2014年01月14日

読書雑記(91)高田 郁『ふるさと銀河線 軌道春秋』

 高田郁の『ふるさと銀河線 軌道春秋』(双葉文庫、2013年11月17日)は、これまでの時代小説とは一転して現代小説で構成されています。前作の「高田郁『あい 永遠に在り』」(2013/11/22)よりもさらに現代を舞台としています。新しい分野を開拓しようとする作者の、意欲的な作品群となっています。
 もともとは、川富士立夏というペンネームで漫画の原作を書いていた頃の作品群を、小説に書き改めたものだそうです。女性向けコミック誌『YOU』(集英社)に、「軌道春秋」として28回連載された、その漫画原作から8編を選んで小説にしたものなのです。「返信」だけは「あかぞえ」に寄稿したものだとか。
 双葉社を媒体にして、また新たな高田郁の作品群が拡がることは楽しいことです。

■「お弁当ふたつ」
 心温まる話です。平和そのものの日々が、意外な展開となります。そして、夫と妻の別々の行動が、一つに交わります。新しい高田郁のスタートです。元気が出る話となっています。【5】

■「車窓家族」
 人それぞれに、自分の過去を照らしてものを見ているのです。車窓から見える文化住宅の一室が、人々にさまざまな思いをさせていました。その話の仕掛けが巧みです。車窓をめぐる一コマが、朗らかに語られています。【3】

■「ムシヤシナイ」
 1本の包丁を通して、心の交流が描かれます。オジイチャンと孫の心温まる話です。そして、駅の蕎麦屋の存在が、大写しになります。【3】

■「ふるさと銀河線」
 関寛斎つながりで『あい 永遠に在り』が思い起こされます。北海道の雄大な自然の中で、星子の心の中が語られています。夜の空を見上げながら、星子が思う「羽ばたく勇気」が伝わってきます。【5】

■「返信」
 亡き息子の面影を抱いての陸別への旅をする夫婦。家族というものを考えさせられます。そして、「何もないところですが、そこがいいのです」という言葉が印象的でした。星空が残影として心に滲み込んできます。【5】

■「雨を聴く午後」
 「みっともなくても生きる」というセリフが心に残りました。また、セキセイインコが印象的です。内容は変化がなくて、不自然な設定です。しかし、人の心情は丁寧に描かれています。【2】

■「あなたへの伝言」
 前作「雨を聴く午後」をなぞるように展開します。アルコール依存症を扱う物語です。しみじみと、決意の固さが伝わってくる作品です。【3】

■「晩夏光」
 しだいに記憶をなくしていく母親の気持ちがよくわかります。そして、その母を見つめる息子が、感動的に描かれています。【4】

■「幸福が遠すぎたら
 学生時代の思い出が交錯する3人の待ち合わせ場所は嵐山です。充実した日々を振り返りながら、今の苦悩がお互いを慰めます。心が弱った時に読むと、勇気をもらえます。【3】


posted by genjiito at 22:59| Comment(0) | ■読書雑記
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