2013年10月05日

京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第4回)

 今朝は小雨でした。
 ワックジャパンでの勉強会は、これまでほとんどが雨の日です。前回雨が降らなかったのは、本当に特別でした。

 それでも、午後になると雨は上がり、曇り空です。降る気配はなさそうなので、自転車で御所の南にある会場へ向かいました。途中で、下御霊神社の北にある丸太町かわみち屋で「そばぼうろ」を買って行きました。

 今日は、いつもの「わくわく館」の町家の部屋ではなくて、道を隔てた事務所の中の一室でした。ここも、落ち着いて話のできる空間です。

 9月28日(土)の京都新聞に、この勉強会の案内が掲載されました。それを見て、今日はお二人の方が参加してくださいました。これまでは、学生さんたちと一緒に勉強していました。そこへ社会人の方が加わると、みんな緊張して黙り込むのでは、と心配しました。しかし、そんな気遣いは不要で、和気藹々とお話ができました。

 今日は初めての方が参加なさっているので、今回読もうとしているハーバード大学本『源氏物語』について、元ハーバード大学フォッグ美術館の文子・クランストン先生に書いていただいた解説文をもとにして、この本の大凡をお話ししました。

 そして、前回までに読んで字母を確認してきたところから、今日のはじまりです。
 第1丁裏の1行目から、8行分の文字を、字母が何であるかを中心にして確認しました。

 最初の「と」は、今の「止」ではなくて「登」を字母とする字です。この「登」を字母とする「と」が多いことに、すぐに気付きます。


知那无・以三之宇・毛乃・思給部里之/之&部里・左末遠・
思以川留尓・身越・奈个・給部累可登・
於毛飛与利遣累・奈久/\・乃・文遠・安遣
堂礼波・以登・遠本川可奈左尓奈无・思川ゝ・
末止呂末礼・八部良奴尓也・己与比八・由免尓堂
仁/多尓$尓堂・宇知登計天毛・身衣寸・越曽八礼川ゝ・
心知毛・礼以奈良須・宇多天・侍遠・奈越・以登・遠曽
呂之・毛乃部・和多良世・給八无・事波・知可ゝ
武奈礼登・曽乃・程・古ゝ尓・武可部・堂天末川利
个无/个〈判読〉=天・遣不・安免・不利奴部个礼葉奈登・有(1ウ)」


 3行目の真ん中から少し下にある、「この」の「こ」は、「古」のくずし字です。一見、カタカナの「ホ」に見えます。

 また、5行目下の「ゆめにたに」では、文字のナゾリがあります。
 5行目の行末の「尓堂」の下には「多尓」と書かれているのです。写真ではよくわかりません。しかし、ハーバード大学にある原本を見ると、明らかに「多尓」と書き、すぐに「尓堂」とナゾリ書きして、次の行頭に「仁」を書いて、「ゆめにたに」と読ませようとしているのです。

 今日は、この第1丁裏の字母の確認をしてからは、フリーディスカッションで盛り上がりました。
 漢字の筆順については、日本語の文字は下へ流れようとする筆順を学校で教えています。これには、縦書き文化が背景にあります。しかし、今や横書き文化の社会になりました。横書きでは、文字は、右上へと引き上げながら書いていきます。しかし、我々が覚えている文字は、下へ下へと向かう筆順で書きます。下へと向かう筆勢を、右上に引き上げながら書くのは大変です。

 ここから、文字の筆順が今のままでいいのか、ということになってきます。
 かつて、丸文字とか変体少女文字といわれる、丸々とした文字がはやりました。明菜文字といわれたのも、これに分類されています。これは、左下に流れようとする文字を、右上に引き上げるところから、文字が自ずと丸みを帯びてくることに起因する現象です。

 今、我々が教えられた文字の筆順は、あくまでも縦書きに適した、縦書きがより早くきれいにかけるようにと考えられた筆順です。その筆順で横書きを中心とする文字を書くのですから、書きにくいことこの上もありません。そして、手書き文字はますます敬遠されます。

 手書き文字を手放すのは、日本文化の継承において危機ではないか、という私の問いかけに対して、参加者が思い思いに意見を言い合いました。

 いろいろな世代が集まると、こうした異文化に対する意識の多様な面が見えて、おもしろい会話となります。今後とも、こうしたことも話の中に織り交ぜながら、古写本の文字を読み解いていきたいと思います。

 次回は、11月9日(土)の午後1時から、場所は同じくワックジャパンで行われます。

 なお、これまでの、京都での古写本を読む会の記録は、次の記事を参照してください。

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第3回)」(2013/9/21)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第2回)」(2013/8/10)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(初回)」(2013/7/13)
posted by genjiito at 23:48| Comment(0) | ◎NPO活動
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