2013年09月21日

京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第3回)

 ハーバード大学所蔵の『源氏物語』の古写本を読み進めています。
 京都では第52巻「蜻蛉」を、原本の影印資料を基にして確認しているところです。

 前回は、第1丁のオモテが終わったので、今日は第1丁のウラからでした。
 本文を確認する過程で、私の翻字が不正確であることが指摘されました。
 

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 この箇所を私は、「思給へし」と書いてから「し」の上に「り(里)」をナゾルようにして書き、続けて「しさまを」と書いたとしました。
 しかし、「給」の次の「へ」の書かれたタイミングに疑問が出されたのです。

 確かに「へ」が、「給」と「り(里)」の狭い隙間にかかれている状態は、次の行の真横にある「給へる(累)」における「へ」の文字のバランスからいっても不自然です。
 ここで、「へ」は後で書き加えられたものとみるべきでしょう。とすると、どのような書写の流れだったのか、という推理を逞しくすることになります。

 みんなで検討した結果は、次のようなものです。

 まず、「思給し」と書き、すぐに親本通りに書き写しているのではないことに気付き、「し」の上からなぞるように「へりし」と書き、さらに続けて「さまを」と一気に書き続けたのではないか、ということです。

 そのように考えると、「給」と「り」にはさまれた「へ」の落ち着きのなさが理解できます。「へ」が押し潰された形になっているのは、下に見えている「し」の上に「へりし」という三文字をナゾって書こうとしたためにこうなった、と考えればいいのです。

 写本に写し取られた文字を正確に翻字する際には、いろいろな状況を考慮して読み解く必要があります。ここも、不自然な文字の形から疑問が発生したものです。
 いろいろな目で読むことの大切さを教えられました。

 「蜻蛉」巻の12種類の本文を比較して整理した資料をもとにして、物語本文の異本についても検討しました。ここでは、ハーバード本における特記すべき異文はありませんでした。

 また、『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(伊藤編、至文堂、平成15年)を参考にして、物語の内容についても確認しました。

 『源氏物語』の本文を、異本にも目を配って読むと、いろいろなものが見えてきます。
 こうした物語の読み方は、一人で読んでいては気付かないことが見つかります。
 輪読に向いている読み方だといえるでしょう。

 今回は、ハーバード本「蜻蛉」巻の1丁ウラ5行目「〜まとろまれはへらぬにや」まで確認しました。

 次回は、10月5日(土)午後1時から2時半までです。
 場所は、同じくワックジャパンです。

 なお、先週土曜日(14日)の京都新聞「まちかど」欄に、次のような情報を紹介記事として掲載していただきました。今後とも、継続して掲載していただく予定です。
 

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posted by genjiito at 23:51| Comment(0) | ◎源氏物語
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