2014年01月12日

PDF版『スペイン語圏における日本文学』の公開

 今から10年前、『スペイン語圏における日本文学』(伊藤鉄也編、67頁、2004年9月23日発行)という小冊子を作成し配布しました。
 これは、科学研究費補助金(基盤研究B)「外国語による日本文学研究文献のデータベース化に関する調査研究」(課題番号︰15320034)の、2004年度研究成果報告書として少部数を印刷したものです。非売品だったこともあり、関係部局などに配布しました。

 また、これは以下に引用する「まえがき」で記したように、スペイン・サラマンカ大学で開催された日本資料専門家欧州協会(EAJRS)の研究発表資料でもありました。
 それが、出発直前に母親が突然意識不明になり、私がスペインへ行けなくなったのです。そこで、この冊子を参加者の人数分をサラマンカ大学に送りました。そのためもあり、日本国内にはあまり配布できませんでした。

 その後、地方の図書館の方々や、この冊子を図書館などで見かけたという方々から、残部があればもらえないか、との問い合わせをたくさんいただきました。ほとんどが、国文学研究資料館の総務課を通してのものであり、可能な限り手元にあった冊子を送っていただきました。

 昨年の夏以来、スペイン語訳『源氏物語』のことを本ブログに書き、昨秋には私がスペインへ行って『源氏物語』のスペイン語訳の話をしてきたこともあり、この『スペイン語圏における日本文学』がもらえないか、との問い合わせがまたまた増えてきました。

 多くの方々に、もう残部がないことを説明してお詫びしてきました。それでも、年末年始に残部の問い合わせがありました。
 増刷をしようか、と思案していたところ、PDF版で公開する方法を思いつきました。
 以下に、『スペイン語圏における日本文学』のPDF版をダウンロードしていただけるようにしました。冊子名をクリックしていただけると、ダウンロードできます。
 
PDF版『スペイン語圏における日本文学』(1.5 GB)のダウンロード
 
 これは、10年前にまとめたものです。あれから10年。情報は古くなってはいないとしても、新たな情報もあり、また補訂すべきものも多いかと思います。
 今回、PDF版で公開することにより、多くの方からの新たな情報や訂正のご教示をいただければ、この冊子の増補版を作成する契機にもなるのでは、と願っています。

 少し、この冊子の補足説明をします。

 カバーデザインは、研究協力者であったカーシャ・ガンデルスカさんの手になるものです。
 表紙には、スペインの国花「カーネーション」が置かれています。

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 裏表紙には、私が当時母や妻子たちと住んでいた、河内高安に通じる業平道沿いの大和平群山中に咲いていた日本の国花「さくら」を配しています。

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 表紙に浮かぶ文章は、Jesus Gonzalez Vallesによる夏目欺石『YOSOYUNGATO(吾箪は猫である)』(清泉女子大学人文科学研究所、1974)のスペイン語訳(冊子番号2参照)の冒頭部分です。

 目次は以下の通りです。


     目次

まえがき
1.解題編
2.資料編
  スペイン語圏における日本文学の研究論文一覧
  スペイン語圏における日本文学のサイトー覧
  スペイン語圏における日本文学の翻訳・研究書年表
あとがき
編集メンバー
人名索引


 小冊子ながら、今通読しても、なかなか充実した内容です。
 この冊子作成の経緯を記した「まえがき」も、ここに再現しておきます。


     まえがき

 2003年12月6日に開催された全国大学国語国文学会は、大阪大学の日本文学国際研究集会との共催でした。国文学研究資料館もこのイベントに共催参加しました。その国際集会のテーマが「海外における源氏物語の世界 翻訳と研究」であったことから、館蔵の海外出版本群〈福田文庫〉の中から『源氏物語』に関連する翻訳書を厳選して公開展示しました。そして、展示書目の解説書として、『海外における源氏物語』(非売品)を作製して配布したところ、幸いにもこれが予想外に好評をいただき、後日、多数の方々から入手方法の問い合わせをいただくこととなりました。図書館関係の方からの連絡がたくさんありました。しかし、作製部数が限られていたために、すべてをお断りすることになったのが悔やまれます。あらためて、司書の方をはじめとする多くの方々に、心よりお詫びを申し上げます。

 今回、スペイン・サラマンカ大学で開催される日本資料専門家欧州協会 (EAJRS)で、伊藤鉄也・岩原真代・菅原郁子が、「海外における日本文学研究に関する情報の共有化」(Sharing the information of Japanese Literary Studies throughout the world)と題する研究発表を行うことになりました。スペイン語圏における日本文学の受容状況を、翻訳書の解題やウェブサイトの情報を提示する中でその問題点を考察し、併せて海外における研究情報の提供の呼びかけをすることにしました。本書は、そうした意義を支える具体例の一つとして作製したものです。

 改めて強調しますが、海外における日本文学に関する情報が整理されていません。本書の編者である伊藤は、文部科学省科学研究脅補助金対象の研究として、こうしたテーマに取り組んでいます。平成13年から2年間は、萌芽的研究「外国語による日本文学研究文献のデータベース化に関する予備調査」と題して、基礎的な部分に着手しました。平成15年から3年間は、実 際に情報を収集・整理し、公開し、そして継続的に情報が流せるような仕組みを構築する予定でいます。

 『海外における源氏物語』に続いて、今回も、国文学研究資料館の名誉教授である福田秀一先生より寄贈された、日本文学作品に関する資料整理と各点の解題作成から着手しました。本書は、あくまでも現時点での試行版です。本書作成チームの責任者となって、前回同様にその役割を果たした菅原郁子さんの「あとがき」にもあるように?、解題作成や各種資料の整理は、大変な労力と試行錯誤があってのものです。まさに、チームワークの成果といえましょう。とくに、今回は対象がスペイン語であったこともあり、本書の内容には不備や遺漏が多々あろうかと思われます。ご教示や新たな情報提供を受ける中で、よりよいものに育て上げていきたいと思います。

 なお、本書の最終校正段階で、古家久世氏の「スペイン語に翻訳された日本文学」(『スペイン語世界のことばと文化』京都外国語大学イスパニア語学科編、行路社、2003.11)および「日本文学作品のスペイン語翻訳目録(『京都外国語大学研究論叢』62、2004.3)の存在を知り、情報の確認補訂ができました。貴重な労作を公開された古家氏にお礼を申し上げます。

 本書は次の文部科学省科学研究費補助金の成果の一部をなすものです。

 2004年度文部科学省科学研究費補助金 基盤研究B
 「外国語による日本文学研究文献のデータベース化に関する調査研究」
  課題番号[15320034]研究代表者︰伊藤鉄也
  研究分担者︰伊井春樹(人間文化研究機構・国士舘大学)
        鈴木淳(国文学研究資料館)
        入口敦志(国文学研究資料館)
        海野圭介(大阪大学)
  海外共同研究者︰ピーター・コーニツキ(ケンブリッジ大学)

 外国語による研究論文のデータベース化は、以下のホームベージで試険版を公開しています。
 →http://www.nijl.ac.jp/~t.ito/HTML/kaken01/houga1.html

 順次データを更新追補しています。最新情報の追加などにつきましては、お申し出いただければ幸いです。また、本書解題作成で用いた資料も、まずは伊藤の上記ホームベージから公開し、修正増補を繰り返す中で、しかるべき発信場所を定める予定です。

 日本では知ることの困難な情報などを皆様方からいただければ、リアルタイムに、より多彩な分野の情報群として発信できます。それが、日本文学に間する広範な情報の共有として活性化され、海外における日本文学研究も、さらに加速することになると思います。本書の記載内容に限らず、海外における日本文学の研究に関してお気づきの点などを、折を見てご教示をいただければ幸甚です。海外からの新鮮な情報の提供を心待ちにしております。

               平成16年9月23日 伊藤鉄也


 なお、本冊子には、解説した当該書籍の書影を掲載しています。
 各書籍のブックデザインにも権利があるという見方と、純然たる図書の解説・紹介に付す場合は諸権利の許容範囲である、という2つの見方があるようです。
 いちおう、日本の出版社の方々からのご教示を得て、ここに公開しています。ただし、もし何か問題があるようでしたら、ご連絡をいただければ対処するつもりです。
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎国際交流
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