できる日本語書籍のリストに含められたのかもしれません。

 いずれにしても、上記のような経緯で、経済雑誌社刊「続群書類従第1輯ー第19輯」19冊はケンブリッジ大学図書館の日本語コレクションの一部になり、現在下記のように、インターネットで見らる目録に入っております。

140409_cambridgecard




http://ul-newton.lib.cam.ac.uk/vwebv/holdingsInfo?searchId=826&recCount=25&recPointer=8&bibId=4992893

 なお、昭和天皇が皇太子時代にケンブリッジを来訪された時に寄贈された群書類従については、まだインターネットで見られる目録には含まれておりません。

ケンブリッジ大学図書館

小山騰
posted by genjiito at 23:15| Comment(0) | ◎国際交流
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