2013年12月09日

井上靖卒読(173)「監視者」「ローヌ川」

■「監視者」
 自分から心が離れていく女の話です。20代の愛人に、ますます惹かれていく40代の男。女は女優として生きていこうとしています。一時の逢瀬もままなりません。若い女をもてあます中年の男が、心情の面から描かれるのです。女の方も、自分を監視する男がそばにいることで安心しているようです。男女の心の襞がうまく表現されています。そして、爽やかです。【5】
 
 
初出誌:小説中央公論
初出号数:1963年9月号
 
集英社文庫:火の燃える海
井上靖小説全集31:四角な船
井上靖全集6:短篇6
 
時代:昭和、戦後?
舞台:東京都(銀座)
 
 
 
■「ローヌ川」
 井上靖が好きな川の話です。中国の揚州の川、蘇州の川、そして黄河。人工が自然へと同化していく様を、川を通して語ります。揚子江も、韓国の洛東江もそうです。世界各国の川が取り上げられます。悠久がキーワードでしょうか。川を一つ選ぶとしたら、中国の珠紅だと言います。作者は、人間との接点を大事にしているのです。さらに、人間と無縁のローヌ川へと移ります。そして、巣村という男がパリで自殺する話で終わります。ヨーロッパの雪山で、ユングフラウが一番美しい、というのも心に残りました。【2】
 
 
初出誌:別冊文藝春秋
初出号数:1964年1月86号
 
新潮文庫:道・ローマの宿
井上靖小説全集18:朱い門・ローマの宿
井上靖全集6:短篇6
 
 
 
〔参照書誌データ〕
 「井上靖作品館」
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | □井上卒読
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